【完全ノープランの茨あん配信です、ぴです】
褒めて殺して、目で殺す、なんて言葉があると思うんですけれど。
おずおずと切り出した彼女が、ちらりと自分を見上げる。
「とっても失礼でしたら申し訳ないです、ただ、」
失礼だと思うのなら言わなければいいんじゃないか?と思ってしまうのは自分だけではない気がする。ただ、彼女の瞳には譲らないぞ、という意志が見え隠れするせいかそんな野暮なことを言える気もしない。
――七種さん、目が合いすぎている気がしませんか?
「最近、七種さんの握手会でちょっと出た意見があったので考えてみたんです」
「それはそれはどうもご丁寧にありがとうございます!何のことかは分かりませんが、プロデューサー殿が自分に何かをお伝えしてくれるというのは光栄でありますな!して、どのような意見でしょう?」
「これ、エゴサの結果なんですけれど」
彼女が自身のスマートフォンの画面を見せつけてくる。
午後6時、外はくらい。暖房が完備されているこのESでは、室内は暑いくらいだけれど、それにしたって彼女の距離は近すぎるんじゃないだろうか。
何を考えているのかわからない、仕事熱心なのか、ただの馬鹿なのか。よくわからない、けれど足元をすくわれそうな恐怖もほんの少しだけ感じている事実。だからこそ、彼女に近くのはなんとなく憚られるのだ。
「あなた、エゴサなんてしているんですか?アイドル、全員分?」
「さすがに全員はしていないですけれど、目立った放送のあととかはたまに。」
あ、でもこの結果がいいとか悪いとか喜んだり落ち込んだりしているわけではないですよ、と彼女が慌てたように取り繕う。
エゴサーチ。その結果が信用に足るものか、と言われたら確かに悩むが、そこから視聴者や読者の「感想」や「反響」を知ることはできる。数値的な信頼ではなく、いわゆる質的な信頼か。
「とにかく、その結果の一部をピックアップしてみたんですけれど、ほら、このあたりです」
【茨くんってめっちゃ目合わせてくれる!】
【アイドルの握手会ってあんまり行ったことなかったんだけど、なんかすごい目力ある人いた!さえぐさいばらくん??】
【なんか結構照れたり、上向かれちゃったり(たぶん名前を思い出そうとしてくれてる??笑)することがあるんだけど、ちゃんと目を見て話してくれる茨やばくない!?!?】
どれもこれも肯定的な意見だ。照れているというのはジュンあたりだろうか。アイドルなのだからいいかげん慣れて欲しい。殿下の前で見せるようなちょっと腑抜けた表情だって、見せればいいのに。
「……どれも、肯定的な意見に思われますが?」
「うーーん、そうなんだけど」
そう、そうなんだけどね、と今日の彼女は何とも歯切れが悪い。
そうして冒頭に戻るわけである。
「目が合いすぎている……といいますと?」
「人間って、白目と黒目がすごくはっきりしている動物らしいんです。だから、すごく人の視線に敏感、といいますか。こっちを見ている、とかあっちを見ている、というのがすごく分かってしまうんですって」
隣ではパソコンまで彼女が取り出す。今日はこのあと、コズプロの会議室を使用する予定はない。自分も事前に伝えていた通り、このあとは多少の事務作業が残っているものの、木曜日という平日の中日であることも相まって、特に収録などの用事はない。とはいえ、ここまで拘束をされるとは思っていなかった。
「ほら、例えば小さい子犬とかの目は黒目がちでしょう?こうすると、どの方向を見ているかがわからないんですって。」
素早く取り出したパソコンを立ち上げ、パタパタとキーボードを打ったかと思えばくるりと検索結果を見せつけてくる。そこにはちゃっかりお気に入りタブなども表示されたままで、この女の危機管理能力というか情報管理は大丈夫なのか?と思わず心配になってしまうほどだ。
けれど、その中身は対して面白くない。ニュース、番組表、職場の掲示板、メールサイト、告知ツイッターなどの各種SNS。
「……ちゃんと見てます?」
「ええ、もちろん!とっても愛らしい画像に驚き、声が出ていなかったのですよ!」
嘘だ。本当は画像なんてちっとも見ていなかった。
じとっとした視線が彼女から向けられる。
なるほど、これが視線に敏感ということか。彼女が検索画面でも、部屋の掛け時計でもなく、自分の左頬のあたりを見つめているのがわかる、気がする。
とにかく、と彼女は仕切り直すように声をかける。
「七種さんは、アイドルとしてこれまでにも様々な活動をしていらっしゃいますし、実際にライブ会場などではアイドルと目が合う、というのがとても嬉しいと思うんです。ただ、もう少し強弱を付けてみるのがいいんじゃないかと思うんです。」
今度はドサリ、と2冊の分厚い本をおく。こんな本をかばんの中に忍ばせていたとは。通りで今日は大荷物だったわけだ。
「人間って極度に視線を浴び続けると、ちょっとした恐怖とかを感じることがあるんですって。会話をする時には、例えば、会話の初めで相手の目を見つめて、会話の途中は普通自分の話に集中をしてしまうから、目線が合わなくなる。そうして、話がまとまりかけたところで相手の反応を伺うためにまた視線を合わせるんですって」
ほらここ、と彼女がわざわざ付箋を貼っていた箇所を開いて見せてくる。
「もちろん、長時間目が合うというのはある意味それだけ親しいことを意味するので、愛情の印のようにも取られることがあるらしいんですが、やっぱり見つめすぎると緊張とかを生んでしまうようなんです。」
「…なるほど、あなたの言わんとすることはわかりました。」
