夜の船番の時に空腹を覚えるのは、一味にとってよくある話だ。夜食はちゃんとあるのに、ついつい話し込んでいたりすると、飲み物や食べ物が足りなくなってしまう。そして、そのもうちょっと食べ足りないし飲み足りないな、なんて腹を鳴らした絶妙なタイミングで料理人が起きてくるのもよくある話だ。彼らは別に起こそうなんて気はないのに、料理人も起きようとする気なんてないのに、ついつい目が覚めてしまうのだという。見聞色の覇気ならぬ、見聞食の覇気なんじゃねぇか?なんて一度そんな瞬間を目にした狙撃手がからから笑いながら呻いたこともあるほどに。
ともかく、今日もそんな見聞食の覇気に反応してか起きてきた料理人。ため息混じりに、腹が減ったと瞳に訴えかけてくる狙撃手と船長やな何が食べたいかを問うと、さくさくと会話が進むもの、ときたもんだ。先程まできっと夜食で食べていただろうエビカツサンドも十分サクサクしていただろうが。いやいやそれは美味しくいただきましたがもう少し食べ物をください。そんな会話をかわして、とりあえず調理開始だ。
ジャガイモの皮を剥いていく。丁寧に。愛情を欠かしたら終わりだ。こんないつもやっている作業ですらも。そして、芋を細切りしたら、チーズと共に混ぜていく。
「た、大変だ!サンジ!」
「もう腹が減ったぞ!」
ハナとゴムが喚き始めた。料理人はくつくつと笑う。
「そりゃあお気の毒」
ここから、ちょっとした意地悪な時間が始まる。とぷとぷと注がれた油。温めたら、ゆっくりとそれを油の海に落としていく。しゅわしゅわ、ぱちぱち。小気味いい音。チーズがとろけて芋に絡まる音。芋の表面がかりかりさくさくと揚がっていく音。深夜にただよう、暴力的な油の匂い。ごくん、ごくん。よだれを垂らすのをこらえてひたすらに飲み込む音。まだか、という言葉が完全によだれに飲まれているのが料理人にとっては面白かった。
「ほら、できたぞ」 
ほどなくして、彼らに待望の時間が訪れる。からりと揚がった薄い煎餅のように固まったお芋とチーズ。料理人が過去に作った、ジャガイモのパイユだ。既にかりかりサクサク熱々で美味しいだろうに、ぱらぱらと塩をふれば、ほどよいしょっぱさが加わるだろう。
「ほら、これでサクサク会話するんだな」
おれは、もう一寝入り。そう呻くも、がしりと背中を掴まれた。なんだよ、と呻くと、彼らは揚げたてのそれをかじりながら満面の笑みを浮かべていた。
「ありがとう」
「サンジっ」
見聞食を発動してわざわざ起きてきてくれた彼には声色を揃えたお礼だけでは足りないので
「これうんめぇぞ!」
「あぁ、しょっぱさが絶妙でいくらでもいけちまう!うんめぇ!」
賛辞と共に、彼が大好きな言葉をたっぷり聞かせるのだ。そうすれば、
「ったりめえだ、おやすみ」
「おう!」
「おやすみ!」
彼は大変に満足して、賑やかな会話を背に、緩んだ顔で眠りに向かうのだった。
<おしまい>
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ななし@350f64
配信ありがとうございます!見ていてとても楽しいです!
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向き
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○○を作って食べるだけのお話
初公開日: 2020年04月03日
最終更新日: 2020年04月03日
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※夢 展示用SS書く
夢小説を書いているため苦手な方はお戻りください。znzr 🐈
糖度ゥ
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6月28日ジェイリドオンリー『ブレンドティーは恋の好機』の新刊になりたい話の執筆RTAです。 これよ…
きさ