*
キッ、とタイヤが音を上げる。その音を、車の中からきいた。
僕の乗せられた車、ロールスロイスの、レイス・ブラックバッチのまわりには、前方後方、左右に一台ずつの黒い車が、イデアさんの話すゲーム内でキャラクターのまわりにくっつく盾みたいに並走している。前と後ろには、車の外側にさらに黒いバイクがついている。厳重な護衛。まさに要人警護、といった感じだ。
僕とイデアさんが同じ車に乗っていないのは、どちらかひとりが狙われても、もう片方を逃げさせられるように、かもしれない。ボスとセミ-ボスの乗った車、目くらましかもしれないけれど、僕により多く警護がついているのは事実であって。ビジネス的な側面があるのか、それとも彼の意向なのか。わかりはしない。
車を運転する、今となっては部下の一人となった構成員。助手席には、幹部であるルーク。僕は後部座席の真ん中で、両隣に双子が身を縮めて座っている。
190cmの双子は圧が強くて、正直潰されそうだけど。知らないまちにわくわくしてか、窓へ寄ってくれている。わくわくする気持ちは僕も一緒だ。
助手席のルークが、「もうすぐ降りるよ」と僕たちに声をかける。
ジェイドと僕が「はい」と返事した。フロイドはすこし間延びして、「はぁい」。
ブレーキが軽くかかって、到着したのは、高い高いビルの前。
いつの間にか護衛の車たちは後方にはけていたようで、その影は見えなかった。
まず、ルークと運転手が降りる。何やら誰かに合図を出して、少しコンタクトを取ってから、後部座席の扉を開けてくれた。
ジェイドとフロイドが、また窮屈そうに出ていく。
ジェイドに手を引かれて、僕も車の外へ、立ち上がった。
すっきりとした、青空。底がなくて、高い。
二月上旬はまだまだ冬だ。しかし僕らのまち、ロンドンよりは少し暖かい。
僕とイデアさんが、初めて二人で遠出した時も、こんな青い空で、このくらいの気温だったか。少し昔を思い出して、わずかに頬が緩んだ。
双子たちはルークに何か言われて、離れていく。
代わりに黒いスーツを身にまとった男性たち数人がこちらに歩み寄ってくる。一人が言う。
「アズール様。こちらへお願いします」
歩くにも、ついていくにも毎度丁寧に「お願い」されるなんて、僕も偉くなったものだ。
促されるままに進む。向かうビルは、一番上が見えないほど高くて、見上げると首が痛くなってくる。尖った形状のこの建物はまるで、天を突きさす針のようだ。摩天楼とはよく言ったものだなと、ふと思った。
僕の歩調に完璧にあわせてついてくる護衛の人数は、計5人。
僕1人にSP5人だなんて、過保護が過ぎる。そんなことを言ったらイデアさんは、少ない方だとでも返すのだろうか。
ビルの真正面の大きなガラスの扉から、中へと入っていく。
今は、付き添いじゃない。歓迎される立場。僕が主役となって、このビルに入る。
受付のホールには、黒服の男性(中には女性もいたが)たちが、乱れ一つない綺麗な列を作って整列していた。
まず、ボスが真ん中に空いた一列へ、6人の護衛を後ろに連れて、珍しく背筋をきちんと伸ばして歩いていく。並んだ構成員たちが一斉にかしずく。
SPに促され、僕も後に続く。明らかに初めて見る顔のはずの僕にも、彼らはどよめきなどみせなかった。
ボスは全体の前まで来ると、皆の方を向いて立ち止まった。僕がその隣に行って同じように向き直ると、かしずいた500人余りの構成員たちの中から、前一列にいた7人が立ち上がった。
中にはルークと、トレイと、いつかマンチェスターで会ったラバトールもいたので、この5人は幹部の面子なのだと察した。
その中の1人が一歩進み出て、歓迎の口上を口にする。
「ようこそいらっしゃいました、ボス。セミ‐ボス、お初にお目にかかります。そしてこの度のご結婚、おめでとうございます。
