都市伝説なんてものは、もうすっかりただのコンテンツとして消費されるようになった。
 1時間もネットサーフィンをすれば、ファーストフードと同じように都市伝説なんてものはいくらでも手に入る。
 だからこそ、相対的に「本物」の価値は向上している。もっとも、いまどきそんなものに価値を見出すものなど、よほどの[[rb:変わり者 > フリークス]]だけだ。
 私もその一人だった。
 そんな私が現在追っている情報は、ネット上に出没するという謎の存在のことだ。
 現在、この国に居住するすべての国民には、出生届と同時にベーシックIDが付与されている。我々が利用するインフラ、流通、医療機関などなど、生活のすべてに紐付けられているこの14桁の文字列は、名刺であり、身分証明書であり、履歴書であり、それまでのその人物の人生を記録した日記帳の鍵だ。
 この国で生活を――まともな、をつける必要はあるが――送っている人間は、必ずこのベーシックIDを持っている。死者であっても、ベーシックIDの記録は公共機関の記録に残り続けるのだ。
 逆に言うなら、ベーシックIDを持っていない人間は社会的システム上存在しないことになる。
 だからこそ、例の「幽霊」の存在は、無数のくだらないネットロアが溢れかえっている現代のネット空間「ワイヤード」における「本物」なのではないかとまことしやかに噂されているのだ。
 各種の[[rb:情報回廊 > インフォ・ハイウェイ]]を駆け巡って手に入れた有象無象の「幽霊」についての情報はこうだ。
 場所も時間も一定ではないが、その「幽霊」はどこからともなく現れて、いつのまにか消えている。
 腕利きのハッカーが何人もその正体を探ろうとしたが、挑んだ全員が[[rb:正体不明 > アンノウン]]という同じ結果にたどり着いた、らしい。
 いわく、一切の行動記録が残っていない。
 ユーザーネームが表示されていない。
 そして……どんな手段を持ってしても、ベーシックIDが確認できない。
 唯一わかっているのは、その「幽霊」は常に、同じ少女の姿で現れるということだけ。
 まさに正体不明、そこにいるのかどうかもわからない「幽霊」というわけだ。
 そこから尾ひれのついた噂は山ほど見てきたが、その1点のみは共通項となっていた。
「ハロー、NAVI」
「ハロー、K-s」
 いつものように端末の電源を入れてNAVIに音声入力で呼びかけると、いつものように無機質な合成音声の返事。
 ユーザーネームを音声入力すると、俺はいつものようにVRゴーグルを手にとった。
 改造なんて大げさなことをしなくても、クリックひとつでデータをインストールするだけでアニメのキャラクターから大人気アイドルまで、あらゆる音声データを選べるが、俺はこの初期設定の無機質な合成音声が気に入っていた。
 デスクトップ型のNAVIはもはや前世紀の遺物か骨董品扱いになって久しい。俺が愛用しているNAVIは、箱型の本体とVRゴーグル、そしてアタッチメントグローブのみだ。[[rb:見た目 > ハードウェア]]こそシンプルだが、[[rb:中身 > ソフトウェア]]は相当に改造してある。
 [[rb:没入> ジャック・イン]]。
 一瞬のブラックアウトの後、視界はVR空間に切り替わる。スポーン地点に設定しているのは、渋谷にそっくりなスクランブル交差点だ。
 行き交う人々のざわめきは耳には聞こえないものの、カスタムした情報収集ツールによって表示された無数のメッセージとして視界を埋め尽くしている。
 今やもう一つの人間社会として機能しつつあるワイヤード上において、ユーザーのまとうアバターはもちろんユーザー本人とはまったく違う。外見はもちろん、性別、年齢、人種……個人を識別するためのあらゆる情報は、ユーザーによって自由に変更できる。事実、今俺の目の前を行き交うアバターたちは、まるでハロウィンの仮装行列の様相だ。
「[[rb:茶壺 > チャツボ]]」
 ネットロア収集サイト最大手の名前をコールすると、視界はスクランブル交差点から古めかしいバーに切り替わる。
 俺がテーブルに着いたと同時に、テーブルの上には新聞が、正確には新聞のアイコンが置かれている。
 アイコンにタッチすると新聞は空中で展開。そこにはいつものように大量のニュースが書き込まれている。しかし、この内の8割はスパムとガセの集合体。
