欠落を抱えている人間など、どこにでもいる。我々は本来、表立って宗教団体としては活動しないが、今回は意図的に民間に情報を流し、あるいは個人情報を収集し、大きな対象喪失体験を抱えた民間人をこの教団へと誘導した。そして――。
「代理体(サロゲート)のステータス、正常(グリーン)。創造維持神との連結システム、正常(グリーン)。実験準備はすべて完了しました」
「聖域(サンクチュアリ)」に設置された観察室に設置された大型モニタには、溶液で満たされたタンク内に浮かんだ代理体(サロゲート)、ガラスの箱に閉じ込められた創造維持神が映し出されている。
そして、被験体の姿がモニタに表示された。
まるで中世の拷問器具のように物々しい、鋼鉄製のベッド。そこに身を横たえた被験者の体は、上半身がほとんど接続装置に飲み込まれており、まるで巨大なシステムの一部に組み込まれているように見える。
「被験者は32歳、女性。流産によって子どもを失った経験により慢性的なうつ状態に陥っています」
今回の被検体である彼女が接続装置の上に投げ出した両腕の内側には、はっきりとわかるほど幾筋も赤い傷跡が見えた。彼女の内面はこれ以上にダメージを受けていることは確実だろう。
この実験が成功すれば、その傷も完璧に癒やされることだろう。神の力、神の言葉によって。
最終安全装置(フェイルセーフ)が解除された。私はためらいなく操作卓(コンソール)上の赤いボタンを押し込む。
観察室内に緊張が走る。
これで創造維持神と被験者は、代理体(サロゲート)を通して接続された。被験者のバイタル・メンタルは逐次観察室でモニタリングされている。
特に我々が注目しているのは、接続中の被験者のイメージだ。