■一部で原作のセリフを引用しています
□話の性質上原作の前後関係をいじっています
生い茂った草木を踏みつけて立っていた。学校と呼ぶには荒廃していて、けれど学校としか言い表せない場所に、一人で立ち尽くしていた。
ここには誰もいない。私を知る人は、きっとここでなくても私を含めて誰もいないと思う。だからどこにいても同じかもしれないけれど、ここには一番大切な音が足りなかった。耳に痛いほどの沈黙を振り切るように歩き出せば、舞った埃が陽の光で煌めいた。
私は教室には目もくれず、どこまでも続く廊下を歩いていた。
視界が激しく明滅する。平衡感覚がおかしくなって、何かに捕まろうともがいたら勢いよく前に転んだ。少し遅れて聞こえた音のする方を見れば、ロッカーから人が飛び出していた。自分の姿を確認するまでもなく、私も同じようになっているのだと確信した。
なんだか前にも似たようなことがあった気がして、ああ、と自覚する。最原くんと出会ったときと同じだ。だからこれは夢だ。
「」
「赤松さん、」
音楽室なんて私のための場所じゃん、と思っていたら、まさしく私のための教室だった。『超高校級のピアニストの研究教室』、
ドアノブを引こうとすると。おはっくまー!という挨拶とともに鍵が開けられる。なんとなく変だと思った。何が変なのかは分からないけれど。
ドアノブを握ったまま立ち尽くす私に、。なんでもないよ、と返してから、。
ピアノが弾ける! 数時間ぶり!? いやもっとかも!!
「赤松さん、落ち着いて! ……えっと、こういう時は『ジムノペディ』だっけ?」
サティの『ジムノペディ』、これも私が最原くんと初めて会ったときに教えた曲だ。生徒手帳で検索して曲が流せたらよかったんだけど、名前を覚えていてくれただけでも嬉しい。さすが超高校級の探偵、ってところかな。
「うん、そうだね……(赤松)」。
「そうだ、さっそく一曲弾いちゃおっかな! 最原くん、リクエストある? こういうときは軍隊ポロネーズ? いや、あえて月の光もありかな?!」
「うーん……。じゃあ……」
幸せな夢が終わる。ううん……違うか。全部覆して幸せな未来を掴むために、私が終わらせるんだ。
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研究教室が開放されてから、教室周辺には毎日ピアノの音が響いている。
「だってピアノだよっ! それに、これでもかなり自重しているからっ!」
初めて会った時の彼女の話では、何日篭りっきりでも不思議じゃない感じだった。
「ピアノが一番だけど、ここを出てみんなと友達になるっていうのも譲れないことだから!」
ピアノが一番なのか、と突っ込みたくなる気持ちをこらえる。僕はともかく、他の超高校級の同級生たちも、彼女と同じなのだろう。
「希望ヶ峰学園の生徒として、絶望に屈するわけにはいかないしねっ!」
「そ、そうだね……」
無視できない違和感を一旦頭の隅に置いた。
「あっ、そういえば帽子!」
つばに触れる。