カイオエ
 美しい歌を聞いた。すっかり疲労して途方に暮れていて沈んでいた心が、一瞬にして晴れやかになる。今にも踊りたくなるような気分だ。
 可愛らしい鳥たちがすぐ近くに留まっている。普通なら奥の方に身を潜めている数多の動物たちも、森の手前にある広場まで来ている。そして彼らは一様に行儀よく美しい歌に聞き入っていた。
 音が弾み、ステップを踏みたくなるほど楽しい気分になったかと思えば、伸びやかなビブラートで空気が揺れると泣きたくなってくる。様々な感情を引き出してくるその歌はまるで魔法のようだった。
「今日はもう終わり」
 動物たちに語り掛けているような優しい声色が広場に響く。歌っていた人らしい男性がベンチから立ち上がると、それを合図にするかのように、鳥は飛び立ち、動物たちは森の奥へ帰っていく。彼の柔らかそうな銀髪が舞い散る桜の花びらと共に風にそよぐ。その光景がとても綺麗で、いけないものを見てしまった気持ちにもなって紅頬した。
「ん? 誰かいるの?」
 銀髪の彼が振り返る。俺は思わず木陰に身を隠した。
「気のせいか」
 そう言って立ち去る後ろ姿をこっそりと眺める。隣町の中学校の制服を着ているのを見て、気持ちが高揚する。歳が近いのならまた会えるかもしれない。そう考えながら、帰路についた。
 あの後俺は母の反対を押し切り、芸能校は進学することに決めた。彼があの美しい歌を生かすならここらでそういった芸術的活動への支援が活発な芸能校に進学するだろうから、行けば彼に会えるかもしれない。そんな邪な心もあったものの、ちゃんとした理由は持っていた。
 俺は進もうとしていた進学校への偏差値にどれだけ勉強しても届かず、ただでさえ気が滅入っていた中で、担任の先生に志望校を変えるよう提案されていたのだ。どれだけ頑張っても君の学力では行けないから、と。先生的には留年しないようにと善意での提案だったのだろうけれど、俺からすれば侮辱されたような気分だった。悔しくて仕方なかった。
 そんな折、あの歌を聞いた。心の奥底にまで澄み渡るようなあの歌で、俺の荒んでいた心は救われた。あの瞬間は、俺にとって人生の転機であったのだと思う。彼の歌に心惹かれると同時に、彼が俺を救ったように俺も人を救いたいと思った。人生で初めて持った夢を叶えたい。その強い意志を感じ取ったらしい母が呆れた顔をして「好きにしなさい」と言ってくれたのだ。
 無事芸能校に受かったときには嬉しくて飛び跳ねた。
ピックアップがピックアップしてくれないし、Rカインが来ない
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【お試し】mhyk学パロ【カイオエ】
初公開日: 2020年04月05日
最終更新日: 2020年04月05日
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