構成員一同、今日この日、ボスやセミ‐ボスにお会いするのを楽しみに待たせて頂きました。
我らが百万ドルの夜景を、今宵は心行くまで、お楽しみくださいませ。」
ボスは「ありがとう」と小声で言った。これでも彼にとっては、頑張って声を出したほうだ。
僕とボスはSPに声をかけられ、ホールを後にした。
100階建てのこのビル、エレベーターへは少し歩く。
6人の護衛を後ろに連れたボス、イデアさんが、護衛をはけさせこちらに向かってくる。
「イデアさん!」
「アズール氏ぃ……もうやだぁ……帰りたいぃ……」
まだそんなことを。はるばるニューヨークまで来ておいて、今更何をぬかしているのか。
そう言ってやろうと思ったが、あいにく今は拳銃を持っていない。
しょうがないので、かわりに額をはじく。
「いい加減諦めては?貴方一人で、本邸まで帰れる訳もないですし」
「きゃいん……嫁がいぢめる……拙者の嫁がこんなに怖い訳がある……」
「おや、お好きでしょう?」
「はいその通りです。推しが一番尊いです」
素直になればいいんですよ、なんて言って。彼も、ふにゃりとほどけたように笑う。
そうしてるときの笑顔が、彼は一番だ。けど何かに夢中になっているときの顔も、真剣な顔も、時には怒った顔や泣いた顔だって、僕は好きだし素晴らしい。それは、僕のためだけに見せてほしいけれど。僕の、ボスの晴れの日を心から祝ってくれている構成員たちには、彼からも心からの笑顔でかえしてあげてほしい。でもそんな笑顔は、僕にしか見せてほしくないもので。
一度おちてみれば恋とは、矛盾ばかりだ。そんな、合理的でない矛盾でさえいとおしく感じてしまう。それがもう、矛盾している。ああ、彼の一挙一動が楽しくて嬉しくて、なぜだか寂しくて苦しくて、どうしようもなく彼を、捉えて離せない。
*
ビル内の廊下を少しだけ歩き、エレベーターに一分間弱ほどのって、また少し歩いた。
「こちらがお部屋になります。
常に2人、護衛が外で警備をしているのでご安心を。ごゆるりとお過ごしください。」
常に2人の人間が部屋の外にいるというのには、若干驚いた。
ドアを開けるには、僕かイデアさんいずれかの紋章が必須だ。一応非常事態には、ルークかトレイ、幹部のもう一人のものでも開くようにはなっているとか。転ばぬ先の杖は、何本あってもいい。
イデアさんが左手をかざすと、無音で、鍵が外れる。
扉を開け、中へ入る。
ドアの先の光景に僕は、卒倒しそうになる。
部屋、というかもはや、家。部屋の仕切りが開放的な、家。
マンションの一戸分ほどの広さは、余裕である。
こんな感覚を、行きの飛行機に乗った時も覚えたことを、僕は思い出した。
まず、キッチン。もう、普通に広い。それなりの料理くらいは、余裕で作れる。
人がキャパシティをこえて驚いたりときめいたり悲しくなったりしたとき、語彙がなくなっていくという現象を、はじめて体験した。イデアさんが言う「やばい」とは、こういうことだったのか。いますごく、ヤバい。
ダイニングは、うん。暮らせそう。
ベッドルーム。……うん。僕と双子の過ごしていた部屋の、軽く倍はある。
広いテラスも、両手を広げたほど(盛っているかもしれない)の大きさの大画面テレビも、百万ドルの夜景が文字通り見下ろせる大きな大きな窓も、全てが備わっている。
極めつけは、バスルーム。レストルームとバス部分は仕切られていて、更に脱衣所とバスがガラス戸で分けられている。
バスルーム全体は言わずもがな、中でもバスタブがもう、とにかく大きい。大人2人入るなんて楽勝だし、蛸の人魚である僕が人魚姿に戻っても余裕をもって入れるくらいだ。ちなみにジャグジー。夜景は一望。はい、言うこと無し。
語彙も思考も色々と吹き飛んでしまったが。
一大ファミリーのボス、すごくないか?
