夏コミ原稿で見よう見ようと思いつつも見てなかったゆるキャン、ようやく見てきました。
 では早速感想を。
 例によって事前情報はほぼなしで、「社会人になった野クルメンバーがキャンプ場を作る」くらいしか知らない状態で見てきました。
 いやーしかしこの手の日常系作品で、「社会人になったキャラを描く」というのはなかなかない例だったんじゃないですかね。ある意味禁じ手というか。
 そもそもいわゆる日常系作品の魅力は言ってしまえばモラトリアムに担保されている部分が大部分を占めているので、社会人になったパートを描いてしまうと必然的に作品を支えている柱が失われてしまう。
 事実、社会人になったなでしこたちはコミックやTVシリーズのように自由にキャンプや日常を楽しむことができなくなっています。仕事に忙殺されてなかなか予定が合わなかったり、そもそも顔を合わせること自体も難しい。千明としまりんが久しぶりに会ったシーンで「3年ぶり」って言ってるのが印象的でした。
 このように、「大人になる」「モラトリアム期間の終了」は、いわゆる青春時代をステージにした作品のキャラクターにとってはほとんど「死」も同然だと思うんですよね。
 社会人となった彼女らは、わかりやすいデフォルメされた苦境や悪い環境にあるわけではありません。しかし、それがかえって彼女らのかつての日常がいやおうなく当たり前に社会人としての生活に埋没して忘れ去られてしまったように感じて、映画の序盤は明確に寂しさを感じました。
 しかしながら本作では、彼女らは大人になったらなったで、大人になった自分たちにできること、大人になった自分たちにしかできないことをやって、大人になった自分たちにしかできない方法で、かつての青春時代のその先を構築していきます。
 この辺の「過去と今」「子供と大人」の配分が非常にうまかったと思います。ただ単に過去の野クル活動の焼き直しをするだけでは現在の否定になりますし、かといって大人になった彼女らがあくまで「仕事」や「事業」としてだけキャンプ場を作るという形だと逆に過去の否定になってしまう。
 この「過去」と「現在」をどちらも否定しない混合バランスが本当にぜつみょうだったと思います。そもそもこの優しさに溢れた作品で、何かを否定するという描写は間接的にせよ比喩的にせよそれこそ禁じ手だからなあ。
 そしてもうひとつすごいと思ったのが、声優さんの演じ方。
 本作におけるなでしこたち野クルメンバーは、すでに高校を卒業して数年経過してるわけですが、声がちゃんと高校生の頃から微妙に大人になってるんですよね。
 特になでしこを演じる花守ゆみり氏の、高校生のときの無邪気な声音を残しつつも大人の落ち着きを身につけているあの声の調子は見事というほかありません。
 加えて、キャンプ場設立計画が進んでいくに従って明らかにその声音が高校時代の声に近づいていってるんですよね。これは明らかに意図的にそうしてるはず。
 また本作は、言葉によらないメッセージというか、小説で言うところの行間が非常に雄弁な作品dなと感じました。
 特に顕著だったのが、キャンプ用品店で仕事をしているなでしこの前に、かつての自分たちのようなキャンプ初心者の高校生の女の子が現れるシーン。
 凡百の作品なら、あそこで回想シーンを入れたりなでしこに「懐かしいな……」といったモノローグを言わせたりするところなんでしょうが、本作ではあえて何もしない。もはや禅の世界と言っていいでしょう。
 また、作品冒頭でしまりんが松ぼっくりを拾うシーン。ゆるキャンではお約束とも言っていい\コニチワ/のシーンのはずなんですが、松ぼっくりは何も言わない。
 このシーンを見た時、「魔女の宅急便」のラストシーンでキキがジジの言葉がわからなくなっているシーンを思い出しました。
 しかし物語中盤で、かつての野クルのメンバーがキャンプの楽しさを思い出し、昔のようにみんなでワイワイやり始めると、お約束の\コニチワ/が出る。こういうところが本当にうまい作品なんですよね本作……。
 そもそも今回のなでしこたちの「キャンプ場を作る」というコンセプトは「5年以上前に放置された施設を再生する」という手段で達成されます。
 この「再生」はもう明らかに本作のテーマですよね。特に印象的だったのが、一気に施設をまっさらにしてしまうのではなく、もとからあったものは撤去せずに活かしたり、閉校になってしまった学校の遊具を持ってきたりという点。この辺は「再生」に加えて「継承」の意味も感じます。
 実際、今回のキャンプ地設立は最終的に、「自分たちと同じようにキャンプの魅力を知った人たちが楽占める場所にしたい」という、「かつてキャンプを楽しんでいた自分=過去」と「大規模な工事を行うことも可能になった大人の自分たち=現在」をともに肯定し、そこから先の「未来へ」「他者へ」につながるというこの構図があまりにも美しい。
 そしてこの「過去が礎となって現在を活かす」というコンセプトがもっとも顕著に現れたシーンは、あえて明記しませんが満場一致であのシーンでしょう。あれ完全にバトルシップじゃねーか!!!
 いやーもう最高でした。あと映画パワーで本作の飯テロ力(ぢから)はフリーザ様の第3形態波になっているので、これから見に行く皆さんは胃袋の中身に注意。
 あと大塚明夫さん演じるしまりんのじーちゃんの渋みよ……。
 いやーゆるキャンの劇場版として、いつものの日常の延長線といった感じの作品でした。楽しかったー。
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大阪ステーションシティシネマ「映画ゆるキャン△」見てきました!
初公開日: 2022年08月19日
最終更新日: 2022年08月20日
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