服装自体は多少違い。ウバメはあまり好まない大きな鉈を持っていたが、纏っている雰囲気や放っている妖気から、自分と同じ山姥であることは容易に伺い知れた。山姥は基本的に群れることのない種族であるため、ウバメはその山姥とは接触せず、自分の縄張りへと戻った。
 しかし――その山姥の姿は、妙にウバメの脳裏にこびりついて離れなかった。聖域への侵入者を追いかけ排除している最中でさえ、その違和感はなくならなかった。
 この妙な違和感はなんだ?
 侵入者もなく、遠くに鳥の声が聞こえるだけの穏やかな日中、ウバメは森の中の巨岩に腰掛けて自問していた。この違和感の正体は?
 ほどなくして、その答えは見つかった。違和感の原因はあの山姥ではない。自分だ。自分の、左手。
 その左手だけが、肘ほどまであるロンググローブに覆われている。一見どうということのない服装。そもそも、妖怪にとってはその服装もまた自身の構成要素のひとつであり、それに違和感を覚えることのほうがおかしい。
 しかし今やウバメにとって、ロンググローブに包まれた左手は自分の肉体の一部から剥離して感じられる程になっていた。
 この左手は、一体何なのだ? なぜこの左手だけが場違いなロンググローブに覆われている?
 見れば見るほど違和感が強くなっていく。この左手だけが、山姥としての自分の構造に似つかわしくない。
 そもそも――このロンググローブの中に入っているのは、果たして本当に自分の左手なのか?
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