執筆記録:
執筆時間188:46(3時間08分46秒)
本文14371文字/282行。総執筆数64107(内訳:追加文字数39279/削除文字数24828)。
ショートショート。
【もげた翼を投げないで】
 道路に人が倒れていたらどうするか。駆け寄って声をかけながら救急車を呼ぶくらいしかすることがない。
 では倒れていたのが人ではなかったらどうするだろう。
 義務教育では習っていないし、親からだってそんな局面の対処法を教えてもらってはいない。
 脳裏に浮かんだのは、かつて摂取した様々な虚構の物語での主人公のとった行動だ。
 家に運び、匿う。
 道路に倒れていたのは、背中から大量に出血した天使らしき人物だった。なぜ僕がその者を天使と見做したのかは、背中から翼が生えていたからだ。片っぽの翼しかない。もういっぽうは根元から千切れているようであった。地面に目を配るが、そこにもげた翼は見当たらず、僕は唾液を呑みこむと、その人物をじぶんの部屋のあるアパートまで運んだ。
 距離が近かったのがさいわいだ。
 あとで思い返してもみれば、これはとるべき対処ではなかった。誤った判断であるし、早まった行動だ。しかし僕は思うのだが、人間というものは、日々の言動にしたところでそれほど深く考えて行動に起こしているわけではない。習慣であるし、惰性である。多くは反射だろう。会話なんてその最たるものだ。こうきたらこうする、といった一種スポーツのような反復練習の繰り返しによって身に付いた型を、刺激に応じて返しているだけだ。
 ゆえに、初めて直面する事態ではどうしてよいのか分からない。文学に仮に役割があるとすれば、初めて直面する悲劇や喜劇においてどのように振舞えばよいのかを前以って追体験できる点だろう。予行演習ができる。或いは、現在進行形で直面している現実を俯瞰して眺め、対処を講じることができる。じぶんを見詰めることができる。
 部屋に血だらけの人物を運び込んでから、真っ赤なじぶんの手のひらを目にして、僕は後悔した。これではいまさら救急車も、警察も呼べないではないか。
 思えば、もげた翼がそばになかった時点で、これは事故ではない。誰かしらがこの人物を襲ったのだ。
 犯人と疑われてもおかしくない。
 僕は血の気が引いた。
 しかしいまはじぶんの保身を考えている場合ではない。まずはこのひとを助けなくては。
 背中の傷を焼酎で消毒し、止血をする。ガーゼ代わりに煮沸消毒をしたTシャツの切れ端をあてがい、上からさらに細く裂いた布で縛り付ける。包帯がないのでTシャツを裂いて代用品にするしかなかった。
 僕にできるのはここまでだ。あとは当人の治癒力もとより体力に頼るしかない。
 僕のほうが汗だくの血だらけだった。
 ほかに何かできることはないか、と考えながら、シャワーを浴びに浴室に入るが、その前に、と思い留まり、居間に踵を返す。
 貴重品や見られたくないものを金庫に仕舞っておこう。
 金庫は、大学のサークルで使うので以前購入したものだ。イベントの受付けで預かった支払金やお釣りを仕舞っておくのに使う。五十センチ四方の立方体で、両腕で抱えてようやく持ち上げられるくらいの重量がある。
 ダイヤルを回してしっかりと施錠する。
 ふだんは張らない湯を湯船にそそいで、この日は身体の芯まで温まった。
 これからのことを考えようとするが、何をどうすればいいのか見当もつかない。
 それはそうだ。こんな事態に遭遇するなんて夢にも思わなかった。想定をしたこともない。
 やはり選択を誤ったかもしれない。
 救急車を呼んで、ほかのひとを頼るべきだった。
 いまからでも遅くないのではないか。
 性別は不明だが、翼を背中から生やしたそのひとをいまいちど屋外の安全な場所へと運び、匿名で病院に連絡する。逆探知がこわいけれど、救急車を呼ぶだけならだいじょうぶではないか。