ぎぎ、と椅子の背もたれが声をあげる。
納得できるか、と言われればノーだ。アイドルと出会える機会というのはそんなに多くはない。そして、仮にただ会話をしているだけの相手、よく知りもしない相手から長い間見つめられれば恐怖を感じるだけかもしれないが、ファンにとってアイドルというのは会いたくてたまらなかった存在。一眼見たくて、声をかわしたい。そうだとするなら、たくさんの人が訪れるライブ会場などはともかく、握手会であれば手を握り、その目を見つめるというのはファンが喜ぶ行為に思われる。
「ですが、やはりファンがアイドルに求めるものを考えると、握手会など言葉を交わせる距離で視線をわざと逸らす、というのは自分の中ではあまり賛成はできませんね。」
対して面白い話でもなかった。
わざわざ時間を割くほどでもなかったかもしれない。
頭の中は次の業務に切り替わる。このあとはメールの確認をして、練習ルームの確保、それから再来月の予定調整か。
「ああ、えっと、ちょっとまってください!」
ソファから腰を浮かせそうになった自分に慌てたように彼女が声をかけてくる。
「他に何か?すみません、自分、このあとまだ業務がありまして。」
「握手会のことは、確かに私の考えが至らなかったかもしれません。ただ、今日お伝えしたかったのは、MVのことが一番なんです!」
MV。ミュージックビデオ。今やインターネットの時代である。シングルやアルバムの発売の時はもちろん、ちょっとしたテレビの一幕が切り取られて予告としてアップロードされることもある。プロモーションビデオなどと合わせて、ファンにアイドルたちの楽曲だけではなく、その知られざる一面、等身大の姿なども提供する視覚情報だ。
「この握手会のツイートを見てからちょっとEdenとAdamのMVを見返していたんです。そうしたら、七種さんと視聴者の目があうことがすごく多くて、もっと目が合うまでを意識してもいいと感じたんです。」
ほらこのあたりです、と彼女が事前にまとめておいたのか資料が提示される。
「例えば、目線が合わないところからカメラに視線を投げたり、俯瞰的なカメラの動きの時にうつむきがちな視線から視線を合わせるように動くだけで、《目があった》という擬似的な感覚なども得られると思うんです。」
「他にも、意外と視聴者と視線が合わない、と言いますか、カメラ目線でない時の横顔が好き、という声やメンバー内で目があっているシーンがいい、というコメントがあったりするので……、その、意図的な目線の使い方にしてもいいのかな、と、」
思いまして。
彼女の声はどんどんとしりすぼみになっていく。
「なるほど」
擬似的に視線が合う瞬間を作り出す。それは面白いかもしれない。
どうしてもカメラに視線を投げてしまうことが多いし、MV編集の中でも何かとそういう部分を切り取りがちかもしれない。これまで「カメラに視線を向ける」「カメラに自分やメンバーが写るように動く」というのはあったけれど、視線の動きや目の合わせ方にまで気を配ったことはない。
面白くない、時間をかける必要はない。そう思っていたのを――…
「とても面白い意見ですね。ぜひ参考にさせてください。」
にっこりと笑って見せる。
あとなんかいい感じに足したり引いたりして短編になります!!!!とりあえずざっとこんな感じで3000字くらいなので、今日はこのあたり、大体1時間くらいで配信を終えたいと思います〜!
正直1時間執筆だけに集中して書くというのは何だか緊張してしまうのですが、いかがでしょうか?あんまり面白くなかったかもしれないのですが、このお話は後日加筆修正を加えてアップロードしようと思います。
初めてのテキストライブチャレンジ、お付き合いくださった方々本当にありがとうございました〜!
では!配信を停止します〜!お付き合いくださりありがとうございました✨
(ぴは変換でさえぐさが出ないのでいつもななくさと打っております....)
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aiai
みえてます、すごーい!
09:51
わ〜!ありがとうございます💕
37:23
きりふじ
こんばんは〜!見学させて頂いています🥳すごい!
38:05
きりふじさん、こんばんは!現代すごいですよね!
67:06
きりふじ
お疲れ様でした🥰すごく参考になりました〜!文字がどんどん生み出されていくの、見てて楽しかったです…😃💕
68:26
きりふじさんありがとうございます😭 過程配信も面白いですね!お付き合いくださりありがとうございました✨
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向き
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茨あん(新作/短編)21:30〜
初公開日: 2020年12月28日
最終更新日: 2020年12月28日
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コメント
テキストライブなるものを発見してしまい、面白そうなのでやってみます!!あんスタ男女カプ(茨あん)をぽちぽちします。
今日だけで完結しないかもしれないのですが、ご興味ありましたらぜひいらっしゃってください✨
コメント機能もあるみたいで、書いている最中にリアルタイムのやりとりができるってすごいですよね!!