今日のテーマ 橙 暗殺者
「この件は、秘書である君に任せよう」
何故。
何故、長年慕ってきた彼を私が。
「長きに渡って見てきたからこそだ。彼の行動や考えは君が一番理解しているだろう」
確かに、私は彼の秘書として側に身を置いておりました。
彼の行動や私生活については十分に把握しております。
ですが、この役目を自分に任せるのは、余りにも酷ではないでしょうか。
「勘違いをしないで欲しい。彼奴は確かに君の上司であり、付き従うべき人間だった。だがそれは過去の話。彼奴が我々の敵であることは、聡明な君なら説明せずとも分かるだろう」
ええ、分かっておりますとも。
ですが。
「いいか。この作戦は失敗してはならないのだ。
任せたぞ、チーノ君」
何故こんなことに。
命を受けてからも頭に浮かぶのはそればかり。
もし、彼の下に居続ければこんな事にはならなかったのだろう。
しかし、その代わりに自分の生まれ育った地が、飢餓で苦しむことになる。
ここで彼を殺さなければどうなる?
きっと、この役目を任命した組織の人間に消されるだけだろう。
それならば。
暗殺という目的がばれ、失敗という形になったのなら?
きっと、俺は殺されるのだろう。
裏切り者として、彼に処刑をされるのだろう。
国を守ったという大義名分の為に、親しき人間を殺すのか。
親しき人間を守る為に、国と自分を殺すのか。
答えは簡単。
誰に従うも俺の自由。
誰を信じるも俺の自由。
ね、自分以外に信じられるものなんて無いんですよ。
よく分かったでしょう?
終