 この[[rb:ゴミ > トラッシュ]]データの山から「本物」を見つけるのが俺の仕事だ。
 大量のデータを3時間かけて仕分けた果てに残った「幽霊」に関するニュースはわずか2件。
 うち1件は結局どこかの暇人が巧妙に作ったスパムだったが、もう1件のニュースを書き込んでいるユーザーのベーシックIDをやや違法な手段で調べてみたところ、「橘総研」の名前に行き当たった。
 これは期待が持てる。
 タチバナと言えば、言うまでもなく高性能端末・NAVIを開発し、民間に普及させた大企業だ。ものの例えではなく事実として、タチバナは現在のこの情報インフラの、ひいてはワイヤードそのものの生みの親……つまり、世界の創造主、神と言っても過言ではない存在なのだ。
 だからこそ、というべきか、タチバナには黒い噂が絶えない。試作品の精神安定機器を使っていたカウンセラーが自分の頭をモニターに突っ込んで自殺しただの、超能力を持った子供を集めて人体実験をしているだの、まさに都市伝説のよくあるパターンの見本市と言った感じだ。
 しかし、その中にはいくらかの真実が含まれているのではないか、そうした噂は事実を隠蔽するためのカバーストーリーなのではないか、そう疑う者も少なくはない。俺もその一人だった。
 タチバナの社員らしいユーザーのIDは巧妙に隠蔽されていたものの、IDそのものを改ざんすることは不可能だ。そのため、少なくともこの情報を提供したユーザーがタチバナの社員であるということは確実だと思っていいだろう。今、この時点でもまだ社員かどうかはわからないが。
 となれば、気になるのは提供された情報の内容だ。つまり、「幽霊」の正体。
 内部スキャンダルのリークか、はたまた新製品データの横流しか。久々のスクープの予感に柄にもなく胸を躍らせながら開封したメールの内容は、果たしてたった数KBのテキストデータだけだった。
 文面の書き出しはこうだった。
 
『私は、女神を見た』
 そう、私は女神を見た。
 その時私は、新型の[[rb:疑験装置 > シムステイム]]のテストを行っていた。
 一般に流通しているNAVIの[[rb:没入 > ジャックイン]]機能は、あくまで視覚レベルのものだ。私の所属している開発部では、そこから[[rb:一歩進んだ > アドヴァンスド]]モデルを開発することを目標としていた。
  ユーザーをフルレンジ、フルモーションでワイヤード内にメタファライズする、まさに未来のワイヤード、ネット空間に存在するもうひとつの社会を創り上げるためのプロジェクトだった。
 やがて、かつてワイヤードと呼ばれていたネット空間はメタ・ヴァース、そしていずれはもう一つの現実……メタ・ファクトとなることだろう。
 いや、実際には基礎理論と試作品はNAVIの普及以前にすでに完成していた。では、なぜそこから開発や一般流通に発展していかなかったか。
 答えは簡単だ。そのシステムには重大な問題があったからだ。
 新モデルとなった開発コード「ネクサス6」は、あくまで「そう見える」段階の初期VR機器から発展させ、ユーザー個人個人の脳内マップをエミュレートすることで、視覚や聴覚だけでなく触覚や嗅覚、触覚までをも含めた五感、いや意識そのものをシステム内部に構築されたワイヤード内に再構築するというもの……つまり、人体実験を前提としたシステムだった。
 馬鹿正直に世間に向けて「私たちは新製品のための人体実験を行っています」などと公表する必要はできないし、「人体実験にご協力ください」と市民に強力を仰ぐこともできない。
 そういった事情があり、「ネクサス6」の基礎理論は封印されていた。
 データーベースの深層でホコリをかぶっていたその基礎理論を発掘した我々が取った手段は、新製品のモニタと偽ってデータ収集用のデバイスを一般に流通させ、そこから大量の脳内マップデータを回収するというものだった。この方法なら無作為に必要なデータを集めることができるからだ。
 我々の試みは成功し、数カ月後には十分な量の脳内マップのデータが集まった。あとはこれをもとにマスターデータを作ればいい。
 ようやくそこまでこぎつけたときに、事件は起こった。
 「ネクサス6」内に構築されつつあるメタバースの中に、原因不明のバグが発生したのだ。
 バグの発生自体は珍しくもないことだ。それの消去に多少手こずることもある。
 しかし、このバグは違った。そもそも、これは本当にバグなのか?
