「37.5……」
体温計の数字にはぁ……とため息をつく。
今日は太一と遊ぶ約束をしていたのにこの熱では無理だろう。
痛む身体でメールを打ち込みベッドに放り投げた。
『ピンポーーーーーーーン』
「ん…?」
昼間のチャイムに宅配業者か?と怠い身体を引きずると外から太一の声が聞こえていた。
「ヤマトーーーー!」
「たいち、?」
「ヤマトっ!そこにいるのか?開けてくれよ」
「あ、ああ…」
慌てて扉を開くと走ってきたのか荒い息を吐いた太一が立っていた。
「ヤマトっ、風邪ひいたって大丈夫か?おじさんは?今日いるのか?」
「え…あ、今日は親父は仕事…昨日、寒かったから熱が出ただけだよ」
「じゃあ一人じゃないか!?オレが看病してやる!」
「……は?」
「いいから!早く布団に入れよ」
お前が起こしたんだじゃないかと思ったが、太一があまりに深刻そうな顔をするので、黙って布団に入る。
ヤマトに肩まで布団をかけた太一はヤマトの額に手を当てる。
「かなり熱いな……冷やしたタオル作るな?」
「あ、ああ……」
「ご飯は食べれそうか?」
「……今はいい」
「そっか。ならタオル作ってくるからちょっと待ってろ」
そう言って太一は部屋を後にする。いつもより早い足音に珍しいと思う。
「ヤマト……」
「ん……」
額にそっとタオルを載せられる。冷えたタオルが心地よく、深くため息を吐いた。
「ヤマト……」
ヤマトを呼ぶ太一の声はいつもと違っていた。いつもの自信にあふれた声ではなく、頼りなく、か細い。重たい瞼を開けて太一を見ると眉を八の字の下げた太一がじっとヤマトを見ていた。
「たい、ち」
「っ!どこか痛いのか?!それとも寒い?熱い?」
「そんなに心配しなくてもすぐ治るさ……」
「けど……何もできないなんて」
「……なら、傍で寝てくれよ。湯たんぽの代わりくらいは出来るだろ?」
「そんなことでいいのか…!?」
「……は?」
目を開けると嬉しそうな太一と目が合った。目をしばたたかせるヤマトに対して太一はいそいそと立ち上がった。
「あっ、でもこの格好でヤマトのベッドに入ったら良くないかな……」
さっき走って来たこともあり、汗をかいている。このままヤマトのベッドに入るのは太一はよくてもヤマトの体調にはよくないのではないか?と思ったのだった。
「服、脱いだらいいのか?」
「えっ」
そういえば時代劇を見ていた時に熱を出した主人公に裸で抱き付くシーンを見たことがあったが、あれはそういう意味だったのか。今更ながら納得がいった。
早速とばかりに服を脱いでヤマトの布団に潜り込む。
「た、たいち?!?!」
「へへっ……あったかい?」
抱き付くとヤマトの身体はいつも以上に熱かった。早く治ってほしくて負担にならないように抱き付こうとするが、なぜかヤマトは太一が近づけば近づくほど逃げてしまう。
「ヤマト、なんで逃げるんだよ」
「いや、それはそうだろっ」
裸の太一に抱きしめられるとかどうかしている。太一の裸なんて風呂もプールもなんなら夜のベッド(意味深)でも見た事はあるが、これらとは意味が違う。戸惑うヤマトに対して太一は意味が分かっていないのか下がるヤマトににじり寄る。
「ほら、オレに身をゆだねろって」
「え、ああああ(ひぃいいいい!?!?)」
壁際に追い詰められた太一に抱きしめられる。背中に回された腕が心地よい…とか思っている場合ではない。
「ヤマトの身体、すごく熱いな……」
「そそそそう、か?俺はお前の方が熱く感じる……」
「それ寒いんじゃねえの!?もっとオレに抱き付けよ!」
「え、いやっ」
それは不味い。太一の身体は心地いいが、それだけで終わる自信がなかった。熱に浮かされた身体が憎らしい。うまく動かない身体が憎い。
「たい、ちぃ……」
「ん?どうした?よしよしする?」
よしよしってなんだ?と思ったが、反射的に頷いていた。
「ん、ヤマト……よしよし」
太一の手がヤマトの後頭部をやさしく撫でる。その行為が心地いい。
「寝ていいからな」
「あ、」
その声に自分の意識が遠のくのを感じた。