 仮にあとで警察に突き止められても、わるいことをしたわけではない。そのときは正直にじぶんのしたことを話せば済む。
 そうだ、それがいい。
 いちど結論付けたそうした考えも、浴室からあがり、着替え、居間に寝ているそのひとの月光が人型をとったような姿かたち、顔の造形を目にしてしまうと、なんだか、もうすこしここに寝かせていさせたい衝動が湧いた。
 衝動でありながらそれは炭火の熱のごとく淡くいつまでも胸に留まりつづけ、陽がのぼって、ふたたび沈んでからも僕は、そのひとを部屋に置きつづけていた。
 衰弱したらすぐにでも救急車を呼ぼうと覚悟していたが、意に反して、その人物は食事もとらないのに刻々と顔色をよくした。定期的に水だけは飲ませていたが、水道水は口に合わないらしく、いちど沸騰させた湯冷ましでなければ飲んでくれなかった。
 排せつ物の心配をしていたのに、そのひとはまったくそれらをする様子がなかった。
 天使のような、というよりも、このひとはまさしく天使なのではないか、と僕は妄想するものの、果たして天使が真実存在するのかは知る由もないし、確かめようもない。仮に実在したとして、なにゆえ血まみれで道路に倒れていたりするのだろう。
 天使を襲う悪魔のような者がいるということだろうか。
 だとすれば僕はその脅威からこのひとを守ってあげたいと思った。
 そう僕に思わせるだけの何かが、このひとの造形にはあった。手放したくない、穢されたくはない、と思わせる何かが、このひとからは光のごとく仄かに放たれて映った。
 神々しいのではない。
 庇護し、慈しみ、手元に置きつづけたいと望ませる魔にも似た魅力がある。
 どんな声をしているのか。
 どんな人格が宿っているのか。
 いっそ目覚めずにこうして世話をしていられたら、と冗談半分に妄想し、さすがにそれはひどいやつすぎるな、と自己嫌悪を手のひらに載せてもてあそぶ。
 四日目の朝に、ゴミ捨てから戻ってくると、ソファのうえでそのひとが上半身を起こしていた。目覚めたのだ。
 胸をさすりながら、部屋をゆっくりと見まわしている。
「だいじょうぶですか」まずは声をかけた。
 つぶらな瞳がこちらを向く。
「あの、心配しないでください。危害を加えたりはしないので。道路に倒れていたので、ここに運んで、治療というと大袈裟ですけど、血が流れていたようなので、それを」
 胴体に巻きつけた布切れを指さす。「身体の具合はどうですか。つらくはないですか。お腹空きませんか、何か食べられるものがあれば言ってもらえたら買ってきますけど」
 湯を沸かしに台所に立つ。 
 返事がなく、しばらくしてから、言葉が通じないのかも、と思い至った。
「あの、僕の言ってること、分かりますか」
「ここは?」
 正直安堵した。言葉は通じるようだ。
「僕の部屋です。安アパートですけど、ほかに誰も住んでいません。あの、傷の具合はどうですか」
「傷?」
「背中の、その、翼が」
 もげていた旨を知っているのだろうか。気づいていないとすれば酷な宣告になる。僕にしてみれば腕や脚がなくなっているようなものだ。
 そのひとは背中を丸める。意識を肩甲骨の辺りにそそいでいるようだ。顔を顰めたので、傷口が痛んだのだと判る。
 それからそのひとはおっかなびっくり、背中に手を回し、そこにあるはずの、しかしいまはもうない物を探った。
「道路にはありませんでした。きっとどこかで落としてしまったか、誰かが持ち去ったか」
 いま訊くことではないかもしれなかったが、確かめずにはおられなかった。「あの、あなたは天使さまなんですか」
「わたしは」
 声から性別は識別できない。もし天使ならばそもそも性別なんてないのだろう。
「天使ではないと思う」と返ってきたので、僕は内心、安堵と落胆をいっしょくたに覚えた。天使だったら僕にはどうすることもできない。このままさよならをするのが最も妥当な判断だ。しかし、天使でないならば、いましばらく僕にもできることがありそうだった。反面、僕は、そのひとに、天使であってほしくもあったようだと落胆を通して知り、じぶんの気持ちに驚いた。