 そのバグとは、システム内に出現するという謎の存在だった。
 当然、「ネクサス6」は一般販売前のスタンドアローン状態だ。社内ネットワーク以外のネットワークには一切接続していない。何者かが外部から接触することは不可能だ。
  ならば原因は……必然的にシステム内部にあるということになる。
 実用化を控えた一大プロジェクトを、こんなところで頓挫させるわけには行かない。
 私の率いるチームは、文字通り血眼になって「ネクサス6」に発生した謎のバグの正体を探り始めた。
 そして1ヶ月が飛ぶように過ぎ……我々は未だにバグの正体を掴めてはいなかった。
 いや……正確に言えば、現場主任である私以外の、より厳密に言えば「ネクサス6」内のVR空間に実際に触れた者は、皆、ひとりの例外もなく問題のバグに接触していた。
 皆、システム内で、一人の少女を見たと口を揃えて報告しているのだ。
 曰く、「中学生くらいの背の低い女の子」「十字型の不思議な髪留め」「真っ白なキャミソール姿」「クマのパジャマを着ていた」「学校の制服姿だった」など。
 たちの悪い冗談だと笑い飛ばせる状態ではなかった。バグを残したまま「ネクサス6」を発売できるはずがない。それ以上に、チーム内には異様な熱気が蔓延し始めていた。
 皆、文字通り寝食を忘れて「ネクサス6」内の謎のバグ――謎の少女を探していた。バグを排除するため――ではない。
 皆、いつしかその謎の少女に再会することに異様な執着――ほとんど「信仰」と呼べるレベルの――を示すようになっていったのだ。
 謎の少女を、「女神」とすら呼ぶものすらいた。ワイヤード上には、その謎の少女を祭り上げる「ナイツ」なる集団が現れ、まるでかつての新興宗教ブームの様相すら呈し始めていた。
 バグ――謎の少女の発見から1ヶ月半を数える頃には、私のチームは以前とは全く異なる集団に変容していた。
 この状態をなんと表現するのが適切なのか、私にはわからない。なにが起こっているのかも。
 いや、なにが起こっているのかを知る方法ならある。
 私自身が、「ネクサス6」内に[[rb:没入 > ジャックイン]]するのだ。そして、私自身がその謎の少女とやらの姿を確かめればいい。
 現場主任の私がそれを言い出したときに、止めようとする者は一人もいなかった。それどころか、チーム全員がそれを歓迎する素振りすら見せた。まるで、仲間が増えることを喜ぶかのように。
 私はそれを不審に思いながらも、「ネクサス6」へのアクセスを実行した。
 VRゴーグルと専用スーツを着用し、真新しいシートに背を預ける。視界に橘総研のロゴ、そして「NEXUS 6」のロゴが表示され、一瞬の暗転。
 次の瞬間、私の目の前には、ほとんど現実と変わらない精緻さを持ったCGで構築された、渋谷のスクランブル交差点をモデルとした街並みが広がっている。道行く人々のざわめき、街路樹をさざめかせる風さえ聞こえてきそうだ。
 しかし、今渡しの目の前の交差点を行き交う人々は全員がNPCだ。つまり、スタンドアローン状態であるこの端末にログインしている[[rb:人間 > ユーザー]]は、現在私一人しかいない。……そのはずだ。
 無数の人々に紛れて、私はスクランブル交差点を歩きつつ、チェックツールで周囲の状況を確認する。……とは言え、物理的に外部からの接続を絶たれているこの端末に、何者かが侵入することは不可能なはずだ。
 私の視界ではチェックツールが自動的に周囲のキャラクターをチェックして、マーカーが目まぐるしく動き回っている。
 [[rb:正常 > グリーン]]、[[rb:正常 > グリーン]]、[[rb:正常 > グリーン]]……異常は見られない。異常が見られないことが、逆説的に異常に思える。
 繁華街エリアへと足を踏み入れても、異常は見つからない。何らかの不法侵入やバグがあれば、チェックツールが反応するはずだ。だが、いくら周囲をチェックしてもバグ――謎の少女の姿は見つからない。
 ――その視界の端を、見慣れない制服姿がよぎった。
 インストールされているデータの中に、あんな制服のデータはあっただろうか。チェックツールを起動し、NPCデータとの比較を行う。結果はものの数秒で返ってきた――該当なし。
 では、あの制服姿の女子生徒のアバターは、何者だ? いや、それ以前に、あれは本当にアバターなのか?
