今月から来月にかけては日記が軒並み映画レビューで埋まってしまいそうなのでどんどん進めていきます戦利品レビュー。
・クロスボーダー・ロータシオン(折葉坂三番地)
本サークルさんの作品は2冊入手しましたが、先に読み終わったこちらの方をまずレビューします。
本作は、東方二次創作においては古典的テーマの一つと言える「秘封倶楽部の終焉」を描いた作品です。
秘封倶楽部は数ある東方カップリングの中でも不動というか完全に二人一組であることが前提となっているふたり。だからこそ、その終焉を描くということはすなわち「何がこのふたりを分かつのか」を描くことにほかなりません。
しかるに本作で蓮子とメリーを分かつことになったのは「時間」。首都・京都に突然出現した結界災害。それがもたらしたのは、メリーとの待ち合わせ場所となっていた時計台周辺半径500メートルに発生した時間の遅延する空間。時間の遅延は中心部に向かうほど大きくなり、その中心部では時間の遅延はほぼ停止している。
あとがきでは本作の直接的なアイデア元は明言されていませんが、本作のアイデア元はイーガンの「闇の中へ」と見たんですがどうでしょうかね。
本作は読む前から告知などで秘封倶楽部の終焉を描いた作品だということは明言されていたので、前述の通り「何がこのふたりを分かつのか」という点を楽しみに読んでいましたが、この点についてはなんというか、「このふたりを分かつものはやはりこれしかないよな」という納得感がありました。
しかもこれ、空間的にはほんの500m先にメリーはいるのに時間的には遥か向こう、もう手が届かないところに離れてしまっている、しかもその距離は蓮子の主観から見れば文字通り刻一刻と離れていっている……というのが、時間と空間に深く関与している秘封倶楽部にぴったりの悲劇と言えるでしょう。そして実にSF。
そして、本作においてふたりを分かったものが秘封倶楽部にぴったりの悲劇なら、残された蓮子がとった手段もまたどうしようもなく秘封倶楽部にぴったりの片道切符という。
そしてラストシーン、「そうなった」ふたりをさらに「観測」しているこの視点はいったい誰のものなのか。そうした空白部分を残しているのがまた上手い。
実に秘封倶楽部らしい終焉でした。
今日はここまで。