ザブーーン
ザブーーン
サアーーーーーーーーー
ザブーーン
白い息が漏れる。
帽子を深々と被りコートを着た男が一人、高台の上に立っていた。
男は堤防から下を覗き込む。そこには荒れた海が渦巻いていた。
波は堤防周りの岩石にぶつかっては静かに引いていく。
ここはタイタン塔105-B。海辺に建てられた、人工知能が管理する塔の1つだ。
男は探偵屋をしていた。
人工知能タイタンが、不死身の人間を管理するようになってからは、珍しい職業である。
「ここは遺体があった場所か。」 
「はい、そうです。ここで秋さんの遺体が見つかりました。」
そう答えるのは、この塔3-bに暮らす住民だ。
亡くなった上宝秋氏の家族の一人である。
どういう顔をして話をしたらいいのか分からない様子で、悲しみよりも驚きが勝っている。
そんな風に主人が混乱している様子を確認して、側に控えていたチャットボットが浮遊しながら近づいてくる。
カーボン製のように見える丸い球体に二つの羽が生えており、その羽にプロペラが埋め込まれている。
「雪奈様、下に行って温かいココアを飲んでください。
 きっと楓さんが用意してくださっています。」
そういった後にチャットボットは、球体の中心についたカメラを探偵屋に向けて話を繋いだ。
「タイタン塔221-B出身の上宝様でしたね。続きは私めが説明いたします。」
説明したのは以下の内容である。
安土 秋、125歳。この塔に産まれてからは比較的若い部類に入る。
ロボット製作研究に関する論文を複数上げており、義体に入っての運動試験も何度か試していた。
人間が常日頃から感じるストレスの変化が最近で目立つところはなかったようである。
食事も普段通りしていた。日課の研究時間、擬態スポーツの時間、メカ開発の時間もきっちりと取っている。
どこにも自殺をしようとするなどの兆候は見られない。
秋氏は彼が暮らしていた塔の最上階にて焼死体として見つかった。
DNA検査から彼の遺伝子構造が読み取れているので間違いない。
焼死体は、掃除ロボットが回収に来て解剖検査を行っているところだ。
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人工知能の医術は優れている。身体の半分が吹き飛ばされていたとしても、培養臓器をすぐさま作成して身体を元通りに作成しなおしてくれる。これはDNAさえあればいい。この技術があればクローンを作ることも可能なのだが、それは倫理試験をクリアした医療系ファミリーでしか情報閲覧が許されていないため、誰でもできる訳ではない。そのため悪用は厳重に防がれている。
また、我々のDNAは、より強い種として繁栄するために高い身体再生能力を付与している。原始的な人間であれば致命傷に至るような傷であっても、我々のDNAであれば瞬時に毒素を排出して細胞回復ができる。
タイタン塔における死というのは珍しい。
タイタン塔から襲われる
死ぬ気で逃れる
秘密を知ってしまった一般ピープルと思われたらしい
私と関わりを持ったファミリーの人たちは何度も検査を受けることだろう。
最悪、幸せな死を模した廃棄さえ行われるかもしれない。
かつての人々が行っていた。葬式という文化だ。
別れを言い、悲しみ、美しさで祭って終わらせる。
この世界を永遠に保つためには物語が大事なのだ。
それに疑いを向けるような事実があれば抹消される。
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