何をいまさら、と。冷静に思う。けど、これは、本当に今更実感したことのようだ。
これがいわゆる、スイートルーム、というものか。僕のように初めて来たひとがここに住みたいと思うのも、理解できるレベルだ。いや、僕は別に住みたくはないけど。今の居場所はロンドンのあのまちにあるからして。
スイートルームの規格の違いにおののく僕なんて気にせず、イデアさんは当たり前のようにジャケットを脱ぎ始める。
「は~~疲れた~~……もう寝てていいかな? パーティーとかいいからこのふわふわ人をダメにするオフトゥンを堪能してたい……本番いつになったら始まるんだっけ?
……アズール氏?」
「え、ああ、はい?」
「どったの?疲れたの? 長旅でしたからなぁ。おいで」
ん、と両腕を、招くように開かれる。僕がいくのを待っているのか、と一拍遅れて理解する。
疲れたから、というのは盛大な勘違いだが、彼がそうしてくれるなら応えない理由はあるまい。
ふわふわのベッドに腰を沈める彼のもとへ、体重を預ける。
「んん~……ねこたんみたい。かわいいね~、アズール氏」
「アズールって、呼んでください」
「ん゛ん゛っ……ぎゃわ…………あずーる……」
「……今日のパーティー、僕ずっと楽しみにしてたんです……頑張ってくださいね、イデアさん」
「うぅ……ッス……頑張りまぁす……」
彼の腕の中に入り込んで、ぎゅっと抱きしめ返す。
彼が、僕の触れたいように触れられる位置にまで来たことを、心の底から愛しく思った。
空いた首元に、キスが降ってくる。
触れるだけのキスは少しくすぐったい。
「どうしました?」
「んん、ちょっと……ね」
「くすぐったいですよ」
「ごめん」
そう言いつつもやめる気配がない彼は、可愛らしくさえ見えてくる。
するり、シャツの裾から手が入れられる。思わず背をのけぞらせると、彼は小さく笑った。
「ちょっ、と」
「ん~?」
「わざとでしょう……夜まで待つんでしたよね。イデアさん」
「……はやく、」
「したい、ですか?」
「……いや……」
「夜までですから。ぜんぶ終わったら……教えてください」
彼の身体を抱き寄せて、こっそり、かくれるように囁く。
「はじめてなんですから」。
イデアさんは「うう」とうめいて、名残惜しそうにひとつキスをして、また僕を抱きしめた。
「……怖くない?」
「そうですね。……実を言えば、少し、怯えてしまうかもしれません。」
過去のことについて、トラウマがないかと問われれば、ある。時折、思い出して嫌になることもある。
昇りつめて、何かがはじける感覚を、僕はまだ、やはり躊躇している。
けれど。
「でも、貴方を愛していますから」
それだけで、いい。
それだけで。彼と共にいたいと。彼と昇りつめてみたいと願える。
「怖くなっても、やめないでほしいんです。貴方になら、傷つけられたっていいんです。
貴方を手放す理由には、ならないんですから」
過去にあったことが、今の僕を縛ることはない。そう信じて、叶えていきたい。
彼は少しためらいながらも、うん、と頷いてくれた。
「……でも、痛かったら言ってね」
「っはは……善処します」
「傷つけたくないから。
……ちょっと、寝る?」
「そうですね……少しだけなら」
今日、僕たちは結ばれる。
*
目を覚ますと、16時半になりかけたころだった。
彼の腕の中から抜け出して、洗面所へ向かう。
そう時間をかけず顔を洗って歯を磨いて、用意されたアメニティの櫛で髪を軽くとかす。
寝室へ戻ると、彼も今しがた、起きたところだった。
いなくなった僕の代わりにするみたいに、枕を抱きしめてゆっくりと瞬きを繰り返すイデアさんに近づいて、「おはようございます」と笑いかける。
「……おはよ」
