ワンのいる病室には、彼以外誰もいない。しかし、スピーカーからひっきりなしに流れてくる小生意気な少女の声は本物の人間のそれと判別がつかないほどに人間的だ。初めこそその異常性に疑問を抱いたワンだったが、まるで旧知の仲のように馴れ馴れしく話しかけてくるこのサポートAIの調子に、そんな疑問はいつしか吹き飛んでしまっていた。
 凍項電子開発公司から譲渡された試作機体である「[[rb:飛虎 > フェイフー]]」に搭乗しているあいだじゅう、このサポートAIの異様に人間的な言動はワンを混乱させていた。加えて、ハッキングでもしたのか戦闘後にワンが病室に担ぎ込まれるたびにこうしてスピーカーからやかましくわめきたててくるのだ。
『それで~? ワンちゃんはいい夢見れまちたか~?』
「ああお前のお陰で最悪の目覚めだよッ!!」
 少女の声に負けない大声で怒鳴り返しつつ、ワンは反射的に枕をひっつかんで天井のスピーカーに投げつけようとした。途端に肋骨のあたりに激痛が走り、掴んだ枕は力なくベッドの上に落ちた。それをどうやって見ているのか、スピーカーからは少女がけらけら笑う声が響く。
『あーあ、怪我人が無理するから。ま、次のお仕事の連絡もまだないし、大人しく寝てればぁ?』
 背中からベッドに倒れ込んだワンは、全身の痛みでもう怒鳴り返す気力もない。かろうじて小さな声で悪態をつくのが精一杯だった。
 ベッドに体を横たえて、改めて病室を見回す。そこにはワンしかいない。それが一瞬、幻覚か何かのように思えた。視線を横にやれば、すぐそこに底意地の悪い笑みを浮かべた少女が座っている、そんな気がしてならない。
『なあに、急に黙っちゃって。ワンちゃんはおねむでちゅか~?』
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紅楼夢表紙お礼SSを書いていきます。
初公開日: 2024年01月21日
最終更新日: 2024年01月21日
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