「ろはん~……」
家に来るなり、見てほしいものがあるから準備させてくれと別室に追いやられ、早五分が経った。あんまり長いのでスタンドで見てやろうかと思った矢先、背後のドアがカチャリと開いたのだ。
「終わったのか?ぼく、もう自由に動いていいかな」
「あっ!ま、まって」
細く開いたドアの隙間からは仗助の顔だけが覗いていたが、すぐにまた見えなくなってしまった。
「何だよ。何を渋ってるんだい」
「こ、心の準備がッ……待って、今行きまスっ」
組んだ腕を人差し指がトントンと動く。どうせ大したものでは無いのだろうが、こんなに時間がかかるとはどういうことなのだろうか。
「あ、開けまース……」
小さく仗助の声がして、ゆっくりとドアが開いた。仗助用のスリッパが、恐る恐る部屋に入って来る。
「エヘヘ……」
「お、ま……ッ」
恥ずかしげに頭を掻きつつ、扉の影から現れた彼は、見た事のない体育着に身を包んでいた。
「な……なんだそれ」
「中学ン時の体育着なんスよぉ、昨日家片付けてたら出てきて」
へらへら笑う彼の体育着は持ち主の圧倒的な成長に追いつけなかったのか、あちこちがパツパツと張っていてきつそうだ。ハーフパンツも腿の半分程までしかなく、彼の未熟な肉感を隠しきれていなかった。
「チコっときついなァ」
「……」
短い裾をぎゅ、ぎゅ、と下げてどうにか露出を抑えようとしているが、ポリエステルの伸びが彼の柔らかな質感をそのままに拾ってしまっていた。
「それ、使って体育してたのか……?」
「そっスよ、中一の時はブカブカだったんスけどねぇ」
青少年の証たる健康溌剌とした運動着が、仗助の手にかかればこんなにも欲を掻き立てる材料になってしまうとは。高校一年生でここまできつそうなら、中学三年生の時点でもさほど変わらなかっただろう。目のやり場に困り、彼の体をあちこち見てしまう。
「うわ、露伴」
と、突然仗助がぼくを見て目を見開いた。困ったように口角を上げ、体を隠すように手を交差する。
「鼻の下、めちゃくちゃ伸びてる……」
指さされ、そこで初めて唇を噛み締めていたことに気づいた。慌てて手で覆ったが、仗助にはばっちり見られてしまったようだ。
「露伴……こういうの、好きなんスか?」
「違うッ、断じてその……青少年にだなッ」
目の前がぐるぐる回る。なんて言い訳すれば良いのか分からない。どこを見ても邪な思いが巡り、ついに顔ごと逸らしたぼくを、仗助がいたずらっぽく笑った。