ルラ現パロ
同居しているルラ
都心の大学を卒業した後、ルークは企業に就職することはせずにフリーのカメラマンになった。所属していた研究室の教授には随分と引き留められたが、ルークにはどうも、日がな一日研究ばかりする暮らしは向いていないと自分でも悟っていたので丁重に断らせて貰った。在学時代に出会った、近くの別の大学へと通うひとつ年下の人と運命的に恋に落ち(とルークは思っている)、無事に続いた関係のままに、ラギーの卒業後には彼と一緒に暮らすようになった。在学中からお互いの部屋に行くことは多かったが、ラギーがキャリーケースひとつに収まる小さな荷物を持って、ぎこちなくこの部屋の扉を叩いた時の喜びは今でも忘れられない。それから数年が経った今も、ふたりは一緒に暮らしている。
ラギーの方は近くの小さな会社に就職し、それなりに上手くやっているようだった。完全週休二日制のラギーの職場とは違い、ルークの仕事に定まった休みはない。だからラギーが休みの日にルークが仕事、なんていうのも当然ある訳で。
おもいつかん
ラギーが休みの日に仕事に行く必要がある時には、勿論彼に説明をする。いらぬ心配をかけたくはないし、食事の準備もあるだろうから。ルークは料理をするのも嫌いではないのだけれど、それ以上にラギーは食事作りが好きらしく、一緒に暮らし始めた時には分担制だったのに、いつの間にか殆どまかせっきりになっている。ルークが料理をするのはラギーが忙しい時と、無理をさせてしまった日の朝くらいのものだった。
話が逸れた。ともかく、今週末もルークは仕事が入ってしまって、それはある山の決まった地点からの写真を撮ることだった。この何日にしか見られない景色があるらしく、高齢のその男性からの依頼は、自分はもう登れないからせめて写真で見たいというものだった。しかしこれにラギーはこれを予想外に嫌がった。
「どうしても行くんスか」と仏頂面をする恋人に、ルークは困ってしまって眉を下げる。
「仕事だからね。それに、山の自然を見るのは私の好むところでもあるし」
「そのまま呑まれて帰ってこれなくなっても知らないッスからね」
これだけ聞くとラギーが一方的に嫌味を言っているようだが、彼が嫌がるのも無理はないのだ。ルークが大学を卒業してすぐの仕事で、とある山から見える景色を撮影するというのがあった。準備は勿論していったのだが、気象予報も裏切る悪天候の中小さな土砂崩れに巻き込まれて、二日ほど山を彷徨う羽目になった。五体満足で帰ってきはしたものの、体の痛みよりも病室の扉を開けた時のラギーの表情の方がよっぽど辛くて、二度とこんな顔はさせまいと思った程だ。
だが、今回仕事で行くのはあの時よりもずっと低い山だし、ファミリー向けの登山コースも用意されているような安全な場所だ。だから前のようなことになる可能性はほぼあるまい。そう思って依頼は受けてしまっているし、かといってラギーに心配させるのも可哀想だ。どうするかな、と少しの間考えて、「ああ」とルークは手を打った。
「ラギー、良かったらなんだけれど」
「……ん?」
皿を片付けていたラギーは依然唇を尖らせたままだ。少し子供っぽいその表情が可愛くて笑みを零しながら、ルークは彼に提案した。
「キミは明日は休みだろう?だから、一緒に山登りでもしないかい?」
「え?」
それは中々名案のように思えた。一緒にいればラギーもたとえ携帯が圏外で連絡が取れなくても気を揉むことはないし、ルークも可愛らしい恋人と一緒に秋の山を堪能できる。それに万が一前のようなことが起きたとしても、ラギーだけは命に代えても守る心積もりはあった。
「仕事なのに、いいんスか?」
「ウィ!勿論。私が写真を撮っている間は少し待たせてしまうかもしれないけれど」
「そん時は山菜でも取っとくッス……」
そう言ったラギーは、「じゃあ、行く」と続けた。その返事が少し嬉しそうな声音に聞こえたものだから、ルークまで嬉しくなってしまう。
「お皿を洗うのは私がするよ。お風呂に入っておいで」
「うん」
頷いたラギーが皿をシンクの傍の台に置いて、ぱたぱた寝室の方へ向かう。着替えを取りに行くのだろう。
