体が重い。空気は悪くないのに下半身にずっしりとした感触がある。昨日は早く寝たはずだったが……。
 目が覚める。見慣れた天井だった。空調が立てるかすかな音が聞こえている。体を起こそうとすると、だるいと感じていた原因がそこにあった。
 「……すぅ……ん……むにゃ……」
 「……なんだ、お前か」
 ケオベだった。私の体に覆いかぶさるようにしてぐっすりと眠っている。服を着替えているところを見ると既に一度起きてからここに来たようだ。
 「すぅ……すぅ……」
 「気持ちよさそうに寝ているな……」
 ケオベのゆっくりとした呼吸に合わせて彼女の耳がぴくぴくと動いている。髪を撫でてやると気持ちよさそうに頭をすりすりと擦りつけてきた。しばらくそのままケオベの感触を堪能していた私だったが、さてどうやって起こしたものかと考え出す。
 「おーい、ケオベ、起きてくれるか。私は仕事があるんだ」
 「んぅ……?」
 ほっぺたをむにむにする。ぐにぐにと動く頬は柔らかく餅のような感触だった。私に体を投げ出すようにしてすやすやと寝ていたケオベはうっすらと目を開ける。
 「どくたー……?」
 「おう。おはよう、ケオベ」
 「………はっ!」
 がばっ、とケオベが起き上がる。まだ覚醒しきっていない頭の思考がその反動で揺れた彼女の胸元に行くが、でかいくらいの感想しか浮かばなかった。
 「おはよう、ドクター! おいらだよ!」
 「確かにおいらだな。どうしたんだ?」
 「今日はてーきけんしんの日だから!」
 「あー……、起こそうとしてそのまま寝たのか」
 「うん!」
 「分かった分かった、ちょっと待ってろ」
 むふー、と自慢げな彼女をベッドに置いておきながらクローゼットを開ける。
 今日は騒がしい日になりそうだ。
 「おいらね、ドクターがすっごいおっきくなって暴れてる夢を見たんだ! ヴァルカンお姉ちゃんがすっごく怒ってて、食事を疎かにするからだ! とか言ってたよ!」
 「私が巨大化? 想像したくもないな……」
 食事については反論する余地が残されていないのは確かだ、とケオベと手を繋ぎながら医療棟への道のりを進む。ちなみに前はリードが必要だった。ケオベが何にでも興味を示すせいであちこちにいってしまうせいだ。私がケオベを引き留められるはずもなく幾度かロドス艦内を引きずられることにもなったが。今は手を繋いでいれば離れないでくれるので本当にありがたい。
 「今日の定期健診は……、あれ、ケルシーが入ってるな」
 「どうしたの?」
 「その、なんだ、ケオベが嫌いなあれもあるかもしれない」
 「………」
 私を見上げるケオベの目が見開く。まずったかもしれない。無意識のうちにケオベが私の手を握る力を強める。逃げ出そうとしないだけでも御の字だろう。
 「我慢したら一緒にご飯にしような」
 「………うん!」
 ほっと胸を撫でおろす。私は上へと向かうエレベーターのボタンを押す。
 元気を取り戻したケオベが手を繋いだ腕をぶんぶんと振り回しながら歩いている。肩が外れそうだ。医療棟に辿り着いた私はゲートを通過し、ケルシーと対面する。
 「元気そうだな」
 「うん!」
 「もう一か月も経ったのか」
 「彼女よりも君の方を検査した方が良さそうだな?」
 「遠慮しとくよ」
 ケオベをケルシーの対面に座らせ、私はその後ろに立った。回転椅子でぐるぐると回りだしそうだったので両肩に手を置いて阻止する。
 手渡された資料をケオベが持ち、それを肩越しに見ているとケルシーが話し出した。
 「進行速度を抑えるだけでも手一杯だ。丸ごと交換する必要もあるだろう」
 「恐らく、アーミヤを除けばこの中で一番ステージが進行しているのはこの子だからな……。この状態で作戦に参加出来る体力があるのは奇跡と言うべきだろうな」
 「ああ、そういえば彼女の足取りが掴めたぞ」
 本当か、と身を乗り出した私に地図の画面を映し出したケルシーは、二点をプロットしてそこに線を引いた。
 「直線距離と見積もっても2000kmは下らない。感染した状態でこの距離を踏破したと想定すると、少なくとも三か月以上歩き続けたことになる」
 「超人だな」
 「このポテンシャルを引き出すことが私達の治療のゴールだ。現状、どの要素が彼女の力の源泉なのか分かっていない。……始めるぞ」
 腕時計を確認したケルシーが言った。私はケオベに頑張れよという意味を込めて頭を撫でると、彼女は私に向かって笑いかけたあとケルシーの後ろについていって検査室の方へ向かっていった。
 「……毎回、この世の終わりみたいな顔をしながら中に入っていくのが面白いんだよな」
 さて、どうしたものかと端末を開いた私は、そういえば今日の朝に一件の通知が入っていたことを思い出した。
 そろそろこっちに来てもおかしくないはずだが。
 「ドクター? 今日が定期健診の日で合ってる……よね?」
 「合ってるぞ。時間通りだし、問題ない」
 「ありがとう。……奥に、誰かいる?」
 「ケオベとケルシーだ。あの子も今日が検診の日だからね」
 「じゃあ、ドクターは付き添い?」
 「そんなもんだ。どうせここ二日か三日はロドスは戦闘業務を中断して設備の更新や整備とかに大忙しだ、私がやることはあまりない」
 リードだ。彼女は最近入ってきたオペレーターで、とある事情があって一人でいることが多い。
 彼女の定期検診は医療部の人員ではなく私が行うことになっていた。出来る限り要望は受け入れられるべきというアーミヤの考えに、珍しくケルシーが賛同したためこうしてリードがここにいる。
 「ドクター、いつも迷惑をかけてしまってすまない……」
 「人間、誰だって大なり小なり他人に迷惑をかけて生きてるもんだろ。少しぐらいお互い様ってもんだ」
 「でも、私は……」
 「ドラコだからか? 」
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Iky
1000文字書ければ上々。
46:04
Iky
今日はここまで。
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向き
ケーちゃん!(仮題)執筆配信
初公開日: 2020年09月27日
最終更新日: 2020年11月03日
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