「もうすぐルークさんが呼びに来ると思いますから、起きては?」
「……ぁい」
もぞもぞ、彼がベッドから起きだしてしまうと、僕はベッドをただす。
宿屋の従業員もしていた僕は、ベッドをただすのは得意だ。
しわ一つなくなったシーツに掛け布団をかぶせて、いくつもある枕をバランスよく並べる。
シャツにもしわがついていることに気付いて、魔法でアイロンをかけた。
イデアさんが手持無沙汰に、こちらを眺めている。彼のシャツも魔法で綺麗にした。
「どうしました?」
「え、いや……何すればいいのかなって」
「ああ、では顔を洗ってきてください」
「り~」
彼を洗面所に送り出して、ジャケットを着なおす。
ルークが呼びに来たら多分、他の部屋で着替えたりなんなりして、開始時刻18時の30分前には支度をすませておけるはずだ。
「顔洗ってきた」
「早いですね。ルークさんを待ちましょうか」
「ええ……もうこっちから呼ぼ」
「えっ」
「ルーク氏~」
彼は時計に顔を寄せて、ルークの名前を呼ぶ。
ポーン。チャイムが鳴った。
「あ。入っていーよ」
「Bonjour! どうしたんだい?」
もう驚かない。呼んだだけで一瞬で来るのには慣れた。それがこの男だ。
「そろそろ行く?」
「ああ、もうすぐ呼びに行こうと思っていたところだよ」
「そ。じゃあもう行くわ」
「ウィ!では天使の君も。こちらへ」
ルークの案内に促されるまま、部屋を出て、またエレベーターで階下へ降りる。
イデアさんはずっと眠たげだった。
控室のような部屋へきて、僕はイデアさんと一度分かれた。
ルークが違う部屋へ僕を連れて行く。
「ここだよ」
「ありがとうございます」
「いや。
さあ、いちばん美しくなってきておくれ」
いちばん美しい姿を、今夜彼だけのためにつくるのだ。
そう思うと気持ちが少し浮足立って、心が躍るようだった。
+
鏡の向こうに、きらきらと輝くじぶんがいる。
ところどころ淡い水色のアクセントの入った白いタキシードに、明るい青色のネクタイ。
白い肌に、うすい海の色のアイシャドウが映える。いつも顔にかかっている銀髪は後ろにかき上げられ、同じく白い額があらわになっている。
頬はほんの少し赤く染まって、瞳は眼鏡越しでもわかるくらい光を反射して──、
僕が何か言う前に、隣にいるルークが口を開く。
「実に美しい、天使の君!
君はいつだって自信があって表情豊かで美しいけれど、今の輝きはいつの君にもかなわない。私の知るどんな君より、誇らしげで自信に満ちているね。君の、ろうそくの灯がともるようなやわらかな恋心は、誰より美しいよ。自室の君が見たらどういうか楽しみさ。それはそれは、見とれてしまうことだろう」
「ありがとうございます、ルークさん。嬉しいかぎりです」
同じく隣に控える、正装した双子たちは、何も言ってはこない。
さてどうからかってくるかと、双子の方を見やる。
「ッ……アズ―ル……」
「……」
いつの間にか見上げるようになっていたその2色の瞳には、涙がにじんでいて。
「お前たち?」
「……幸せに、なってください」
「……おめでと。……アズールが、ボスのモンになっても、オレもジェイドもアズールも、きょうだいだからな」
そういう双子は、少し、涙声だった。
僕のほうにも、いきなり、感慨がぶわりと広がる。
思い返せば、7年前。
僕らは、狭い世界から逃げ出した。
走って、走って、転んで、つまづいて。ときに疲れて、歩調を緩めたりもして。
けれど一度も立ち止まることなく、立ち止まることを許されず。
気づいたら、こうして成長していた。
ゆめみたこと。
誰かと愛し合い、添い遂げるだろうと。
望んだこと。
三人で、最期をともにすること。
気づいたら、こうして、変わっていたのだ。
