『時子様、お誕生日おめでとうございます!』
私の誕生日。それは例年通り訪れる退屈な日だ。
わざわざ広いパーティー会場に会ったこともない人を集め、そしてひたすらに私を祝うだけの。
どうせ、財前の名や私の威光に釣られているだけで心の底から言ってはいないというのに。
だから毎年この日はつまらなくて仕方がなかった。私のお気に入りの南フランスの別荘で開こうが、ニューヨークの別荘で開こうがそれは同じこと。ぬるま湯のような時間に身を任せ、ただ過ぎ去るのを待つだけ。それが私の誕生日――四月十八日。幼い頃から繰り返される、私が嫌いな、ただ待たされるだけの一日。これから先の人生でも続いていくのだろうと諦めが付き始めていたところだった。
「……バースデーライブ、ですって?」
今日も私の足元で無様にも首を垂れながら、一番豚(プロデューサー)は報告をする。
この時期は私の誕生日があるから、予定は入れないようにしていたのだが、急に不遜な提案をするものだから少し驚いてしまった。
「はい。ファンクラブでのファンミーティングとしてです。貴女様のお誕生日をファンの方々ともお祝いするというのを今年からさせていただきたいのです」
どこか純粋で愚鈍な目を向けて、豚はこちらを見つめた。私の靴に触れないように傅いていることについては褒めてあげましょうか。それについて、だけは。
「ふぅん。……偉くなったものねぇ、豚。せっかくの私の誕生日を仕事で潰そうとするなんて」
「そ、それは……。勝手な判断をしてしまい申し訳ありま」
「謝れと言ってるんじゃないわ。呆れているのよ。貴方、ニューヨークでのクリスマスライブの時から何も成長していないのね。……聞き分けのない豚は嫌いよ」
「……申し訳ございません……」
さっきまで自信ありげに提案していた姿は何処へやら。震え上がって目をそらしているのだから、愛想が尽きてしまいそうだわ。……出来損ないの豚。私が知る中で一番愚図で間抜けな。手のかかる一番豚(プロデューサー)。
「……ハァ。貴方は何度言っても謝るばかりの愚図だものね。いい加減諦めもつくわ」
「時子様……」
「……話してみなさい、ほら早く」
「……お優しい心遣いありがとうございます」
「私を褒める言葉よりもさっさと述べなさい」
……本当、手のかかる豚。そして結局は折れてしまう私もどうにかしたいものね。
豚(プロデューサー)が改めて報告した内容。一度聞いたから理解はしていたけど、私の誕生日当日にファンクラブ限定のバースデーライブを開催するということだった。私を崇拝する豚どもが私の一挙一動に涙を流して鳴き声を響かせるのは気分がいい。その点については評価してあげることにする。ただ、なぜ私の誕生日なのか。ライブなら貴方の手腕と私の力でいつでも盛大に開くことができるでしょう?
「それは、貴女様が誕生なさった素晴らしい日を改めてお祝い出来ればと思ったからです」
目をどうにか私に合わせながら豚(プロデューサー)は言った。
……なんてありきたりな答え。毎年私の誕生日を祝う、使用人も客も親類も皆同じことを述べているというのに。
だけど、貴方は真摯な眼差しで。小憎らしいほどにも。
……考えが浅はかで、愚かで、馬鹿らしくて、不出来な存在の貴方。だからこそ私は。
「……クックックッ…アーッハッハッハハハハ!!……相変わらず反吐が出るほど面白いことを言うのね、貴方。……馬鹿みたいだわ」
「……!申し訳ございま……」
「それで? 準備はいつから始めるつもりかしら? まさか直近になってからとは言わないわよね」
「……それでは、引き受けてくださるんですか」
「ええ。たまには貴方の提案に乗ってみるのも一興よ。ただし、退屈なものにしたら許さないということを覚えておいて」
「はい!必ず」
……フン。最初の頃に比べたらいい返事をするようになったものね。
◆◆◆◆
「これが、貴方が用意した今日のステージ、ね……。中々様になっているじゃない、褒めてあげるわ。でも今の褒め言葉で調子には乗らないことね。私の気分ひとつでどうにでも出来るのだから。……分かっておいて? それで、今日はどんな風に魅せられてしまうのか貴方も覚悟しておくことね。この時子様の輝きに目が潰れてしまわないように、精々頑張ってみなさい。プロデューサー」