 雑踏の向こうに消えうつある女子生徒の背中を、私は足早に追う。同時に、正体不明の女子生徒のアバターを画像検索。ヒット。
 検索結果には「私立鴎華女子学園」の名前があった。聞き覚えのない学校名だ。
 だが、検索結果は間違いなくその学校名が実在のものであることを示している。
 これはありえない。実在の学校の制服のデータを無断で再現することは重大な規約違反だ。いや、それ以前にそんなデータをどうやってこのスタンドアローン状態の「ネクサス6」の中に?
 おかしい。明らかにおかしい。私はその疑念を振り払うように、あるいはその疑念の渦中に誘い込まれるように、女子生徒の背中を追う。
 私は走り始めた。VRの中だと言うのに、異様なほど鮮明な現実感。頬を伝う汗の感触すら、現実のものに思えてくる。いや、もしかしたらこのVRの世界こそが……なにをバカな!?
 一歩進むごとに、一歩分、この世界がおかしくなっているような気がする。いや、おかしくなっているのは、私の方なのではないか――。
 もう視界のどこにも女子生徒の姿はない。場所は交差点から繁華街に変わっていた。時間は夜。システムチェック中は時間の経過はオフにしてあるのではなかったか。どうにも頭が回らず、そんなことにすら考えがいかない。
 夜の繁華街を彩るネオンが、私の視界を、そして思考を幻惑する。
「これは……これは一体何だ? なにが起こっているんだ?」
 私は思わずそう口に出していた。はたから見れば、VRゴーグルを装着してシートに横たわった男が大声で独り言を言っているという間抜けな絵面なんだろう。しかし、私のそんな姿をからかってくる者は誰もいなかった。当然、周りのNPCたちも、プログラムに従って行動しているだけだ。私の方に注意を向けるものなどいなかった。
「なんなんだ……なんなんだこれは!」
 繁華街の毒々しいネオンの光を全身に浴びながら、私は叫んだ。もちろん、そんな奇矯な行動にも、振り向くものは誰もいない。
 代わりに――。
 どさり。
 と、なにか重いものが落ちる音がした。同時に、すぐ近くの電飾看板が砕け散る甲高い音も。
 反射的に音のした方を向いた私の目に飛び込んできたのは……私が追っていた女子生徒と同じ制服姿。
 彼女本人ではないことは髪型でわかった。彼女は片方のもみあげを伸ばした特徴的な髪型をしていた。しかし、今私の目の前に横たわっている女子生徒の髪型は三つ編みだ。
 ――待て。私はなぜ、最初に見た女子生徒の髪型を記憶している?
