いっとき止まってしまってましたが、実は紅楼夢新刊レビューはまだ終わってません、というか半分以上残ってたりします。
11月もいつの間にか半分過ぎてしまっているのでどんどんやっていきましょう。
・寄る辺も波の荒磯を(折葉坂三番地)
実在の歴史上の人物と東方キャラのつながりを描く掌編シリーズ、今回は元弘の乱にて隠岐に流された後醍醐天皇と船幽霊であるムラサの出会いを描きます。どうでもいいけど後醍醐天皇って英語表記すると「Emperor G0-Daigo」なのかっこいいな。
後醍醐天皇についてはもちろん知ってはいますが、それは歴史上の人物としての情報だけでいわゆる「キャラ付け」については全然イメージがありませんでした。本作ではこの後醍醐天皇の流刑に処されながらも活力を失わない闊達な姿が、奉じていた白蓮が魔界に封じられたことでゆくべき道を見失っているムラサと対照的。
本作はわずか12ページという掌編なので、メインキャラである後醍醐天皇まわりの歴史的エピソードを並べただけでページが埋まってしまいそうなもの。しかし本作では、そうした歴史的エピソードを踏まえつつも、本土から遠く離れた地に流されながらも活力を失わない後醍醐天皇の姿が魅力的に描かれています。
また個人的になるほど、と思ったのが、本土から離れて連絡も取れない孤島である隠岐という土地、そしてその状況が、心身を摩耗させて反撃に出る気力を失わせているからこそ、作中の言葉を借りれば「明治維新を経てもなお隠岐と本土との往来は困難を極め」るこの土地が流刑の地として機能していたという一節。
これはまさに作中で、主人である白蓮を失い、魔界へ助けに行くこともできずにゆくべき道を見失ったムラサが置かれた状況なんですよね。そしてそんなムラサから見れば、自分と同じ状況に陥っているのに活力を失わず行動し続けている後醍醐天皇は、いかに眩しく見えたことか。
「うしおととら」においては人間の持つ力を「陽の力」としていますが、本作ではまさにその人間の持つ「陽の力」をピックアップしたエピソードだと感じました。
今日はここまで。