胸の前でぎゅうっと握りしめた両手が、汗ばんでいる。
 わけの分からない興奮がこみ上げてきて、わたしはどうすればいいのかわからなくなっていた。
 わたしが、わたしの行動が、あの少年のこれからの運命を左右する。わたしが、あの少年の運命を握っている。
 それが、いいことなのか悪いことなのか……いや、そもそも、他人の運命を握っているということが、いったいどういうことなのか、わたしにはわからない。ただそれが、ずしりと重いものであることははっきりとわかった。
 ……お父様も、こんな気持ちになったことがあるのだろうか。わたしという人間ひとり分の人生の絶対的な決定権を、お父様はこんなふうに得体の知れない気持ちに感じたのだろうか。
 お父様にとって、わたしは……ずしりと重い存在なのだろうか。
 そんな考えで頭が一杯になる中わたしはようやく立ち上がり、ふらついた足取りで礼拝堂へと向かった。毎朝お祈りを捧げている聖母像の動かない視線がなぜか気になり、わたしは長椅子に身を隠すようにして地下道への扉を開いた。
 少年が閉じ込められた檻のある部屋のドアを開けた時、なぜか暗闇の向こうにいる少年がほっと息をついたのがわかった。わたしが来たことを喜んでいるのだ。
 ランタンの明かりに照らされた少年の顔は、初めて出会ったときに比べるとずいぶん血色が良くなっていた。
 相変わらず少年はわずかに呻くだけで言葉を話さないし、このままわずかなパンとスープを与え続けても、健康状態はこれ以上良くなりそうもない。
 
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初公開日: 2022年10月25日
最終更新日: 2022年10月31日
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