「うっ……お前たち……やめろ、泣かすんじゃない」
「あははっ、道連れぇ」
「僕たちだけしんみりなんて、ガラじゃないでしょう」
「はあ……本当、二人とも……」
「ふふ。アズール、本当におめでとうございます。
応援していますからね」
「ありがとう。お前たちも、お前たちの人生を過ごしてください。ずっと願い続けていますから」
「ええ。でも僕たちは一生、小指をなくすつもりはありませんよ」
「おや。イデアさんに言っておきます?」
「ぜひ。さあ、貴方の王子様に、綺麗な姿を見せてあげてください」
客席で見ていますね。ジェイドはそう笑って、フロイドとともに控室を出て行った。
「さあ。舞台袖で、自室の君が待っているよ」
+
本番30分前。
僕は『僕』をつくり終わって、白基調の革靴の底を鳴らして舞台袖へと出て行った。
「……アズール?」
「イデア、さん……わっ」
目が合ったとたん、駆け寄って、抱きしめられた。
ルークの、他人のいる場所で、こんな──
「どうなさいました?」
「…………かわいすぎ……」
「はぁ?」
肩口に額をおしつけ、ふんわりとぐりぐりする。多分、化粧がとれるのを気にしているんだろう。
「ッあ~~~……ほんと……ダメだこれ……」
「ええ?何がです」
「可愛すぎて……ダメ……」
「は?」
「拙者の嫁こんなに可愛いんだよって見せびらかしたいけどこんなに可愛いアズールは誰にも見せたくないこのジレンマ……葛藤……わかる?
例えるなら、推しの尊さは全人類に知ってほしいしバズってほしいし総人口100万人いけばいいと思うけど、湧いてもほしくない、みたいな……薄い本が作られまくると冷めるみたいな……
秘湯を秘湯であり続けてほしいと願う冒険家……?」
「はあ……よくわかりませんが」
「そっかそだよねごめんね」
というか、その状態で早口しないでほしい。会話しづらい。
「どうです?美しいでしょう?」
「うんめちゃ……世界一美しい……やばい拙者のルーク氏化がとまらない……ミステリアスハイテンションにはなりたくない。それはそうとルーク氏、よくやった」
「ご本人いらっしゃるんですがねぇ。
そういう貴方も素敵ですよ。別人のようです」
僕を抱きしめたままなかなか離れようとしないイデアさんをはがして、背筋を伸ばさせる。
すると、まあ、彼も大概、美人だ。
白いタキシードは僕のものと似ている。対照的にシャツは薄めの黒色で、ベストは薄い暗青色。ネクタイも青で、蝶ネクタイ仕様だ。
タキシードにあわせて白い手袋を着けているが、もともと肌が白すぎて不思議と違和感がないのは、まあ黙っておく。
「あーこれ。拙者はいいんすわ。それよりもアズール。
披露宴衣装、もう一生見れないレアスチルなんで回収していスか……」
「ああでは僕もお願いします。等価交換ですから」
「ええいいけど……等価になる?」
「そう仰るなら、多く撮っても良いのですね?」
「いいけどね……」
写真は好きじゃないんだけど、とこぼすわりに、彼は撮るのは案外うまい。撮られるのには慣れていないけれど。
おたがい十数枚ずつ撮って撮られて、僕はお言葉に甘えて数枚多く撮らせてもらって。
本番まで、残り15分。
+
「あ、ね、ねえ、ルーク氏」
「うん?どうしたんだい?」
アズールが、式の進行の最終確認に席を外した。
そうだ、ルークに訊こうと思っていたことがあったのだった。
そう、アズールのいない場所で。
「あっ、え、えっと……」
「……? !ああ」
「えっ」
「いいや、これはあくまで憶測だから、違ったら言ってほしいのだけど、
今夜、だね?」
「う、わ……さすがにちょっと引くが?やば、やばくない……?」
「Oh la la!冷たいことを言わないでおくれ、我が主!