「あ、ルークさん」
「なんだい?」
扉の向こうに殆ど体を隠してから、思い出したようにラギーがぴょこりと頭だけリビングの方に覗かせて言う。
「今日、する……?」
何でもない風を装っているけれど、何ぶん目がいいものだから、ラギーの頬が微かに赤いのは見て取れる。
「キミが許してくれるなら」
「あ、そ」
今度こそ完全に寝室の中に入っていったラギーは、すぐに出てきてルークの傍を横切って脱衣所に向かう。その間、絶対にルークと目を合わせようとしないのが面白いやら、可愛いやら。ぱたんと扉がしっかり閉まってから、額を手で押さえる。
「……可愛いな」
何年経ってもこの度に同じ台詞を呟くのだから、自分も大概年下の恋人に首ったけだった。
「ね、ルークさん。明日は弁当作って行きましょうね」
「それはいい考えだね!何にしようか。おにぎり?サンドイッチ?」
「期限近いパンが余ってるし、サンドイッチかな。ジャムはいちごとマーマレードがあるッスよ。あとツナもあったし、卵も」
「山の中で食べると格別だろうね。私も手伝うよ」
布団の中で、ひそひそと会話をするこの時間が格別だと思う。何を作るのか考えているのか少し下を向いたラギーがぱっと顔をあげた。
「水筒にスープ作ってくのもいいッスよね。最近ちょっと寒くなったし、あったかいやつ」
「それは楽しみだ!キミの作るスープはとても美味しいから」
そう言えば、ラギーがこちらをじとりと見る。
「んなこと言って、ルークさんオレが何作っても美味しいっていうじゃないッスか。ありがたみないんスよねえ」
「オーララ、だって、本当に全部美味しいんだよ」
「ふーーん」
不機嫌そうな顔をしてみせたラギーは、けれど怒っている訳ではないようで。えいと唐突にルークの肩に頭を押し付けてきた。
「ッシシ、明日、楽しみッスねえ」
「本当に私も、そう思うよ」
ラギーとならばどこに行ったって、家にずっといたって楽しいに決まっているのだけれど。彼の肩が少し布団から出ているのに気がついて、布団を引き上げる。それにくすくすと笑ったラギーが「アンタって何も変わんないよな」と言った。
「?どういうことだい?」
「初めて寝た日も、おんなじことしてた」
肩までかけるやつ、気障だなって思ってたんスよ。
「変わっていない、なんてことはないんだけれどね」
「へぇ、どの辺がッスか?」
知りたいなァ、と言うラギーの髪を軽く梳く。
「キミのことを、あの日よりずっと好きになったよ」
そう答えれば、ラギーがまた噴き出した。
「やっぱり、気障じゃん~」
けらけらと笑うラギーにやや納得がいかない思いをしながらも、彼が笑うのならばそれでいいかと思った。ラギーへの愛を伝えることが気障だと言うのなら、一生言われ続けるかもしれない。
「キミは、何か変わったのかい?」
ふと思いついて聞いてみれば、「ん~」と彼が考え込む。その声が少しばかり間延びしていて、きっと大分眠たいのだろうと予想が出来た。そろそろこのおしゃべりを切り上げた方がいいだろう。明日も早くから起きるだろうし、きっと随分歩くから。
ラギーがもぞもぞと仰向けになって、こちらに首を傾ける。そしてふにゃりと笑った。
「アンタといっしょかな、なんちゃって」
自分の答えと一緒。それはつまり、と一瞬遅れて思考が追いついて。珍しい恋人の素直な言葉に、嬉しさがこみあげてくるのを感じる。その体を抱き寄せたら「寝にくいッスよ」と面白がる声。
「好きだよ、ラギー」
「知ってるって」
一時間やったら終わります(思いつかなくなってきた)
やってないけど3000文字いったので終わりますね つかれた!おしまい!ありがとうございました♡
💜💛
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ななし@92494d
❤️
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向き
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