配信環境が悪めかもです。 
 「うっ…ううっ…」
僕は、涙に喘ぐ環くんの背中を、たださすることしか出来なかった。
 きっかけは、今日のロケのことだった。環くんは、今日のロケに遅刻してしまったのだ。しかもそれは、不可抗力の遅刻だった。環くんの学校は、定期テストの期間だった。テストを落としてしまうと留年の可能性もある為、環くんは学校でギリギリまでテストを受けてからロケに参加することになっていた。そしてそれは、現場の全員に伝わっている、という話だった。しかし、ここからが災難だった。なんと、環くんが乗る予定の電車が、事故の影響で遅延していたのだ。環くんはすぐに僕と万理さんに連絡をくれた。だから僕達も迅速に対応出来たのだが…
「何だって!?四葉くんが遅れてくる!?」
今日のロケの担当者に、それが伝わってなかったのだ。
 万理さんが何とか説得しているうちに、環くんは到着した。必死に周りのスタッフさんに事情を説明して謝る環くん。駅から猛ダッシュで来たのだろう、汗だくだった。殆どのスタッフさんはお疲れ様、や、大変だったね、と環くんをねぎらう言葉をかけてくれていた。そして、事件は起こってしまった。
「四葉くん!!どうして先に言わないんだ!!」
「え…」
「こういうのは先に言っておくのが礼儀だろう!?どうして連絡の一個も入れなかった!!」
ディレクターが、環くんに怒鳴った。険悪な空気。環くんもどうしていいか分からなくなっていた。そりゃそうだ。環くんは、伝わっていることを前提に来たのだから。
「…すみませんでした」
「謝って済む問題じゃない!!どれだけ時間が延びたと思っているんだ!!」
他のスタッフさんが止めに入るが、ディレクターは聞きもしない。延々と説教を続ける彼に、僕の我慢も限界に達した。
「…どうして、環くんを責めるんですか!!」
「…逢坂くん」
「学生にとって一番大事なのは勉強だ!!しかも、今日は大切なテストの日だった、本当なら仕事を断って当然です!でも環くんはそれをおしてまでロケに来た!後から追試になることも厭わず!!」
「そーちゃ…」
「しかも、僕達に入っていたのは、今日環くんがテストを受けてから来ることは現場に伝わっているという連絡でした!逆に、どうしてそちらに連絡が行ってないんですか!?」
「壮五くん!大丈夫、後は僕が言っておくから」
つい激昂してしまったが、僕達はプロだ。何とか、ロケをいつも通り行うことが出来た。もしかしたら、多少の違和感はあったかもしれないが。
 しかし、延びた時間は変わらず、急遽ホテルに泊まる羽目になった。そして、冒頭に戻るのである。
「俺、ちゃんと、連絡して…もう迷惑、かけない、って…」
「うん」
「そーちゃんにも…バンちゃんにも、迷惑、かけて…」
「迷惑じゃない。仕方のないことだった」
「でも…めっちゃ、怒られた…もう絶対、怒られないって…決めてたのに…」
環くんが後悔に暮れる姿に、居たたまれなくなった僕。それは、突発的なことで。
「…環くん、指きりをしよう」
「え?」
「これからも、環くんは理不尽なことで責められるかもしれない。その時は、僕に守らせてくれ。その約束だ」
「そーちゃん…」
「相方として、ずっと君を見ていたい。だから」
僕から小指を出すと、環くんも絡めてくれた。そのまま、指きりげんまんをした。でもごめんね、僕は今、流れるように嘘をついた。
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初公開日: 2020年04月18日
最終更新日: 2020年04月18日
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