それで、いったい何が気になっているんだい?」
口ごもる僕を見て、僕が何を訊きたいのか、すべて理解した、ようだ。こういうとき、本当、こいつが敵にいなくてよかったなと思う。
そう今夜。僕はアズールを、たぶん、抱く……のだと思う。
何が、何が、って……それが言えるなら最初から言ってるんだけどな。
僕はまたもや、二の句が継げなくなった。
「っははは……君と私の仲だ。恥じることもないだろう?」
「そんなこといってもさあぁ……身内に、そんな……躊躇するでしょ……」
「ああ……自室の君はシャイなのだね!
では気を付けるべきところだけ、お教えしようか?」
「うっ……お願いシマス……」
ふむ、と、ルークは、少し考え込む仕草をする。
部下に恋人との夜情報を知られてる、って……いや。考えるのはよそう。それを僕の中で認めてしまったら、残り数万人の、名前も顔も知らない会ったことすらない部下にもその情報を握られているということを、思い出してしまう。……思い出しちゃったよ。馬鹿。
いや逆に考えれば。今夜の僕たちの初夜は、顔も知らない数万人が応援しているということになるのか。何が逆なのか知らないが。そんなこと、考えれば考えるほど気まずくなるに決まっているのに、でも自爆テロはヲタの本領だから仕方ない。
何かがまとまったように顔を上げて、ルークが「さて」と切り出した。反射で「はい」と返す。
「そうだね、気を付けるべきことは……、焦らないこと、かな。
本来の用途でないことに臓器をつかうのだから、時間や手間はかかって当然だ。それを忘れずに。そして、相手もまた君を求める、人間だということを、覚えていることだよ。
今夜、あの子を気遣うことができるのは、君しかいないのだからね」
「……ッス……心しておきます……」
「うん。
あまり細かいことを言うつもりはないけれど、注意事項だけ。
避妊具はベッドサイドに入っているよ。男同士でも必要不可欠だから忘れずに。ローションもベッドサイドに入れたので活用してくれ。
あとは、決して怖がらせないことかな」
「は、い……」
決して怖がらせない、か。
双子たちに、顔向けできないようなことは絶対にしない。僕を信じて、唯一の幼馴染、大切な家族を、ゆだねてくれたのだから。
「ルーク氏、ありがと。参考になった」
「ああ、気にしないでくれ。あとは君次第だね。頑張れ」
「すみません、少し遅れました。お時間大丈夫ですか?」
「ああ、天使の君。待っていたよ、では……本番だ」
主役のたつステージへの、カーテンがひかれる。
明るいスポットライトが、前方を照らし出す。
僕とアズールは、ひとつキスを交わして、
舞台へと、一歩足を踏み出した。
*
パーティーが始まって、しばらく経った。
最初こそ厳粛な雰囲気で始まった「結婚式」であったが、時間が回ってアルコールも一通り回れば、だんだんと和気あいあいとした「立食パーティー」へと変わっていった。
会場の雰囲気に合わせて、当然、参加者たちの言動も顕著に変わる。
現時点での参加者たちの中には、二人の幸せを心から祝うもの、また惜しむもの、他の者と談笑するもの、そ知らぬふりで商談を進めるもの、コネクションづくりに励むもの、少々常識をはずれているものも含め十人十色だったが、しかし壇上の二人はとても幸せそうに笑っていたので、会場内で見守る、幹部の私も見て見ぬふりをすることにしている。
シャンパングラスを時折傾けつつ、パーティーのゆったりとした進行の流れにのる。
少しあたりを見回すと、ライト・レフトの双子が目に入る。190cm越えの彼らは遠目で眺めてもわかりやすい。いつものように隣に並んで酒を飲み、談笑する姿は仲睦まじく、ほほえましく見えた。けれど、15歳から彼らの成長をそばで見守っていた身としては、天使の君についても双子たちについても、感慨深いものがあるなと思った。
「ルーク……、ルーク。一年ぶりだな、元気にしていたかい?」
「! 先生。お久しぶりです。どうも、変わりまりませんよ。お元気そうで何よりです」
