ヨーウラがデートする話。現パロのようで現パロでない、ちょっとメタっぽいお話にしようと思います。初めてなので、インテイク。こんなもんかーって掴みだけ得たらやめますね。
では。
「ナワーブ、ナワーブ大丈夫かい?」
ぐらぐらと揺れる視界に飛び込んできたのは紺色の布の塊、もとい1人の男だった。ぐったりとへたり込んだカモフラージュカラーを混ぜ込んだ、なんとも言えない緑のフードを被ったもう1人の男は、据わった目で声をかけた男を一瞥すると、力なく笑った。
「悪い。心配かけたな。」
「仕方がないよ。急にあれだけの人数に囲まれて、たくさん光を浴びたのだもの、私はともかく、彼女は君と同じくらい参ってしまっている。」
くるくると喉を鳴らす肩に乗った猛禽の腹に指を入れあやすと、心地よさそうに擦り寄った。
「……イライ、俺はまだ状況が読み込めていないのだが。」
「奇遇だね、私もだ。」
イライと呼ばれた紺色の男は、同調しながらもパートナーを撫でている手の反対の手にちゃっかり紙袋を下げている。緑色の笑顔の女が書かれた紙袋からいそいそと取り出したのは、薄切りのライムとミントが浸かった氷水だった。
「そこのコーヒーを売っている店でもらってきたよ。リフレッシャーと言うらしい。」
「もらってきた?大丈夫かそれ。」
「ああその点は大丈夫!先ほど私が一口頂いたからね。毒の心配は無用だよナワーブ。」
笑顔で差し出されたそれを訝しげに受け取りながら、時に向こうみずな行動に出るイライを諫めようとしたが、彼の瞳には不審なものを口にして腹を下す未来は見えなかったのだろう。告げようとした小言はため息に変え、すでに通され口をつけた後なのだと言う緑のストローを咥えると、手渡したイライの顔で唯一見える口もとが弧を描いた。
「あ、それライムを潰しながら飲むと美味しいって店員の女性が教えてくれたよ。」
「アンタの神経の太さを今度ダイアー先生に診てもらうべきだと思うんだが、今はその変わらなさがありがたい。」
冷や汗をかいた体にライムとミントがよく滲みる。こうなればままよと一気に半分まで呷ったナワーブは、横で美味そうに同じ飲み物を啜っているイライに向け、なあと声をかける。
「此処、ビックサイトって言ったか。」
「…ああ、そう教わった。」
「俺たち、なんで此処にいるんだろうな。」
そう、2人がいる場所は例の荘園ではない。場所は極東、日本は東京のさらに東の果て、国際展示場、通称東京ビックサイトであった。
ナワーブとイライ、役職名で呼べば傭兵と占い師。招待状によって集められた訳ありの住人たちが暮らすエウリデュケ荘園では、荘園領主の采配で半強制的にゲームに参加させられる。3対1、もしくは2対8の鬼ごっこと言って仕舞えば可愛いものだが、実際に追ってくる鬼の手には鮫を象った鈍器や呪詛塗れの長傘だけでなく、小刀付きの扇や爆弾、果ては大斧やサーベルなど、確実に逃げる相手を殺しにかかっているような鬼(彼らはハンターと呼ばれていた)もいた。
世が世ならスプラッタ、パニックホラー映画の設定のような舞台で、傭兵のナワーブと占い師のイライは、彼らの職能と判断能力を生かし、抵抗する術がないハンターの魔の手から逃げ切ることが多いサバイバーだった。
「はああ〜、今週のベスト演繹はイライさんとナワーブさんが同点で2人なの。」
食堂に貼り出された掲示を見て、頬に雀斑を散らした麦わら帽子の女が感嘆詞とともに読み上げる。彼女は決して独語が多いわけではなく、傍に盲目の白杖をついた少女が壁に手をついて立っていたためであった。
「ベスト演繹って、時々ご褒美がもらえるんですよね。」
「そう!エミリーのドレスとか、素敵だったの!」
「ベスト演繹が2人って初めてじゃないかしら。最近2人とも頑張っていたから、何か彼らの足しになるものが得られるといいのだけどね。」
看護服の女が彼女たちの細い肩を叩く。もう遅いから、何をもらったか明日直接2人に聞きましょう。そう言って食堂の燭台の火を消した後は、盲目の彼女の杖が床を叩く音がよく響いた。
「『今週のベスト演繹、おめでとうございます。同点受賞は初めてのことですので、心ばかりではございますが、贈り物を用意いたしました。2人とも明日のゲームは1日お休みです。朝起きたら、貴方が此処にお越しになった時に着ていたお召し物を着て、部屋の扉を開けて下さい。喜んでいただけるといいのですが。』だって。」
「相変わらず何言ってるか分からないな。急に虎になったり狼になったりするのだけは勘弁して欲しいが。」
当たり前のようにイライのベッドに寝転がるナワーブが、イライの腰を抱きながら軽口を叩く。2人に対して贈られるベスト演繹のはずが、領主から届いた手紙の宛先は連名で、かつイライの部屋の扉にのみ刺さっていた。ナワーブとイライはこうして夜と共に過ごす間柄ではあったのだが、周りに吹聴しているわけでもなく、「どうせ今日も」
「待って、まだ続きがある。『明日は、2時間だけ私の仕事を手伝っていただきたく。』…褒美と言いながら仕事を振るのか。」
「『その後は自由に過ごしていただいて構いません。困ったことがございましたら、このカードを相手に見せて下さい。』だとさ。カードってこれだよな?」
封蝋された手紙の中から、一枚の手に収まる大きさの板が出てくる。全面が黒色のそれは、イライもナワーブも馴染みのないものだったが、言葉が多いようで肝心なことを説明しない荘園領主が言う【何か困ったこと】の正体がわからず、とりあえずしっかりと持っていようと懐に仕舞い込んだ。
カット
Latest / 63:38
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
ヨーウラがデートする話を書きます。
初公開日: 2020年04月27日
最終更新日: 2020年04月28日
ブックマーク
スキ!
コメント
ヨーウラがデートする話を書きます。
作業を此処で行って、完成したものをTwitterもしくはネップリにまわします。