ぼーっと縁側に座って桜を眺めている。何もすることもなくただ時間だけが過ぎていくのも悪くない。まだ始まったばかりの春は天気も安定しないけれど、それがむしろこの心地よさを引き立てているような気もする。
本丸中枢から離れたこの場所は人の往来も決して多くない。いたところで本日非番の自分を邪魔するような同僚もいない。せいぜいがちょっと声を掛けるだけ掛けてすぐどこかへ行ってしまう。
静かなこの場所はきっと昼寝をするのに最適なんだろうな、でも風邪を引いてしまいそうだな、と重くなり始めた瞼が思わせた。尾張からの馴染みがこの日差しに負けて、惰眠を貪ってばかりいるのも頷けるほどの心地よさ。船を漕ぐ頭はしばしば体勢を崩させる。
「ちょっと隣いいかな?」
「堀川さん! もちろんどうぞ!」
振り返った先には見知った顔が両手で盆を支えながら立っている。「ありがとう。僕もお茶とお菓子を持ってきたんだ」と告げた笑顔に心地よい眠気はどこかへ吹き飛んだ。
堀川はしゃがみこんでそっと盆を板の上に置き、盆に対して物吉と反対側に腰掛けた。縁側に脚をぶらぶらとさせながら同じように桜を見上げ、口を開く。
「綺麗だね、こんなところがあるだなんて知らなかったよ」
「ですよね、ボクも南泉さんに聞くまでは知りませんでした。あの人、人気のない日当たりの良いところをよく知ってるんですよ」
「……ああなるほど、猫の呪いだったっけ? 確かにここは人が来なさそうだよね。というか、南泉さんと仲良いんだ?」
少し意外そうにこちらを見る。「意外ですか?」と問えば「大分タイプが違うしね」と正直な答えが返ってきた。確かに自分の容姿は優等生というか人の子の言う王子然としていると思うが、南泉はヤンキーとかヤクザの鉄砲玉とか、主が割と物騒な感じで表現していた気がする。確かに自分と並んだときの印象は結構対極的だろうな、と想像するだけで笑ってしまった。
「ええ。家康公が亡くなって以来、ずっと同じ場所……でもないし厳密にはもう少し前からなんですけど、長い間尾張で一緒でしたから」
「家康公が亡くなって以来って……え、長くない? 僕が打たれてそんなに経ってないくらいなんだけど」
「そうなんです、ボクたち結構長い付き合いなんですよー。鯰尾くんだったら豊臣でも付き合いがあったらしいので、もっと長いんじゃないですかね」
ちょっと続け方が浮かばないので一回切ります。