私が感じる人間と妖怪とのもっとも大きな違いは、能力や寿命などではなく、その外見の変化だ。
こないだ見たときには赤ん坊だった人間が、いつの間にか大人になってわたしの勤め先のひとつである飯屋に遊びに来る。この間まで髪や髭を伸び放題、昼から酒浸りだったおじさんが、昨日は頭を丸めてお経を読んでいた。先月までは岩みたいな仏頂面をしてた大工の親方が、孫が生まれた途端に別人みたいににこにこしている。
もちろん、それらの人間が別人にすり替わっているなんて思っちゃいない。しかし、わたしはこうして人間の中に紛れ、たくさんの人間の姿を見ていると、こう思わずにはいられないのだ。
人間は、なぜこうも多彩に変われるのだろう、と。
私たち妖怪は、生まれた……つまり、この世に生じたときから常に同じ姿をしている。もちろん、人間に化けたり人間のまねをして季節ごとに装いを変えたりすることはあっても、私たち本人は変わらない。人間のように赤ん坊の姿で生まれて成長して大人になったり、ふとした出来事で別人のように性格が変わるといったようなことは基本的にないのだ。
私たち妖怪の根本にあるのが「不変」であるとするなら、「変わる」とはまさに今までの自分とは全く異なる存在に作り変えられるということにほかならない。