はい、引き続きサンサン劇場に入り浸りのわたくしです。
今回見てきたのはこれ。
まったく知らないタイトルだったんですが、なんでも日本初公開で、公開される映画館が横浜とここだけということで見てきました。
しかも1日限定公開ということなので、こりゃ見とけば冥土の土産話になるなあと思い、見てみることに。
バーブとスターは日々を気楽に生きる中年女性。しかし、ある日突然職を失い、所属していたコミュニティからも追い出されて失意のどん底に。
そんな二人は、ふとしたことから知った真夏の楽園「ヴィスタ・デル・マール」に行くことを決意します。しかし、別の場所ではそんな平和な街の住人を皆殺しにしようという悪の陰謀が進行していたのでした……。
本作の感想を一言で言うと、「面白い映画」「感動的な映画」というよりは「おめでたい映画」といった感じでしょうか。ほらあれですよ、「カンフー・ヨガ」と同じジャンル。
基本的に登場人物は全員おバカさんで、終始観客席からは笑いが漏れていました。個人情報の扱いダダ漏れのエージェントやらなぜかカニの役のモーガン・フリーマンやら、実に笑いどころが豊富。
あと、バーブとスターの二人が出会う魅力的な男性にして悪の組織の手先であるエドガーもだんだんバカになっていくのが笑えます。なにいきなり踊りだしてるんだよこの人……。
そうした笑いどころも、どこか懐かしい、例えるなら「ホットショット」や「ポリス・アカデミー」とかのあのノリ。分かれ。作品のピックアップが古いとか言うな。
下ネタ多めでだいぶお下品なギャグもありましたが「お下品」であって「下品」ではないのがさすがというかなんというか。
起承転結どの部分を見ても全シーンにバカバカしさが溢れてるんですが、それらのバカバカしさがなんというか「爽やかなバカバカしさ」なんですよね。この味わいはけっこう珍しい類のバカバカしさかもしれん。
そして本作、おバカな映画という側面の一方で、いわゆるミドルエイジ・クライシスを描いている側面もあります。
夫を失っており、さらには職場と所属していたコミュニティをも失ってしまったバーブとスターの二人はもちろんのこと、悪役であるエドガーやシャロンも同じです。
エドガーはシャロンと夫婦になろうとして奮闘するものの見放されつつあり、シャロンは過去のトラウマに取り憑かれた結果ヴィスタ・デル・マールの住民を皆殺しにする計画に人生を費やしてしまう。
本作は、そうした人々の欠落と癒やしの物語という一面もあるのではと感じました。
本作の冒頭で、職を失ったバーブとスターが楽しそうに昔の思い出話をしていたのにふと現実に戻ってしまったときのあの表情よ。
そもそも二人がヴィスタ・デル・マールを訪れたのも、失われた青春を取り戻そうとしてのことですしね。
しかしラストシーンでは、スターはエドガーと結ばれ、バーブはスターとの友情を取り戻し、シャロンは友人を得る。見事に各人の欠落を満たしたラストだったと思います。
ここで実に良かったなあと思ったのが、熱い抱擁を交わしたスターとエドガーはいったん離れ、物語中盤でのケンカのせいで実現してなかった「二人でバナナボートに乗る」で物語が締めくくられていた点。
二人の最終的な幸福はやはり二人の友情だったというこのラストは、「二人は新しい幸福を掴み取った」ではなく「二人の幸福はそもそも最初からその手の中にあった」という意味に見えました。
これが例えばビルドゥングス・ロマン、つまり未熟な若者の成長物語であったなら、ラストシーンは「新しい自分を手に入れて生まれ変わる」が正しい締めくくりとなるでしょう。しかし本作の主人公は、十分な時間を積み重ねた中年女性。であるなら、この「失ったと思っていた輝きは最初から自分たちの手の中にあったことに気づく」というラストはこの上ない正解だったと思います。
まあこういう小難しいテーマを考えなくても、全編通しておめでたいおバカなノリが楽しめる良作でした。
コロナ禍に加えてサル痘や連日の猛暑などで暗澹たる気持ちになりがちな昨今ですが、こうしてみんなで映画を見ながら大笑いできる機会を設けてくださったサンサン劇場に、そして本作を作ってくれた製作者の方々に感謝しつつ筆を置きたいと思います。
いやー映画ってほんとにいいもんですねー。(パクリ)