イコさんの食事中の所作は綺麗だ。
古めかしい喫茶店のボックス席で向かい合ったその人を見てしみじみと思う。目の前にあるのは、様々な具材の入ったナポリタンだ。麺も太めで、食べ応えがありそうだと感じる。それにフォークを差し込み、するすると皿の端の方で、器用に具材も一緒に巻き込んで、そっと持ち上げて、口に含む。噛み締め、嚥下して、ついでに唇に付着したソースも舐め取った。その後に、紙ナプキンで改めて口元を拭く。その動作は、定められた仕組み通りに動いて、時を知らせる柱時計のように、規則的で上品だった。それは、任務やランク戦の時に見せる剣筋のようにも思えて、目が離せない。視線は彼の方にやりながらも、手にしていた少し冷めたコーヒーを飲み干した。
「隠岐は何か食いもん頼まんの?」
「今、空腹やないんで」
 その食事姿を見ているだけで、こちらの胃は満たされてしまう。イコさんが摂取したカロリーが、こちらの胃袋に転送されているのではないかなどという、SFじみた考えが浮かんだのを、ありえないと、脳内で否定することで鎮火した。
眼前の相手がそんなことを考えているとは露知らず、皿の傍らに置かれていた粉チーズの入ったココットからスプーンで中身を取り出し、さらさらと散らしていく。振りかけたチーズが軟着陸した側から、じわりと溶けだすのがスローモーションを見ているかのようだ。
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初公開日: 2020年05月13日
最終更新日: 2021年12月18日
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いこおきです。短時間でやります