背後からかかった声に振り返れば、その主は、若き日の私にすべての指導をくださった恩師、ラバトール先生であった。
今となっては私もともに幹部となり、肩を並べられる関係にこそなったが、しかし今でも彼は信頼できる先輩というだけでなく、幼いころに父を亡くした私を、気の置けない父としても、そばにいることを許してくれた、安心できる父だった。
師としてそして父として、当時荒んでいた私に居場所を与えてくれた、感謝してもしきれない恩師なのだ。
「坊ちゃまがもうご結婚となると、お前は……いくつになるんだい?ルーク?」
「今年で……、27、になりますが……、先生、何か含みがおありで?」
「っはっはっはっは……そんなことはないさ。いや……、
お前がここに入ってきて……、もう12年になるのか、とね」
「ええ、そう言われると確かに。拾っていただいたのは、15の時でしたから」
しばし、お互いの間を沈黙が埋め、グラスを数回傾けて、また先生が口を開く。
「セミ‐ボスと、同期の双子が確かいたね。彼らは変わりないかい?」
「ああ。変わりありませんよ。このパーティーにも出席しています。我らがボスのペルセポネの──、家族、ということで」
「家族?」
「ええ。ご存じかと思いますが、血のつながりはないようですよ。素敵でしょう?」
「ああ、それは──、素敵だね」
「はい」
冗談めかして笑うけれど、これは本心だ。彼らは、幼いころの私たちに似ている。
きっと、ファミリーの一員としても、きょうだいとしても、血のつながりがなくたって、彼らは家族だ。
「あの子たちも、もう18歳になりました。いや、アズールく──様、は、もうじきですか。
……感慨深いものがあります」
「そうだね。
ところでルーク、その様子だと少しずつ、よくなってきているかい?」
「それは……、はい、おそらくは」
「癖がついているのかもしれないな。『世間一般』で考える……、」
「……自分では、なんとも。」
先生の、動かない、表情の見えない灰色の瞳から、わずかに目をそらす。
「あの日」の記憶が、不意によみがえる。
13歳の夏、蒸し暑い夜中──、私は、道端に停まったトラックに引き込まれて、落ちぶれた武装グループに攫われた。
あの日から、私の中の『感情』が、じわりじわりと押しつぶされていって、
2年後、このファミリーに入るまでの頃には、きっともうその心は死にかけていたはずだ。
先生に、トレイやボスに、仲間といえる者たちに出会って、だんだんと良くはなっていっている。それは、今もきっと、少しずつ。
俗世を渡るうえで身に着けたすべてが、自身の内側の更生の、枷になっていたとしても。
感情を取り戻していくとともに、幼かった私は、目の前にしたもの全てを吸収していった。
そうして構成された「常識」は、自己判断の道しるべになった。しかしそうして導き出されたその「道しるべ」が、私にとって、必ずしも正しかったとは限らないのだ。
「なんにせよ、ゆっくりで構わないのだよ。先は長いよ。ルークはまだ若い。
でも、いつか、お前に感情が戻ったら、わたしが老いて、とうに引退して、ボスのもとを去って……、お前もいい大人に、なっていたとしてもね、そうしたら、あのときのように、わたしのそばで、泣いておくれ。いつまでも、待っているよ。もしそのとき、私が墓の中でも」
「……私が人並みに戻れたら、そのときは、先生に一緒に笑っていただきたいですが」
「っはっは……そうだね。ともに、酒でも飲んで、笑いあおう」
それが何時になっても、先生は私とともにいてくださる。
消えることのない居場所があるというその事実だけで、見えないけれどそこにたしかに揺らぎ続ける安心感がある。それを「感情」と呼ぶのなら、きっとこの安心感は偽りだけれど。
仮初でも、偽りでも、事実はなくならない。それだけで十分だと思い込むことができたら。それも美しい、愛のかたちと呼ぶことにしよう。
+
「あっ、ウミネコくん~。どぉ、楽しんでる?」