 できるだけそのひとに特別な何かであってほしいとの望みが僕にはあったらしい。それはひどく醜い感情に思えた。
 僕はそのひとに名を訊き、そのひとはヤナイと名乗った。じぶんが誰でどこから来たのかを憶えているか、と訊ねると、そのひとは頷いたが、説明しようとはしなかった。
「言いたくなければ言わなくていいのですけど、詳しい経緯なんかを、憶えている範囲で教えてもらえませんか。どうして倒れていたのかも含めて、知っていてたほうが何かと協力できると思うので」
「匿ってくださるのですか」
「それは、ええ。そのつもりだったんですが」
 白湯を渡すが、そのひとは手を付けなかった。冷めるを待っていたようだ。僕のほうでさきにじぶんの側面像をひとしきり話して伝えると、そのひとはようやく白湯に口をつけた。
「大学生の方なんですね」
「いまは休みなので、暇なんですけどね。バイトはまあ、ちょうど辞めたばかりというのもあって」
「困らないんでしょうか」
 ここに居座っても迷惑ではないのか、と訊きたいのだろう。
「親からの仕送りがあるのでお金はだいじょうぶです。部屋も、こんな狭苦しいところでよければ。あの、食べ物とか苦手な物はありますか」
 話が逸れたので、そのひとの内情に沿う話題を振った。
「わたしたちは物を食べません。食べられないことはないのですが、ガラクの物を食べると身体が不調に」
「すみません、ガラクとは?」
 そこでそのひとはきょとんとした。それから、ああ、と目元だけをほころばし、
「この世界のことをわたしたちはそう呼んでいます。わたしたちはガラク、この世界とは違った階層で暮らしています。ワワラ、とわたしたちは呼んでいます。あなた方も亡くなられると、そちらの世界、ワワラへと移行します。そのなかでワワラに同調可能な者が、わたしたちのような翼を生やし、そこで暮らしていくこととなります」
「適性のある者、という意味ですよね。もし翼を生やせなければ?」
「消えてなくなるしかありません。そもそも肉体はこちらの世界で朽ちているので。同調可能な者のみが新たな肉体を得られるのです」
「ワワラでしたっけ? そこで純粋に産まれた者たちはいないのですか。つまり、生殖ができるのか、ということですが」
 こちらの世界での記憶はあるのだろうか、と疑問が押し寄せるが、順番に訊いていくしかない。
「生殖はできません。かつては純粋なワワラの民もいたと思います。ただし、いまはほとんどが元はガラクの生まれです」
「誰でも死ねばワワラへ行くんでしょうか」
「いいえ。誰を呼ぶかは、わたしたちが選びます。あなた方がわたしたちを天使と呼ぶのは、おそらくそれに関係しているのでしょう。稀にわたしたちと接触したのちに蘇生する者があります。記憶が残っていれば、その体験をこちらの世界で語り継ぐこともあるでしょう」
「ワワラへ渡った死者に、こちら側での記憶は?」
「人によりけりです。死因によって肉体の損傷具合が異なりますし、何よりワワラへと渡るには相応の負荷がかかります。わたしたちのように翼があれば別ですが」
「翼がなければ渡れない、ということでしょうか」
「わたしたちの補助がなければ、そうですね。ですからわたしたちに選ばれた者しかワワラへは渡れません」
 言い換えるならそれは、翼を半分失った者もまた容易には戻れないということではないのか。
「ワワラへはその、怪我が治れば戻れるのですか。あなたは」
「どうでしょう。翼を完全に失くしてしまったらもう戻れはしないのですが、まだ片方は残っておりますし、元々空を飛ぶためのものではないので。いわば切符みたいなものかもしれませんね」
「戻れるかはまだ分からないんですね」