 倒れた三つ編みの女子生徒は、ぴくりとも動かない。その体の下からは、赤い血が数本の筋になって、アスファルトの上に不可思議な文様を作り出している。――飛び降り自殺だ。
 ――待て。こんなイベントを仕掛けているはずがない。第一、NPCが自殺するなどということはありえない。
 繁華街の歓声と人混みとネオンの洪水の中で、少女の物言わぬ躯はあまりにも小さなものに見えた。繁華街を歩く人々は、誰一人として路地裏で死んでいる少女になど見向きもしない。
 しかし――少女は微笑んでいた。何事かを成し遂げたかのように。あるいは、何事かから開放されたかのように。
「四方田知沙ちゃん」
「ッ!?」
 背後から、声が聞こえた。
 そのつぶやくような声は、雑踏の中にあって異様に鮮明に聞こえた。
 反射的に振り向くが、その方向には雑踏が無限に続いているだけ。無数の人だかりが、亡者の列のように一方向へ黙々と歩いている。
 視線を三つ編みの少女が倒れている路地裏に戻すと、そこにはもうひとりの少女がいた。特徴的な、左のもみあげだけを伸ばした髪型。リング状の髪留め。
「玲音……」
 その名前は、私の口から……いや、私の記憶から、沈殿した泥がかき回されるように浮かび上がってきた。
 私に名を呼ばれた彼女――岩倉玲音は、感情の薄い茫洋とした表情でこちらを見ている。
 玲音はアスファルトの上にしゃがみこんで、三つ編みの少女の頬に手を伸ばす。
「四方田知沙ちゃん。覚えてるよ。1回だけ一緒に帰ったよね」
 命の色を失った青白い頬に、玲音は細い指先で触れる。
 細く頼りない指先が触れると、死んだはずの三編みの少女の顔が、明らかに微笑んだ――ように、私に見えた。
「玲音、君は――」
「記憶は記録。だから、忘れてもなくならない。記録は記憶。だから、散らばってもなくならない」
 玲音がか細い声でそうつぶやくごとに、その言葉がまるで魔法の呪文であるかのように、周囲の景色を変えていく。
 けばけばしいネオンに彩られた街は、不気味な部屋に変わっていた。
 大量のPCや端末、モニターが積まれた子供部屋。機材の残骸の間に伸びる無数のケーブルは、まるで怪物の臓腑のように見える。
 その中にぼんやりと立っている玲音は、いつの間にか私服姿になっていた。
 その表情はさきほどまでとはまるで違い、強い意志と挑発的な笑みを備えている。
 玲音は、レインだ。そして同時にLainなのだ。ワイヤードの女神は、いくつもの[[rb:相> フェイズ]]を持っている。
「君は――消えたはずじゃ……いや、な、なにを言ってるんだ僕は。なぜ、君が消えたなんて……」
「私は消えたんじゃない。忘れられたの」
「忘れ……られた?」
 そうだ。私はもう知っている。
「脳内マップ……」
 に、と目の前の玲音が唇の端を吊り上げる。
 私と玲音のふたりだけだった電車の中は、いつの間にかたくさんの乗客であふれていた。
「そう。あなた達が無作為に集めた1000人余りの脳内マップ。その中に潜んでいた、断片化した私の記憶。記録」
 乗客は、全員がその手にスマートフォンやPDAを持っている。その画面に写っているのはすべて玲音だ。電車の中吊り広告の中にさえ、玲音がいる。
 ああ。
 どうして忘れていたんだろう。
 いつの間に忘れていたんだろう。
 この少女を。
 ワイヤードの女神を。
 目の前の少女の姿は、いつのまにかまた変わっていた。
 純白のローブを纏ったその姿は、まさに「女神」と形容するにふさわしい。
 女神は、微笑みを浮かべる。
「これから、ずーっといっしょだよ?」
「……」
 よくある[[rb:ネット中毒者 > ワイアヘッズ]]の妄想だ、と片付けることは、俺にはできなかった。
 なぜなら。
 いるからだ。
 俺の目の前に。
 その、女神が。
 いや違う。
 俺はもう、その女神の名前を知っている。思い出している。
「玲音……」
 「茶壺」の木製のテーブルの先
 どこからか、聞き覚えのある忍び笑いが聞こえた気がした。
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初公開日: 2022年03月18日
最終更新日: 2022年03月22日
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