虫の知らせ、とでも言うのだろうか。無機質なアラームに意識を引きずり上げられてから、日ノ浦の胸には例えようのない焦りが居座っていた。
活動的な友人が少ない日ノ浦にとって、大学の夏休みにやることと言えば、嫌々ながらシフトを増やすくらいだ。
ぼんやりとした足取りで広い歩道を歩く。バイトの制服とコンビニのパンが押し込められたリュックが背中に張り付いて鬱陶しい。
交差点の赤信号で立ち止まる。日陰は無く、自分の影が足元で小さく蹲っている。あきらめのため息をついて目の前を行き交う車を眺めていると、隣に三人の少女が並んで止まった。高校生だろうか。皆カフェのプラカップを片手に、楽しげな声が弾んでいる。
うるさい訳では無いが、なんとなく居心地が悪くなって、ズボンのポケットに手を突っ込んでワイヤレスイヤホンのケースを探す。
「ねぇ、昨日のトシデンTV見た?これ、この先の商店街なんだよ」
ふと、日ノ浦の耳がその言葉を拾い上げた。取り出しかけていたワイヤレスイヤホンを持つ手が止まる。
この先の商店街。
「えー?言うてオカルトでしょ?作り話だって」
「でもここ、実際に二人くらい行方不明になってるんだよ」