悲しきかな。配信開始押してなかったよ。勢いあまって消したからもう一回書き直す。
「泣かせた」
いつも以上に強張った姿勢と視線。ピンッと張った空気は今にも爆発してしまいそう。そんな空気を醸し出している隣の彼は一応とかそんなことなく、私の彼氏……いや、婚約者である。
緊張したような息遣いに零れた吐息。彼の視線が向いているのは私ではなく、テーブルをはさんで向かい側に居る優し気な風貌の男。
「ふぅ」
彼が小さく息を吐いたと同時に、彼の筋肉が更に強張った。
「お義父さん」
「うん。なんだい。義勇君」
優しく微笑んだ男は紛れもなく、私の大切な父親である。
そんな私の父親と私の彼氏が向かい合って何をしているのか。勘のいい人でも悪い人でも何となくの予想はついているだろう。
「娘さんを……いえ、しのぶさんを俺の持ちうる全てを掛けて幸せにすると誓います。ですので、どうか、しのぶさんと一緒に居る権利を、結婚することを許していただけないでしょうか」
義勇さんこんなにも話せたんですね。なんて場違いなことを考える。
数秒静寂が場を包んだかと思えば、父親は柔らかく微笑みを浮かべて、小さくうなずいた。
「あぁ、勿論」
「っ! あ、ありがとうございます」
テーブルの下でそっと手が握られたかと思えば彼は嬉しそうに、私の指を絡めとってくる。あぁ、なんて可愛い人。
「ただし、一つ条件がある」
「えっ」
父親の発言に彼は身を固くし、私も予想していなかったその条件とやらに思わず変な声をあげてしまう。
「全然、変なことではないよ。ただ、二十数年育ててきた愛娘だからね。幸せにして欲しい。そして、泣かせるようなことはしないでくれ。これだけだ」
なぁんだ、そんなことか。と力が抜ける。これで晴れて私と義勇さんも親公認の婚約者に……。嬉しさに微笑みが零れたのと同時。彼が小さく、あっ。と声を漏らした。
「お、お義父さん……俺は、しのぶさんを泣かせたことが……」
わなわなとどうしようかと震える彼に、えっ、泣いたっけ!? っとなる私。
「私、泣きましたっけ……? まさか、映画とかノーカウントですよ?」
「いや、それは分かってる」
「それでは……?」
「あの時だ。俺がお前に結婚の申し出をした時……」
「えっ、あっ、そ、それは! 確かにそうですけど、嬉しさからくるものでしたから……!」
「ねぇねぇ、その話詳しく聞かせてくれない?」
「ね、姉さん!?」
「えぇ、義勇君が本当に泣かせたのかジャッジするためにも」
「母さんまで!」
「あぁ、そうだな、僕も聞きたい」
「父さんも! ちょっと!」
わいわいと盛り上がる家族たちとは対照的にびくびくと縮こまった義勇は重い口を開く。
あれは、一か月ぐらい前の事……
あきた
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初公開日: 2022年05月16日
最終更新日: 2022年05月16日
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