妖怪は、外見がどれほど人間に似ていても本質的に人間とは異なる存在だ。もっとも大きな違いは、どんな人間にも平等に訪れるはずの「死」が、妖怪には基本的にないということだ。
妖怪は霊的な存在だ。外見上どれほど大きな傷を負っていたとしても、妖怪にとってはそれが致命傷となることはない。妖怪にとって致命傷となるのは……「変化」だ。
妖怪の不死性は、言い換えれば「不変性」だ。
生きているものにとってもっとも大きな変化は、死だ。妖怪は、人間のように負いない、病まない。変化しない。つまり、死なない。
強力な霊力や儀式による調伏は、妖怪を「存在しない状態」に変化させる行為だ。つまり妖怪を殺すことができる。
それなら……それなら、私は、変わりすぎたということだろうか。
目の前には、無数の私が浮かんでいる。
どれもが私のはずなのに、ひとつも同じ姿はない。
では、私はどこにいる? 本当の私は? もとの私は?