「お邪魔ならば、是非、遠慮なさらずにおっしゃってください。わたしたちはこう見えて頑丈です。あなた方のように雨風を苦ともしません。いざとなれば、何とでもなりますから」
「警察に補導されちゃうかもしれませんよ」これは冗句のつもりで言った。
「その手のあしらい方には慣れています。周波数とでも呼べばよいのでしょうか」
 このように、とそのひとは苦悶の表情を浮かべながら、姿を半透明にした。「ガラクを離れ、よりワワラに近い階層に潜ることで、姿を晦ますこともできます」
「でも半透明でしたよ」
「すこし傷が痛んでしまって」
「ならもうしばらくはここで休んでいってください。傷が癒えるまでは。もちろん、嫌でなければですけど」
「ありがとうございます。助かります。ですが、きみのほうでご迷惑ではないでしょうか」
「まったく。何でしたらずっとここにいてもらってもいいですよ」
 本心のつもりだったが、どう聞いても冗談にしか聞こえないだろう。案の定、そのひとは戸惑いの間を空けたのちに、
「お優しいのですね」
 天使としか言いようのない笑みを浮かべた。
 数日を、一つ屋根の下で暮らしているあいだに僕はそのひとをヤナイと名前で呼ぶのに抵抗がなくなった。
 ヤナイに性別はなかった。生殖行為をする必要はないからだろう。ただ、あちらの世界にも娯楽としての性行為はあるらしく、そのときどきで役柄を好きに選べるのだそうだ。
 ほかにもいくつかハッキリしたことがある。ヤナイたちはどうやら嘘を吐けないらしい。嘘を吐くたびに翼の羽が抜け落ちるのだそうで、嘘を吐いていると一目で喝破される以上、嘘を吐くメリットがない。それはこちらの世界にいるあいだにも有効な現象であり、現に目のまえで、わたしは人間です、と嘘を吐いてもらうとヤナイの翼から羽が一本抜け落ちた。
「こんなことでたいせつな羽を無駄にしないでください」僕は慌てて羽を拾った。
「片っぽだけあっても仕方がないですから。いっそのことこの翼もとってしまったほうが楽かもしれませんし」
「なんてことを」僕はヤナイからずり落ちた毛布を掛け直す。この数日のあいだにソファの上がヤナイの居場所となった。「言いたくなければ答えなくてもいいです。何があったんですか。どこで何があってそんなひどい怪我を」
「言いたくないです。ただ、わたしはとれた翼を探すためにあの場所にいました。見つけ出せば、もういちど背中につけることができる気がして」
「あの近くで落としたんですか」
「なんとなくですが、翼の在処が解かるんです。本当にただ漠然とした方向みたいなものでしかないんですけど、この近くのどこかに落ちている気がして」
「ならあとで探してきますね。でも見つけても手術をしなければ元には」
 戻らないのではないか、と僕は思ったが、ヤナイは口元をやわらげた。
「だいじょうぶです。わたしたちの身体は粘土細工のようなものなので。じぶんの身体であれば、元に戻せます。原形を留めていないとなるとさすがに無理かもしれませんが、気配が感じられるので、まだなんとかなる気がします」
「そう、ですか」
「どうしてそう親切にしてくださるのですか」ヤナイはソファの上から覗き込むように小首を傾げる。それだけの所作を目にするだけで僕の胸は詰まり、部屋がぱっと明るくなって感じられる。「どうしても何も、困っているひとを放ってはおけないじゃないですか」
「わたしはひとではないのに?」
「僕には区別をつける必要があるとは思いません。困っているのでしょう?」
「きみは犬でも猫でも、困っていたら匿ってしまいそうですね」
「犬でも猫でも困っていたら世話を焼きますよ」
「いいひとですね」
「じつはそうでもないんですけどね」僕は照れ臭くてそんなことを口走る。
 ヤナイを拾ってから一週間もすると、おおむねの事情は把握できた。ヤナイは元の世界であるワワラには戻れない。羽を両方取り戻さねば帰ることができないのだ。そしてその失った翼はこの近辺にあるらしい。
