ナギくんのこと、実は初めて弱らせます
・二人とも成人して20歳になった設定
・嘔吐注意
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「ああもう……!なんで私がこんなこと!」
 腕に抱えた長身の男を引きずって、自宅玄関のドアを開ける。
「ちょっと、自分の足で歩いてくださいって!」
 体重の殆どをかけられているから上手く身動きがとれない。右手をめいいっぱい伸ばして電気のスイッチを押すと、男はうぅ……と唸り声をあげて頭を振った。
「早く靴を脱いで。もう少しですから」
 六弥さん、強めの口調でそう言うと彼は酷い顔色でこちらを見た。
「初めてあんな不味いものを飲みました……」
 さいあくです、と眉間に皺を寄せた彼は、タクシーの窓に頭を擦りつけるようにして目を閉じる。先ほどまで紅潮していた頬は色を失い蒼白だった。
「酎ハイと言うんです。安酒ですよあんなもの」
 そう口にして、母国の彼はもっと芳醇で純度の高い酒を嗜んでいたのかしら?と思いを巡らす。ブレーキがかかり、赤信号が光る。都内の夜はこんな夜更けでもまだ明るい。
「居酒屋とか、初めてです?」
 頬を覆うように項垂れたナギにそう問う。こんな風に、二人きりでタクシーに乗ることなんか初めてで、空気感が掴めない。彼はどんな人間だったっけ。チラ、と隣を窺うけれど、過去に何度も何度も思い描いて憎しみを抱いたノースメイアの少年はどこか遠く、おぼろげだった。
 質問にしっかりとした答えは返ってこなかったけれど、確かに良い酒ではなかったかもしれない。最も、最近飲み会に参加できるようになったのは巳波も同じなのだけど。
「今度、美味しいお酒を飲みに行きましょ」
 ふーっと吐き気を堪えるような息遣いが可哀想なのに、可笑しくて。だって、あの六弥ナギが。巳波は前を向きそう呟いた。タクシーは動き出し、ナギが胸のあたりを抑えるようにピク、と動く。
「……棗氏、自宅まではあとどれくらいで?」
 パッとこちらを見た顔は、戸惑いと嘔気がない交ぜだった。
「あら」
「……気持ち悪い」
 ほんとにほんとにさいあくです。泣きそうな幼稚な日本語が小さく口の端から零れた。
「貴方、空腹だったでしょう。だからですよ」
 売れっ子の貴方は忙しいから。
「ランチは食べれたんです?」
 覗き込んだ相手の返事はなかった。
「うぅ……、」
 トイレの縁を抱えて、ナギは苦しそうに低い声をこぼし続ける。さっきからそればっかりだ。
 しっかりとした太腿が折り畳まれ、床に膝をついた格好は三方が壁に塞がれた空間で窮屈そうだった。
「水、飲みます?」
 開けっ放しのドアから声をかけると、否定とも肯定ともつかない声が鳴り思わず溜息をつく。
「飲んでください。早く終わらせたいでしょう」
 いつまでそうしてるんですか。ほら、とミネラルウォーターを差し出せば目の下の隈を濃くした彼が、疲れ切ったように手を伸ばす。一瞬だけ、それを見つめて、恐る恐る口をつける。トク、と飲み下した後、苦いものでも飲んだかのような表情をする。
「大丈夫ですよ。もう一口」
 ナギは巳波の言葉に従順だった。初めての悪酔いに思考がはっきりしないのかもしれない。トク、トク、とさっきよりも勢いよく流し込んだ液体。突然、ナギの身体がビクン!として、焦ったように水面へと向き直った。
「げほっ……ッ!、ぇっ、」
 背中いっぱいが強張って、力が入る。水分の多い吐瀉物がナギの口から勝手にあふれる。ごえっ、と喉の奥が開くような重たい音。右手の小指がピンと突っ張るように痙攣した。
 巳波は彼の左手から、そっとペットボトルを取り上げる。白いうなじには、薄っすら汗が滲んでいた。
「……ぅ、うぅ……」
 はーはーと肩で息をする。それでも吐き気が治まらず何度も胃が押し上げられる感覚に、生理的な涙が浮かぶ。文字通り、醜態だ。
「病気で吐くのとは違って、さほど苦しくないでしょう?」
 一応背中をさすって薄く笑うと、思ったより広い背中で驚いた。巳波の言葉に、ナギは何も言わずその背中からは苛ついた感情が伝わった。
「六弥さん、ほんと下手くそですね」
 一度吐いたきり、戻すことが出来ずにふーふーと息を吐くだけのナギを見下ろして、思わず感心したような声音になった。今までこんな風になったことなんて、なかったんだろうな。何故だろう。そう思うと少し胸がすく思いがする。
「こういうのは、変な力を入れない方が良いんですよ。思い切って出してしまえばすぐ楽になりますから」
 背後から手を回して、スル、と鳩尾の辺りを撫でるとナギは驚きと恐怖で固まった。水面から顔をあげ、ふいとこちらを振り返る。巳波はその顔にトイレットペーパーを引きちぎり唇の端を拭いてやった。瞳の動揺。こんな状況なのに、二人の顔が近いことにドキドキしていた。
「ほら、吐いちゃってください」
 見つめ合う視線を強引に引き裂き、ナギの頭を押しやった。この感情ごと、吐き出して水に流せば良い。温かな腹部に置いた手を、押し込むようにそっと押せば、ナギは低く叫ぶように、どぷ、と中身を吐き出した。ゲホッと咳き込む苦しそうな声の間に、泣き出す寸前のような声が混ざる。ゴクと喉が鳴る。
「____、」
 最後とばかりに吐き出した少量の水分と唾液が、静かに水面に落ちて行った。
「…………母国語で甘えたってね、此処じゃ誰も助けに来やしないんですよ」
 二人の間に沈黙が落ちる。再びこちらを見た彼の充血した青い瞳の奥に、微かな翳りを確かに見た。ごめんなさい、そう言うより先に体が動く。濡れた唇が重なって、なのにナギも巳波も動揺なんてしていなかった。
「私も少し酔ってるのかもしれません」
 やっと引いた水洗レバーが、ナギの吐瀉物を流していく。
 ではこの感情は、何処へ?
一応おわり!!!! 
あ、すごい時間ぴったりだ!
ありがとうございます!!!
ちょっと視点が巳波ちゃんしか入れられず、無念!修正して支部にのせられたらいいな。
ご視聴ありがとうございました~
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55:51
ななし@1d8c1b
うめさんの文めちゃくちゃ好きです…
60:40
ななし@1d8c1b
お疲れ様です!!!
60:56
ななし@b32b1d
お疲れ様でした!
61:34
ななし@b32b1d
時間ぴったりもすごいですが、美しい嘔吐でうっとりしました。
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向き
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ナギとみなみの話
初公開日: 2021年03月28日
最終更新日: 2021年03月28日
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コメント
ナギくんのこと、実は初めて弱らせます。
・二人とも成人して20歳になった設定
・嘔吐注意
作業
誰にも配慮しない作業配信。止まってる時間のほうが絶対長いでしょこれ。
うめ
テスト中
とりあえず一回やってみようという配信。下書きというかプロット。
うめ
小ネタ用めるまが
本編の前にネタの部分だけ書く
いかもん