物心ついた時から、私は所謂幽霊や妖と言った類のモノが見えた。彼らの言葉を理解出来た。
父も母も私のように言葉までは理解出来ることはなかったが、幸いにも二人にも霊感があったので、小さい頃からこっち側かあっち側かの分別が付けられるように育てられた。
普通の人と同じように過ごして十数年、高校生になった私は入学早々に後悔する。
高校の校舎はカタカナのコの字となっていて中庭には一本の桜の木が植えているのだが、問題はその桜の木。
「……燃えてる」
その桜の木は私の目には紅蓮の炎を纏っているように見えるのだ。
「何が燃えてるアルカ?」
朝礼で体育館へと向かう途中、一緒に歩いていた神楽ちゃんに私の独り言を聞かれてしまった。
「あぁ、なんでもない」
私は、幽霊や妖の類が見えたり言語が理解出来るということを家族以外の人間に話していない。色々と面倒事になるということは両親から痛いほどに聞かされていたためだ。見えないフリ、聞こえないフリをしていれば向こうも霊感の無い人間と勘違いしてくれる。だから私はずっと隠し通すのだと心に決めている。
放課後、中庭の桜の木の元へと来た。
神楽ちゃんの話によると、この桜の木は今まで咲いたことの無い桜なのだとか。高校の七不思議の一つだと言っていた。この高校にはあと六つも不思議があるのか。
桜の木に近づいても熱さなどは感じない。しかし私の耳に入ってくるのはキャンプファイヤーなどで聞く木が燃えていくあの乾いた音。
炎から出た小さなチリを目で追いかけていたら、視界の端に不思議な色が入ってきた。
銀髪の天然パーマをした、気だるそうな男子生徒。
緩めたネクタイの色が赤色だったので、一つ上の二年生だと分かった。
「見えんの?」
主語は無い。しかしその一言で、私は彼が言っている意味を理解する。
心臓がバクバクしてきた。血が逆流してるような感覚。初めて会った。家族以外で、“私と同じ世界を見ている人を”。