ひとりでは歩けないくらい体が衰弱していたし、それに……それにもし、弟を失ったうえに、神さまとの交感もできなくなっていたら? それを思うと、とても神さまの前に行こうとは思えなかった。
でも同時に、弟を失った今、縋れるものはもう神さましかいなかった。
神さまのところに行くのか、行かないのか、それを考えるのにも、ぼくは疲れていた。だから、1号さまが「お祈りに行かないか」と誘ってくれたとき、ぼくはもうほとんど自分の考えを手放すような気持ちでそれを受け入れたんだ。
弟がいた頃は通い慣れていたはずの「聖域」までの順路が、もう何年も昔に通った道のように思える。それでもぼくは、1号さまが押す一人乗りのストレッチャーに乗って、少しずつ神さまのところへと近づいていた。ずっと自分の足で歩けないことを不便に思っていたけれど、今は自分の意志とは関係なしに先に進んでくれるのがありがたかった。
やがて、「聖域」へ通じる大きなエレベーターに乗って、ぼくと1号さまは地下深くに降りていった。
ぼくは祈るような縋るような気持ちで、エレベーターの上で目を閉じて耳を澄ませていた。
……でも、聞こえない。あの歌声のような声は、聞こえない。耳が塞がれたみたいに聞こえない。
1号さまは、なにも言わなかった。
やがて大きな音と振動とともにエレベーターは止まった。
エレベーターの目の前の、高い天井まで届きそうな大きな扉がゆっくりと開いていく。
その向こうに見えたのは、記憶の中の光景と変わらない、長く深い暗闇と淡い光に照らされた通路。
1号さまにストレッチャーを押してもらいながら、ぼくは廊下を進んでいった。
それでも、声はまだ聞こえない。
やがて、暗くて細長い通路の向こうに「それ」は見えてきた。
床や天井を這う血管みたいなコードやケーブルに繋がれた実在する神さま――創造維持神さま。
――これ(・・)が、本当に?