「……、ああ、左翼の君。君も、お酒の味にも慣れたかな?」
「え~、うん、まあ別に。酒そんなに好きじゃないし?」
「ああ!そうなのかい?知らなかったよ。意外、だ、ね……」
「……?」
ルークは、意外、と口に出してから、少し言いよどんだ。
フロイドはそんな彼をわずかに怪訝に見つめ、また口を開いた。
「……ウミネコくん、その酒好き~?」
「え、あぁ、そうだね……嫌いではない、……かな」
「ふぅん?」
煮え切らないな、とまたフロイドはいぶかしむ。
常の彼なら、どんなものを指しても「好きだよ!」と即答しそうなものを。
常の、と無意識に思ってしまうほどには、彼は何かが、いつもと違うのだ。
フロイドは、大抵の場合自分の勘を信じて行動した。今も例外ではなく、フロイドはこの違和感を疑おうとは思わなかった。
ルークは、先ほどのラバトールとの会話のことが、未だに気にかかっていた。忘れかけていたものを、彼の言葉で思い出してしまったからだ。ルークがそれを望んでいなかったとしても。
そして困惑してもいた。いつもならば、どんなに驚くことがあっても言葉に詰まることはない己の口が、いち部下の前で、こうも回らなくなっていることに。ただ、一人の部下の前だというのに。それはきっと、ルークが自分でも無意識のうちに、フロイドに心を許しているから、であったのだが、このとき本人やフロイドが知るはずもなかった。
ということで、フロイドの感は当たっていたのだが、答え合わせをするすべなど持っていなかった。ということで、なあなあのまま会話が何となく終わり、そして何となく人の波にまぎれてやがて見えなくなったルークを、フロイドはすっきりしない気持ちで見送っていた。
*
ここからどうすっかな~
これで健全パートおわったわけですけど……どうします?えち続き行きます?
くっ……がんばろうはつえち 移動~w
あこれ今思い出したけど、アーカイブ残してないな……公開……まあ支部でするしいっか!
全編は支部まで待ってwじゃあ移動~ほかの視聴者さんいるけどみてる~~~?移動しますぜ!!きたきゃきて~
恋愛成就……はよつきあってるくふろ……島根いってこよ 出雲~またいきたい……なんとなく一回しか行ったことないんだは いつか出雲でデートしようね、シスター やった♡いまは状況的に無理だけどいつかね……♡そう!ちゃんとつきあいますように……それはつまり原稿が終わりますようになのだよね
神様になんてことをw
タイムマシン、めっちゃいい曲だな…………萌えてしまう ミクさん!せいかい~
ボカロすきなので……(照)
おお!kちゃん…同志?おともだちなかま再び?
おお…全盛期wそのときくらいの曲を一番聞いてるから…w話せることあったらうれしい~。まあ私は…ここ数年で入り浸った新参者なんですがw
新しい曲のほうが聴かないな…w初期の曲すき!
そこでも姉とは嗜好があわず…wもう草はえてる
お姉ちゃんもしかしてちがう場所で育ったん?ってくらいwわろw
そんなもんだねw こっちはもうヲタってだけでほぼ同じみたいなもんだけどねw
じぶんで何かいてるかわかんな~い^^ 伝わってるならよし!!
PCに充電ぶすっ 画面があかる~い!
完璧なはずのルークがこんな……しどろもどろになるのはきっと……フロちゃんに無意識に気を許してるから……なんだよ……だと思うことにする……完璧なキャラだって人間だから…………
じゃあ
ラバ登場
↓
「ルークは昔からそうだね」
「ッ……」
ラバ核心を突く
ルークこまったさん
こまったさんなっつ こまったさんのほっとけーき
↓
「あっ、ウミネコくん~。楽しんでる~?
……?どしたの……?」
「っ、い、いや。なんでもないよ、mon chou」
こんなことを知られるわけには、と、私が彼をほめたり、愛らしいと思うことは許されない、っていうきもち
許されるよ~~~~~~~!!!!!!!!(ヲタの悲鳴)
↓
+
「(ウミネコくん……?)」
のながれ