にゃあ、にゃあん。
耳をくすぐる甘ったるい鳴き声がする。
にゃああん、みぅ。
乞うように鳴いて、呼び、繰り返す。しばしの沈黙のあと、今度は腕にやわらかな感覚が触れた。日溜まりの匂いのする毛皮は、曇った窓ガラスに差す日の光を受けて、艶やかに光る。
ぐりぐりと頭を擦り付けてくる猫の様子をちらりと横目に見ると、カスピエルは腕を持ち上げた。ふいに頭を擦り付けていた腕を離されて、猫は不満げに唸る。
「あとでな」
猫を一別して、カスピエルが素っ気なく言えば、猫はじっとカスピエルの横顔を見つめてから、興味を失ったようにぷいと視線をそらす。すたすたと優雅な足取りで離れた場所に移動し、ひたりと腰を落ち着けて毛繕いを始める姿は、何となくばつの悪いように見えた。
カスピエルの視線は猫ではなく、もう己の腕の中にしか向けられていなかった。
「……猫?」
腕の中で、ちいさな声。カスピエルはそっと穏やかな声で返す。
「ソロモンは何も気にせんでええよ」
カスピエルはやさしさを込めて、ソロモンの髪を指ですいた。硬い質感が皮膚に触れて、抱いた頭が僅かに傾く。
カスピエルの腕の中、顔を伏せたままのソロモンは、髪をすく柔和な感覚に大人しく身を任せていたが、やがて頭をぽすんとカスピエルの胸に預ける。