 ヤナイは嘘を吐けない。ただし言いたくないことは言わずにいられるし、翼の羽が抜けるだけで、真実嘘を吐けないわけではない。
 食事をとらなくて済むようだが、かといって物理法則を無視しているわけでもなさそうで、単にエネルギィの消費の仕方が僕ら人類よりもゆっくりなだけのようだと僕は見做している。
 つまるところ、元の世界に戻れなければ遠からずヤナイは衰弱していくだろう、というのが僕の見立てだった。
 いちどこの考えを伝えたところ、そうかもしれない、とヤナイは認めた。
「ときどきわたしの世界にもいたんです。ワワラではなくガラクで暮らすのだと言って、出ていく者が。しかしそうした者たちは二度と戻ってはきませんでした。戻らないのか、戻れないのか、誰も知りません。戻れなくなった者とは連絡の取りようがなく、また戻れなくなったということはすなわち翼を失くしてしまったということでもあるでしょうから」
「両方の翼がなくなったらどうなってしまうんですか」
「たぶん、わたしたちはわたしたちではいられなくなると思います」
「消えてしまうということですか」死ぬと、そういうことなのだろうか。
「そうなのかもしれないし、そうではないのかもしれない。見たことがないし、わたしたちの誰もそうしたことに興味がありません。言い方がわるいのですが、ガラクの人々、その世界がどうなろうと構わない、と無意識のうちから誰もが考えているようです。いかにガラクからわたしたちのような者を拾いあげるか。考えるべきはそこであり、ガラクの世界の在り様ではない。ガラクの民の生き方などしょせんは足元の下で起きていることにすぎないのでしょう。わたしはそうした考えに馴染めずにいたので、きっとそのせいなのでしょうね、あんなことに」
 ヤナイはそこではっとした様子で口をつぐんだ。本来は黙っておきたかったことなのだろう。ついつい口を滑らせたといったところか。
「お仲間に傷つけられたのですか」僕はヤナイの足元にひざまずき、探り探りヤナイの手の甲に手を重ねた。ひんやりと冷たい。まるで銅像のようだ。
「言いたくありません」
「すみません。でも、だったらそんなところに戻らずに、ずっとここにいればいいじゃないですか。バイトを増やせばもっと広い部屋に移ることもできますし」
「そんなご迷惑はかけられません」
「いいんですよ。乗り掛かった舟です」
 小首を傾げられ、僕は恥ずかしくなる。諺が伝わらなかったときの対処方も学校で教えてほしいと不満半ばに望むものだ。「僕はなんでか、あなたに不幸になってほしくはないみたいです。あなたが嫌でなければ、ずっとここにいたらいいんじゃないですか」
 食費がかからないうえ、部屋を汚すこともない。言い方はわるいが、猫を飼うよりもよほど楽だ。動く等身大の人形がいるようなものであり、僕にはまったく損がない。それで人助けになるのなら精神衛生のうえで得をする。ましてや相手は天使のごとく造形のヤナイだ。翼が片っぽしかないこと一つとっても、何か腹の底をなぞられるような倒錯を覚える。
「お優しいんですね」
 ことあるごとにヤナイは僕をそう評した。僕はそのたびに一定時間、ヤナイの顔を見れなくなる。
 じぶんの胸の内に芽生える罪悪の芽を刈り取るように僕は、 
「ヤナイさんのその言葉が皮肉に聞こえてしまうのは、きっと僕が本当はまったくやさしくないからだと思います。僕は僕のためにあなたにここにいてほしいんです。せめて傷が癒えるまで。このさきどうしたらいいのかが解かるまでは、ここに」
「いいんですか?」
「僕のほうでお願いをしているんです」
「でもわたしには何もお返しできるものがないので」
「何もいりませんよ」
「そんなわけには」
 僕はヤナイのまえに膝をついて、ヤナイの顔を見上げている。ヤナイはソファのうえで膝を抱え、ひざ掛けに寄りかかるようにして座っていたが、そこで身体ごと僕に向き直る。上から目を覗きこむと、
