「どうして自ら苦しみにゆくのですか?」
うるさい、放っておいてくれ。
自分でもよく分かってる。我ながら呆れるほど繰り返してきた。理屈じゃあ丸っきり理解しているはずなのに、どうしたってコントロールできない。それくらい愚かな人間なんだ、俺は。
カーテンを閉め切って薄暗い部屋の中で、手元のスマートフォンのブルーライトだけが眩い。
とは言っても画面に何か生産的な何かが映ってるわけでもなくて、ただ白い丸が黒を背景に真っ直ぐ飛んで、端で跳ね返るだけだ。
別に見ていて楽しくもないが、取り立てて不快感もない。
もはや瞼を閉じることすら苦痛なのだ。
いくら目をつむって深呼吸を続けていても眠れない焦燥感。疲労からぴくぴくと痙攣する瞼。その全てが俺を苛立たせる。
ならば、この一ミリも役に立たないだろう、眼精疲労を悪化させるだけの映像で頭を空っぽにする方がまだマシだ。
心臓が脈動する感覚が、血液が流動する音が、ひどく邪魔なものに感じる。
それなしには生きていけないのに。
二十四時間、三百六十五日付き纏うものなのに。
俺が、俺自身であることが煩わしい。
この思考、この人格、この記憶、何もかもが。
どうしたって、ずっと付き纏うものなのに。
「やっぱり、下手くそだと思うんだよねー、ジッサイ」
「何が……いや、言わなくていい」
「生きるのが」
「言わなくていいって言った」
「ごーめん☆」
ベッドに横たわる俺を笑顔で見下ろす金髪の男は、欠片も悪いと思っていなさそうな声色で謝った。
実際にはこいつは存在しない人間だ。いや、存在はする。俺の頭の中だけにだが。所謂、妄想。
始めはこんな姿ではなく、そもそも姿と言えるようなものはなく、俺の心の声だけがあった。
この表現も正しくはないかもしれない。あったのは、己を責める様々な架空の存在。それは社会通念であったり、隣人であったり、通行人であったり、清廉潔白な人間であったり、精神科の医師であったりした。
そして、その全てが自分が演じているものだった。
全てが誰かの姿を借りた自己嫌悪の顕示だった。
その頃はまだ自分を傷付けることに快感を得られる時期で、苦しむことで罪を贖えると素朴に信じていた。その内、自分の心がそれに耐えられないことに気付き出す。この時点で大分手遅れではあったが、ぎりぎり妄想の手綱を握れはした。
批判ではなく、慰めを行う存在へ。
俺だって可愛らしい女性に話を聞いて欲しいという欲求はあった。だけれども、誰にも見られることはないと分かっていても、存在しない都合の良い異性に都合良く涙を拭かれている自分を想像しただけで耐えられなくなってしまった。
「妄想なんだから好きにすりゃあいーのにな。やっぱりバカ」
「黙れ……」
まず自分そっくりの見た目の形を作った。