珍しくデモンマングーが機嫌よく笑っているので、俺は朝からこいつは嫌な予感がするぞと身を引き締めた。なぜなら、この男は幼少の頃から常に眉間にシワを寄せ、怒っているのかそうでないのかなかなか区別がつかない表情しかしていなかったからだ。
「おはよう、マングー」
「ん。おはよ」
おはよ、って、何それ。かわいい。朝が苦手なデモンマングーは大体おはようではなく「あ"?」だったし、時には言葉もなく蹴られたりすることも多いのに、朝からかわいいなんて反則だろ。
「……なんか、いい夢でも見たのか……?」
「んー、まあな」
「……よ、良かったな」
もしかして変なものでも食べたのか?それとも夢の中でお母さんに「好きな子には優しくしなさいよ」とでも言われたのか?(デモンマングーはお母さんに滅法弱い)首を傾げる俺に構わず、彼は大きく欠伸をしてダイニングテーブルに着いた。
「朝ごはん、何食べる?」
「……何でもいいけど……はぁ……」
「……なんか様子おかしくね?なに?本当はすっげぇ怒ってんのか?」
耐え切れず訊くと、幼馴染みはきょとんとしてから、フッと鼻で笑った。
「お前、俺様に怒られるようなことしたの?」
「してねぇ、けど……なんか、機嫌良すぎじゃね?」
「俺様が機嫌良かったらダメなのかよ」
「だ、ダメじゃない!かわいい、けど」
あ、かわいいは余計だった、口が滑った。でも、ニコニコしてるデモンマングーは本当にかわいい。
「かわいい?俺様が?いつもだろ」
「そういうとこ、いつもどおりだけど、眉間にシワ、寄ってないし……」
怒られませんように、と心の中で願いつつ言うと、ピンポン、とチャイムが鳴らされた。
「俺様が出るわ」
「う、うん」
珍しい。いつもなら、とっとと出ろクソコウモリ、とケツを蹴られるところなのに。
なんだ?ここは俺の知ってる世界線じゃないのか?あれは本物のデモンマングーなのか?
「届いた届いた」
デモンマングーは笑顔全開で小さな荷物を抱えて戻ってきた。ダンボールにはMIDIZONの見慣れたロゴ。
そうか、欲しかったものが手に入るから上機嫌だったのか。こんなにニコニコするなんて、一体何を……と思ったところで、俺は開けられたその箱を覗き込んだことを後悔した。
「いいだろ、これ。お前と使おうと思って半月前にオーダーしたんだよなァ」
とっておきの笑顔と弾んだ声。本当にかわいい。でも、手に持っているものは死ぬほどかわいくない。出来れば夢だと言ってほしい。
「……ナニソレ……」
何それ、と訊かなくてもわかるが、万が一にも俺の勘違いという可能性があるかもしれない……なんて、まあそんなことないんですけど。
「見りゃわかんだろ?俺様のサイズで作ったディルドだよ」
にっ、と薄い唇に笑みを刷いて、かわいい幼馴染み兼恋人はあまりにもグロテスクな形のそれを目の前に突き出してきた。
やっぱりね。そうだよね。
「明日オフだろ?これ使ってたっぷりかわいがってやるよ♡」
「…………やだ!!!!!マングーのバカ!!!」
まあ嫌って言ったところでこの暴君がやめてくれるはずもないのだが、主張しておかないとあとで何を言われるかわからないので、一応。
でもさ、お前それどんな顔してオーダーしたの?
ちんちんにタトゥー入れたときもそうだったけど、俺はお前の倫理観が心配だよ。
終わり
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でも原稿サボれないからいいかもしれないね
初公開日: 2020年04月04日
最終更新日: 2020年04月04日