「きみたちは快楽は好きですか。気持ちよいことは好きですか」
 僕はその言葉の意味を理解していた。それとなくいつかはそういう方向に誘導しようと企んでいたのだとこのときじぶんの邪悪な心根に気づかされたが、罪悪感を覚えるよりさきに、自己嫌悪を覚えるよりもさきに、僕は、無垢を装い、ヤナイの善良なる奉仕の心に身を委ねるべく、
「嫌いじゃないけど」
 ヤナイの手の甲をゆびでなぞった。「好きだったら、どうなるんですか」
 膝にかけていた毛布をほどきヤナイはそれを頭から被った。それから両手で毛布を広げ、まるで翼を広げたコウモリのように僕を真上から包みこむ。
 促されるように、吊り上げられるようにして僕は、ソファにあがり、ヤナイのうえに、馬乗りになっている。
 ヤナイの手のちからはまるで機械のようで、抗いきれずに、もちろん僕には抗う気はなかったけれど、ヤナイの首筋に顔を埋めている。よい匂いがした。花というよりも、お菓子のような、甘く、美味しそうな匂いだ。
 言葉はなかった。
 ヤナイの唇が僕の耳を食む。あとはもう僕はその冷たい吐息の甘いくすぐるような感触に流され、たゆたい、骨の髄まで浸かった。
 ひとしきり甘美な時間を過ごし、荒い息の反響する虚空を眺めていると、
「どっちがよいか分からなくて、両方のままにしてしまいました。だいじょうぶでしたか」
 ヤナイが遅ればせながらの気をきかせてきたので、
「気にしなくていいですよ」僕はくすくすと肩を弾ませてみせる。「いちばん楽な状態で。わざわざ何かを変えようとしなくていいです。もし両方であることでヤナイさんの快感が増すならそのほうがよいとは思いますけど」
「気持ちわるくはないですか。その、偏見でしかないのですが、きみたちはじぶんたちと異なる形状の存在を忌避するといった教えを耳にしたことがあったものですから」
「そういうひともいるとは思いますし、僕にもそういった傾向はあると思います。でも、ヤナイさんに対してはどうしてだか、そのままでいてほしいと素直に、心の底から思います」
「これですこしはお役に立てたでしょうか。わたしにはこれくらいしかしてあげられることがないのですけど」
「これは役に立つとか、立たないとか、そういう範疇のことではないと思うんですけど。お返しのつもりでしたなら、もうしてもらわなくていいです。ただ、単純にもし僕ともういちどこういうことがしたいと望んでいるのなら、僕はもっとずっと毎日でもヤナイさんとこういうことがしたいんですけど。でも、お返しとか、そういうつもりなら、きょうでこれはやめましょう」
「したいです。わたしたちにとってこういう触れ合いは、相手との距離を縮めるための、共同作業のようなもので」
「いいですね。共同作業。もっといろいろ試してみたいです」
 ヤナイはそこで初めて、僕のことを訊いた。どういう人生を歩んできて、何が好きで、どういうものを嫌うのか。
 僕はヤナイからの質問にできるだけ具体的に答えていった。ヤナイのまとう空気はいつも鉄じみた冷たさを帯びて感じられたが、ヤナイの僕への興味の言葉からはじんわりと伝わる熱が感じられた。
 僕はヤナイからの熱をできるだけ引きだそうと、なるべくつぎの質問を投げかけやすいように、敢えて引っかかりを残した。そうした回答ばかりを口にした。
 いちど途切れた質問も、時間差で引っかかりに気づくのか、ヤナイはしばらくすると、じゃあれはどうなんですか、と途切れた心拍がふたたび鼓動を蘇らせるように、渡り鳥の羽ばたきのように、詰問の滑空と飛行を繰り返した。
 僕はヤナイから向けられる熱が心地よく、僕のほうこそ滾る熱を持て余していると悟られたくなくて、努めてそれら熱量をおもてに発散せぬようにした。
 その代わり、日課となったヤナイとの共同作業では、ひときわ大量の、熱を、ヤナイの体内にほとばしらせた。
