大妖精は両手を振りかざして、再びクナイ弾を撃ってきました。その弾幕はきれいにそろっており、弾幕というよりはむしろ、音符の並んだ譜面のようです。その弾幕を避けるルーミアの身のこなしは、朝のときに比べてだんだん洗練されたものになっていました。ステップはより正確に、ターンはより鋭く。大妖精が発する弾幕の譜面に合わせて、ルーミアは大きな三日月の下で楽しげに踊っています。
対する大妖精も、いつもの控えめな様子からは信じられないくらいはつらつとしています。それに背中の妖精の羽根も、月明かりを浴びているせいかいつもより輝いているように見えました。羽根からこぼれる虹色に輝く光を振りまきながら、大妖精は次の攻撃を放ってきました。
(大ちゃん、なんだかきれいだなー……)
そんなことをぼんやり思いながらも、ルーミアが大妖精が放ってきた炸裂弾をテンポよくかわしていきます。足元で花がほころぶようにはじける炸裂弾は、まるでふたりのダンスをきらびやかに彩っているようです。
「わああ……!」
その光景に、ルーミアは思わず声を漏らしました。ルーミアはあんまり遊びと真剣勝負の区別を就けていませんが、それなりに弾幕ごっこを経験してきました。その中でも、こんなに楽しい弾幕ごっこははじめてでした。
ルーミアは思わず、大妖精に向かって両手を伸ばします。
「大ちゃん! もっと! もっとおどろ!」
「うん! もっと踊ろう!」
大妖精も同じように両手を伸ばしてくれました。ふたりはにっこり笑い合って、お互いの手を取ります。ルーミアと大妖精は、そのままくるくると輪を描くように踊り始めました。ルーミアの金髪のきらきらと、大妖精の羽根の虹色とが混ざり合って、魔法の森の夜の闇を照らします。そこ一帯だけが光り輝いて、まるでステージのよう。
いいえ、そこは実際にステージでした。ふたりのダンスに惹きつけられたのか、周りにはたくさんの妖精が集まって来ました。さらに、そこに集まったたくさんの妖精に刺激されて、花々は開きたくさんのキノコが伸びていきます。さながらそこだけが、扉の向こうの異世界のようににぎやかな光と歓声に満ちていました。
その中で、ルーミアと大妖精は輪を描いて、いつまでも踊り続けているかに見えました。しかし、さすがに限界が来たのか、大妖精の方が目を回して倒れ込んでしまいました。
「はわうう~……ルーミアちゃん、つよい~……」
「や……やった! さすが大ちゃん強いや……!」
珍しくはしゃぎすぎてしまったのか、大妖精はチルノと仲良く地面に伸びています。しかし、ルーミアの方もまだ立ってはいるものの、足元がふらついておりさすがに疲れが隠せないようすです。
その代わり、大妖精と一緒に伸びていたチルノがようやく起き上がりました。
「へへ、たまには人の弾幕ごっこを見てるのもいいなあ。ルーミアも大ちゃんも踊りながら弾幕ごっこしてて……弾幕ダンサーってやつ?」
笑顔でそう言うチルノに、ルーミアも笑顔で答えます。
「こういう感じで弾幕ごっこするのすっごい楽しい!」
「うんうん、なんか踊ってると普段より強くなってる気がするよね」
なんとか呼吸を整えた大妖精もルーミアに同意します。
「踊りながら弾幕勝負したら、今日は霊夢と魔理沙にも勝てちゃった!」
「ええっ!?」
「おぉ、すっごい!」
自慢げに胸を反らすルーミアに、大妖精とチルノはびっくり顔。
「今なら誰にも負ける気がしないっ!」
ふたりが驚いてくれたのがうれしくて、さっきまで疲れていたのがうそのようにルーミアは元気いっぱい。
実際、大妖精と夢中になって踊っていてへとへとになっていたはずなのに、ルーミアはあとからあとから力が湧いてくるのを感じていました。
(ふしぎ……なんでこんなにげんきいっぱいなんだろう。霊夢と魔理沙にも勝てちゃったし……。それに、わたしってこんなに強かったっけ?)
いくら考えても、その答えは出てきません。でも、その疑問もやがて消えてしまいました。
まるでこのあふれる活力や強さが、本来の自分自身の姿であるかのように(傍点)思えてきます。
まだまだ踊り足りない気持ちが抑えられないルーミアは、チルノと大妖精のふたりと別れた後も、どこへ行くともなく魔法の森の中を踊りながら歩いていきました。
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「……」
――その姿を、木の陰からこっそり覗いている二人組の人影がありました。
先だっての四季異変の首謀者、摩多羅隠岐奈に使える二童子、丁礼田舞と爾子田里乃です。