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ビニール傘にパラパラと当たっては砕けていく雨滴を眺めている。一つの雨粒が、傘の表に幾筋も作られた川筋に交わってするすると滑り落ち、質量を増してそこ重みに耐えきれなくなってからぽたぽたと滴り、地面の水たまりに吸い込まれたあとは元の招待なんて何もわからない。
雨の日は好きだ。
普段は使わない傘やレインコートの出番があるというだけで心がそわそわしてくる。
電気を消した薄暗い部屋で、布団にくるまり、目を閉じて、窓ガラスを打つ雨音を聞いている時も好きだ。
いや、ただ降り落ちてくる雨を眺めているだけでも、空っぽのコップに水を注いでいく時と同じ気持ちになるから好きだ。
「ゆらちゃーん、またどっか行ったー」
赤い傘の下に顔を隠すようにしてスマホをいじっていた五月雨が、私に泣きつくようにして顔を覗かせた。
傘と傘がぶつからないギリギリの距離まで五月雨に近付く。
「どこで見失ったの?」
「B-2地点の、12番通りに入ったところ」
五月雨が見せてくれた、水滴で濡れたスマホの画面にはカラフルな球体のキャラクターが無数にうごめいている。最近巷で流行っている、鬼ごっこがモチーフになったゲームのプレイ画面だ。
「それ、序盤も序盤じゃない?」
「やっぱこのゲーム、あたしには向いてないのかな。ツユリくんがやってる時はめっちゃ簡単そうだったのに」
「あー、ツユリくん、ゲーム上手いもんね」
元はプロゲーマーを目指していたらしいツユリは、初見のゲームもさくさく進めてしまう。
以前、ツユリがこのゲームをプレイしている時にたまたま居合わせた私と五月雨は一緒にツユリのプレイを見守っていた。それでゲームそのものに興味を引かれたらしい五月雨は、この待ち時間を使ってゲームをダウンロードし、プレイしていた。
普段ゲームをほとんどしない五月雨にはキャラクターの操作が難しいらしく、追いかけるべきキャラクターをちょくちょく見失っては私に助けを求めてきていた。
「見るのとやるのとじゃ全然違う。コツとかあるのかな。今度ツユリくんちに押しかけて聞いてみるか…」
「また門前払いされるんじゃない?」
「差し入れ持っていけば大丈夫」
「差し入れって?」
「この前は突然だったけど、エクレア持っていったら部屋に入れてくれたよ」
「甘いもの好きなんだ」
「みたい」
そんな話をしながら五月雨はゲームをログアウトし、スマホの画面はホーム画面に戻る。
「ゆらちゃん、」
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2022/03/19 オリジナル
初公開日: 2022年03月19日
最終更新日: 2022年03月19日
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コメント
リハビリがてら何か書きます。