余命半年と告げられたその日から、彼女は自分の身体で朝顔を育てることにしたらしかった。
僕は彼女の命じるままに、病院の近くにあったホームセンターで種を買ってきて、彼女のへそに埋め込んだ。
幼い頃からずっとベッドに貼り付けで小学校にも通えなかった彼女はもちろん、夏休みも自由研究も知らず、朝顔を育てるのも初めてだったらしい。
最初は双葉から始まって、やがて朝顔は下腹部に向けて根を張り、つるを彼女の左手に巻きつけるまでになった。
立ち上がることもままならない彼女の代わりに、その苗に水をやるのが僕の仕事だった。
お見舞いのたびに。彼女のパジャマを少しだけはだけさせて、根本にジョウロで水をかけて、陽の光が十分当たるようにカーテンを開け放つ。
彼女は眩しそうにしながらも、やがては日なたの暖かさにうたた寝してしまった。
隣のパイプ椅子に腰掛けて思い出すことには、そういえば肺の中に睡蓮が咲いてしまう婚約者の話があったな、と。
たしか昔読んだ小説で、結局あの話の最後には、婚約者は死んでしまうのだっけ、と。
ふと目をやった先の朝顔は、ちょうど蕾ができかけといった成長具合で、あと数日後の朝には花を開きそうな雰囲気だった。
対象的に彼女は、いつのまにか以前よりもずっとやせ細って、さすがに朝顔よりは長生きしそうだけど、冬はとても越せそうになかった。
彼女の瞼の上に揺れる朝顔の影を眺めるうちに、ふと。
この子は近いうちに避けようもなく死んでしまうのだな、と改めて気付かされてしまって。
僕はとても怖くなった。