「重すぎだろ……」
帰り道、隣を歩く人物に向かって木崎はぼやく。彼の手には膨れ上がった紙袋がぶら下がっていて、中にはカラフルな包装紙が見えた。木崎の呟きに、ソイツは揶揄うように笑う。
「そう言いながら一袋持ってくれる木崎さんやっさしー」
その言葉にグ、と木崎は言葉を詰まらせた。そう、この重い紙袋は元はと言えば隣に立つソイツ──高谷の荷物である。実際、彼の手にも同じように中身が詰まった紙袋を提げている。
これが何かと言われれば、チョコ、と答えるしかない。今日は二月の中旬、あの行事の日である。
「お前毎年こんなもらってんの」
「んーまあ。でも、クラスの子たちの義理とかも入ってますよ」
一応、と付け加えられた情報も何の役にも立っていない。木崎はクラスの誰からももらっていないからだ。別に欲しいわけではないが。
高谷が女子に人気なのは今に始まったことじゃない。ことこういう行事では、毎回忙しそうにしているのを見かける。のだが、今回は訳が違うのだ。
「ねー木崎さん」
「んだよ」
「木崎さんからのは無いんですか?」
高谷がそう聞いてくる理由はただ一つ、二人が付き合っているから、に尽きる。
付き合い始めてからもう暫く経つ。恋人という関係で、恋愛事のイベントに乗っかったって何も不思議ではない。しかし、木崎の口から出た言葉は。
「ある訳ねーだろ」
その一言だった。高谷よりも少し前を歩く木崎は、振り返りもせず当たり前のように言い放つ。
「つか、男同士でそういうの、ウゼーだろ」
暫くの沈黙が流れた後、後ろから小さく、自嘲気味な笑いと共に、返事が返ってきた。
「……ハハッ、ですよね」
途端に、高谷の足が止まる。後ろからついてくる気配が消えて、不審げに木崎が振り向けば、高谷がこちらを見つめながら紙袋を握りしめていた。
どうした、と聞く前に高谷の指が袋の中に消えていき、取り出したのは、飾り気のないシンプルな包装の箱だった。
「……オレも、そのウゼー奴の一人だったりして」
他の華やかなプレゼントとは明らかに雰囲気が違う、その箱の真意に木崎が気づく前に高谷は言葉を続ける。
「ホントは、朝会った時に渡すつもりだったんだけど」
「……お前、それ」
「本人がいらないって言ってるし、自分で食べよっかな」
最後に寂しげに笑って、その箱をもう一度しまおうとすれば、その腕に静止がかかる。見れば、木崎が高谷の腕を掴んでいて、高谷の動きが止まった瞬間、手の中の箱は奪い取られていった。
「……寄越せよ」
もう取ってるじゃん、と呟けば、短くうるせーとだけ返される。
「俺のために用意したんだろ」
「……だって木崎さん、ウゼーって」
そう言いかければ、取られた箱で軽く頭を小突かれる。逸らされた顔は、微かに赤く染まっていて。
「俺が用意すんのも、ガラじゃねーだろ……」
そうとだけ言うと、また木崎は前を歩き出してしまった。高谷は慌ててその背中を追い、追いついた所でこっそりと指を捕まえる。
後で、渡したチョコの味を聞かなければ。
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付き合ってるきざたかバレンタイン【きざたか】
初公開日: 2022年02月23日
最終更新日: 2022年02月23日
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媚薬43
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R-18
汐音シロハ
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麻都香さんのりかいちプロットを書いてみるよ〜文句は受け付けません
汐音シロハ
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PM