今年も年明けから見たい映画が山ほどあって大変な上に、上映時間をチェックしてたらノーチェックだった映画が見つかる始末。どうすればいいんだよこれ。
というわけで今日見てきたのはこれ!
本作は桜坂洋のラノベを原作とするアニメ作品。2014年には小畑健によるコミカライズ、 ダグ・リーマン監督・トム・クルーズ主演での実写映画化も行われています。
さて本作、発表当時はこれまでのイラスト・映像媒体とはかけ離れた方向性のビジュアルでかなり物議を醸しました。
キャラデザ担当は「トリツカレ男」の村上泉なんですが、これまでの精緻さと重厚感を全面に押し出したビジュアルとは相反する、原色を多用したビビッドなカラーリング、これまでのキャラクター像とはかけ離れた極端にデフォルメされたキャラデザに対しては、SNS上でも否定的な声が多かった感じです。また制作会社STUDIO 4℃が本作の発表と同時期くらいに公開していた「Chao!」がかなりの爆死となっていたのも否定的なイメージを加速させていたようす。
わたくし人形使いもこのビジュアルはあまりにもこの作品に似つかわしくないという印象を受けました。原作、コミカライズ、実写映画はいずれもミリタリーに寄せたビジュアルでそれが作品の沈痛な雰囲気に合っていたので、第一報を見たときはアレですね、初めてターンエーガンダムを見たときと同じ種類のショックがありましたね。
オタクはこういうメディアミックスの際のビジュアルの変化に非常にうるさいもの。特に今回はキャラデザが違うというレベルではなくテイストそのものが大きく異なる、そしておそらく多くの人がこの作品のアニメ化と聞いてイメージするはずもなかろうビジュアルが上がってきたのでかなり面食らったと思います。
なので発表時点ではあんまり見る気はなかったんですよね。しかし、youtubeで予告動画を見てみたらあっさり秘剣・手の平返しが発動。たしかにビジュアルはこれまでの媒体とは大きく異なるもの。しかしこれが動いてるのを見てみると、あれ……? 決して悪くない……むしろこの荒いデザインだからこそ戦闘シーンが映える! そしてBGMがもたらす緊迫感、これは決して「ALL YOU NEED IS KILL」という作品の芯を外したものではないのでは!?
というわけで「私は故あれば寝返るのさ!」と心の中のシーマ様が告げるのに従いあっさり手のひらを返して見に行くことにしたのでした。
突如として地球に飛来した謎の樹状物体「ダロル」。地球環境を破壊しながら侵攻していく敵対存在に、人類はかろうじて抗っていました。そしてある日、極東の島国・日本でダロルの除去作業を行っていたボランティアスタッフ・リタの眼前でダロルが異常なエネルギーを発振。それに巻き込まれて死亡したと思われたリタは、その日の朝に戻っていました。そこからリタは、ループする1日に閉じ込められてしまいます。ループの原因は? ダロルの正体は? そしてリタは、このループから抜け出すことができるのか?
……というあらすじで分かる通り、本作は実写映画版以上に原作を改変・翻案したものとなっています。主人公をリタにしただけでなく、フォーカスするキャラクターをリタに絞り、ギタイ周りの設定も改変し、さらには原作主人公であるケイジの立場も大きく変えてとにかくリタというキャラクターを深堀りするという方向性になっています。いわば本作は「ALL YOU NEED IS KILL」リタルートと言える構成になっているわけです。
原作ではリタはすでに戦士として完成されたキャラクターでしたが、本作におけるリタは18歳の自閉的な少女。本作では、彼女が突然ループに巻き込まれたことで、自分の苦悩や過去と直面する姿を全面に押し出した構成になっています。そのため、本作ではフェレウ伍長やヨナバルといったサブキャラは舞台の後方に押しやられ、カメラはひたすらリタとケイジを追うかたちになっているんですね。
これによって、本作のリタは原作のケイジよりもさらに孤独で閉鎖的な少女であることが強調されています。ケイジ以外のキャラとほとんどかかわらないんですよねリタは。ケイジと出会うまでは独力で事態を解決しようとし、そして行き詰まる。それはつまり逆説的に、本作ではリタとケイジの二者のつながりをクローズアップすることに繋がります。
特に、この世界で自分だけがループに巻き込まれ世界から隔絶していることに絶望したリタが。自分と同じくループを経験しているケイジと出会って思わず泣いてしまうシーン、あそこは単に原作での両者の関係を逆転させているだけではなく、リタが今まで押し留めていた感情が一気に溢れ出す非常に良いシーンだったと思います。また、前述の大幅にイメージと異なるキャラデザがアクションシーン以外でもっとも活きたのはここだったかも。このデザインだからこそリタを「どうしようもなく泣き崩れる18歳の少女」として描けたと思います。
尺の問題としても、86分という決して長いとは言えない尺の中にストーリーを収めるには、リタとケイジの周辺以外の情報はばっさり切るという選択は正解だったと思いますね。
また、大幅に設定と見た目が変えられた敵であるギタイ周りも異様さが際立っててよかった。本作ではギタイは「ダロル」という宇宙から飛来した樹状生命体およびそこから生まれる怪物となっているんですが、これらのデザインが一貫して植物、それも南国の極彩色の花を思わせるデザインになっているのが、原色を多用した鮮やかな本作全体のカラーリングによく合っており、統一感があってよかったと思います。
今回、「止め絵」と「動画」ってデザインが同じでもまあ別物になるもんだなあという経験ができました。最初にこのデザインを見たときは、違和感を差し引いても全然面白そうには見えなかったんですが、動いた途端にえらくかっこよく見えたんですよね。そしてスクリーンで作品を見てみると評価が一転したという。アニメーションはやはり動いてるところを見なくちゃなあと思った吉宗であった。