はらり、はらりと落ちる薄紅の花弁を目で追いながら、ハリーはぽかんと口を開けて見上げた。
山間の隠れ住むような里の中、古い日本家屋をぐるりと取り囲むように様々な木々が植えられ、見渡せば庭と山との境目がどこであるのか分らぬほどに。
ハリーが見上げる先、樹齢百年を超える桜の大木がその姿を薄紅に染め上げるほどの花を咲かせ、少し暖かさを含んだ風が枝先を揺らし、はらはらと薄紅の花弁がまるで雪のように降る様をハリーは無心で見つめていた。
「すごいねぇ」
その小さな後ろ姿を見つめながらセブルスはくつくつとした笑い声を零した。
冬の気配がようやく過ぎ去り、まだ肌寒いながらも春の足音が漸く聞こえてきたころ、スネイプ家に手紙が届いた。
イギリスから遠く離れた極東の、古くから、それこそ千年以上昔の時代から連綿と呪術を受け継ぎ、そして今は魔法族としての力も持つに至った民族。
日本の魔法省である魔法処に勤める人物から手紙が届いたのは実に十数年ぶりの事だった。
魔法薬の研究家としてのスネイプの名前はその道の研究者の間ではわりと知られている。
表舞台から姿を消し、ひっそりと引きこもりともいわれるような研究をしていたとしても、彼の名前で出される論文は研究者の間では評価が高く、日本の研究者とも僅かばかり面識がある。
そのうちの一人が隠れ里の中に家を構えたと、もし気が向いたら来ないかとの誘いにセブルスは足元で遊んでいたハリーに目を向け、たまにはいいかもしれないと返事を書くべく筆を執ったのだった。
「美しいだろう。」
お盆に乗せられた菓子に、見慣れぬ取っ手のないカップには緑色の液体が注がれていた。
「それはグリーンティーかね。」
縁側に座りハリーを見守っていたスネイプは、湯気が立つカップを手に持ち口をつけると、渋みの中にまろやかな甘さを感じ、ほぅと息を吐いた。
「君たちは紅茶を飲むだろうが、同じ茶葉なのにこれほど味が変わるのはやはりところ変わればという物なのだろうね。」
初老に差し掛かろうかという男性がスネイプの隣に腰を下ろした。
さやさやと山から吹き抜けてきた風が新緑の葉を揺らし、又散り始めた花弁がざぁぁぁと降り注ぐ。
薄い雲のかかる青空に雲雀が高く飛び、春の里山に穏やかな日差しが差し込んだ。
イギリスとは違う山間の里には遠く聞こえる鳥の声と、穏やかな風が葉を揺らす音のみ。
縁側という外気に面したこの家の端に座り、暖かなお茶を手にハリーをみつめれば、空色のスプリングコートを着た小さな背中がくるりと振り返った。
「ハリー」
呼びかければハリーは嬉しそうににこりと笑みを浮かべ、セブルスへと真っすぐに駆けてきた。
「可愛い子だ」
隣に座る男性が思わずと言ったように笑みを浮かべた。
「しぇぶ!」
セブルスの足に抱き着いた小さな体を抱き上げれば
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はりーとしぇぶ
初公開日: 2020年04月04日
最終更新日: 2020年04月07日
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