どんな感じになるか。
往々の小変が集まりて未知の大事を起こす。それが常である。無知な少年とその周りで起こったことも偶々の塵事が積もり重なった結果だったのだ。そして、これも残念なことにそのひとつ。里程標はまだ目的地まで遥かに遠いことだけ明瞭に示している。細面をあげて、天を仰ぐ。で。視線を下ろすと少年の紅眼には現状の惨禍だけが映った。まざまざと。何もかも閉ざしてしまえたらどれほどよかっただろうか、なんて。陳腐な考えすら過ぎってこない。ただ――終わりを待つ――それが許さるのであるならば。海に還るように。
うーん、テスト(-ω-)/
遠く彼方で狼煙があがっている。きっと呼んでいるのだろう。なにを、だれを。――一体どういう?
古い塔からそれを見た少年は表情を歪めた。厭な臭いが鼻についた。足元から立ちのぼってくる悪臭は、もっと下から這いずってきたものだ。そう、黒煙が巻き込んだのはこの世の骸から出でるものではない。眼前の荒原を飲みこんでいく禍々しいアレにも既視感があった。何故か知ってる気がした――脳に刷り込まれている、お互いに。恐怖が身体をここに縛りつけている。いきぐるしさを思い返す。少年は己の内側から激しく叩く熱を感じた。はち切れんばかりのなにかが逃げ出そうを藻掻く。それに凄烈な不快感を覚える。怒りを覚える。その反面、そいつがくれた抗いがたい快感を知っている。少年の表情が忙しなく変化する。世界の、誰も知らないところで。荒ぶる朔風が疾った。そのとき、最期の滴があまねいた。
見上げた空がとてもきれいだったことだけは憶えている。たぶん、夕暮れに、この上なく夜にも近い色だった。――王莽が時というのだろうか、終わりを孕んだ刻。天辺がぽっかりと空いている円形の塔の中。中央に置かれた象牙色の石棺に腰を掛けて、唯一外界と繋がるそこをねめつけるように仰いでいた。素足にひんやりと伝う湿った空気。落ちてくる乳白色の靄。嗚呼、雲一つないくせに何が降るのか。本当に何か来るのかもしれない。いっそ、こい。かなしいことに女はソレを黄昏色の双眸に映しみた。希うことは。
色素の薄くて柔らかな髪を後ろで束ねて少年は剣を手にとった。小柄な身体にお世辞にもその立派な武器は似合ってない。瞳の朱色は不安げに揺らいでいるようだ。今にも全身震えだしてしまいそうな、目の前の相手はなんと頼りないのだろうか、と嘆息を漏らした。これが鏡に映った己の姿。豪奢な剣をどう構えてみようと決まりはしない。適当にしてみて刃を絢爛な鞘に納めた。くしゃりと前髪を掻く。として、扉を叩く音に驚いて、落ちていた華奢な肩が大きく跳ねた。どうにか努めて平静にアステリオンは返事をした。
今日がとても怖かった。少年にとっては今まで生きてきた中で最も恐ろしい日が今日となった。ああ、来てしまった。数日のうちに決まってしまった。宣告されて一刻、世界が暗転したまま、刹那、自分だけ空間を切り離されて、そのうえ心だけポッカリ消失してしまったみたいだった。なんとまあ。
隣国と領土の小競り合いを始めて幾年、それはもはや両国間の小競り合いなどでは収まらない体をなしていた。ずっと前からもう綺麗事は容赦なく踏みつぶされ、その地は血を啜って淀んでいた。そして、肝心な事態も泥濘に嵌ったように動かない。剣をとるのは簡単だったのに収拾がつかないくなってしまったのだ。少年はその渦中へと赴く。いかされる。なんの希望も湧かない。自室で独りになったが刹那、あらゆるものが崩壊した中で自分だけが立っている昏い世界に浸った。そのまま、その世界から戻る方法も忘れてしまって、時が過ぎてしまえばいいのに。いいや、止まってしまえばいい。アステリオンは本気でそう思っていた。なにも覚えていない。淡々と冷酷に告げられた、言葉。思い返そうとしたところでその二文字で出来た単語に全て塗りつぶされる。ふと、ふと。耽っていると一抹の空しさが鼻をくすぐった。憶測の域を抜けないものだが、周りの顔はいつもと変わらなかったのではないか。もう変化しない色。なにかしらの反応があったなら、まだアステリオンは踏みとどまれたかもしれない。あのとき、震える声が、発した言葉を、覚えていたかもしれない。一度、吐露したものは取り返すこと出来ない。色が引いていった。張り詰めた甲高い音が鳴った。アステリオンを映していた鏡がひび割れたのだ。実に厭な音が這うように響いた。音から少し遅れて扉が乱暴に開かれる。
「どうなさったのですか!」
アステリオンは両目を大きく見開いたまま、ただ突っ立っていた。その足元には黒く燻る細々とした破片らしきものが散乱してあった。禍々しい紅い光が淡々と波紋を作り、水面を潜るようにして跡形なく消えた。ほんの一瞬の出来事であったが、
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(仮)てすと
初公開日: 2022年04月23日
最終更新日: 2022年07月24日
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コメント
140字を書きたい 本日のテーマ→「涙を飲んだ夜を幾度重ねても」
140字が書きたくなったので書きます。いつだって突発的。今回は案が固まってないのでいつまでやってるか…
夕緋