 まるでこうなることこそを望んでいたように、こうすることを目的にヤナイを拾い、匿ったのだとじぶんで錯覚しかけるほどに、僕はヤナイとの熱の交換を、飽きることなく反復した。
 ヤナイの言葉から熱を奪い、僕は僕の皮膚からヤナイに熱を奪われる。
 ヤナイの身体と触れあっていると段々と、鉄を手のひらで握っているときのようにヤナイの肉体は僕の体温に馴染んでいった。それは僕に、ヤナイとの同化を錯覚させるに充分なぬくもりを感じさせた。
 僕は体温を奪われているにすぎないのに、僕の感じるぬくもりは僕自身の体温であるはずなのに、僕を包みこむぬくもりは、まるで僕のために存在する羽毛のようで、僕はただただ誕生を待ちわびる羽化寸前の卵のようにヤナイから感じる熱量に身を委ね、絶えず押し寄せる快楽の余韻、その波に、ゆりかごのごとく揺さぶられた。
「ヤナイさんは何のためにここに降りてきたんですか」ヤナイの世界、フフラは別に天上にあるわけではないのに、どうしてもヤナイは上から降りてきたようにしゃべってしまう。僕の問いかけにヤナイは、「探していたんです」と言った。
「探して?」
「わたしの新しい、永久に、そばにいてくれる相手を。ただ、わたしは仲間たちと違って、みなが選ばぬような相手に惹かれてしまうようです。いつだってわたしの選ぶ相手は、ほかのみなの反対にあって、フフラの住人として迎え入れられることなく、消えてしまいます」
「それは悲しいですね」
「悲しいです」 
「ひょっとしてのこの辺りに、そういった、いちどは見初めたひとがいたのですか」
「もしいたとしても、とっくに亡くなっているでしょうね。わたしが迎えにきたということはそういうことなので」
 ヤナイの翼からひらりと翼が抜けた。僕とヤナイのあいだに落下したので、否応なく目に留まる。
「抜けちゃいましたね」僕は平静を装った。
「すみません、嘘を吐いてしまいました。嘘のつもりはなかったのですが、羽が抜けたということはそういうことなのでしょう。じつはこの辺りに、気になっているひとがいたんです。まだ死ぬ予定のない、若い人です」
「いちおう確かめておきたいんですけど、それって僕ではないんですよね」うぬぼれと判っていても僕は訊かずにはおれなかった。
 ヤナイは眉根を寄せ、口元だけをほころばせる。それだけの所作で、これ以上はわたしの口からは言わせないでほしい、との願いが透けて見えた。
「会いたいですか。もしどういうひとかを教えてもらえたら、僕が探してきますけど」
 いま僕に翼が生えていたらきっと根こそぎ抜け落ちていただろう。心にもないことを口にしている。できるだけヤナイから立派で、心の根の優しい、そばにいっしょにいたいと思える相手に見えるように演技している。
 ヤナイは首を振った。
「もういいんです。飽くまで、フフラに連れて帰りたかった相手にすぎません。こうしてガラクでいっしょにいたい相手ではないんです。おそらくわたしはもう、フフラには戻れないでしょう」
「そう、なんですか」解かりきっていたことだ。
「翼も、これほど長く切り離されたままでは、たとえ見つけられたとしても元には戻れないと思うんです。だったらもう、わたしはこの世界で生きていけるようにじぶんを変えていくしかないのではないかと、ちょうど考えていたところなので」
「じぶんを変えるというのは、その」
「わかりません」
 羽がまた一枚、ひらりと舞う。「ガラクの住人になれば或いは生きながらえることもできるのかもしれませんが、その方法もわたしはよく知らないのです」
 羽が舞う。
 ひらり、ひらりと。
 目についていないわけがない。
 にも拘わらずヤナイはしゃべりつづける。
「フフラを去った者たちがどうして戻ってこないのか。わたしはずっと気になっていました。フフラの民でありながらわたしだけがガラクに興味を持ちつづけていた。考えられる筋書きはそう多くはありません。消えたか、ガラクに順応したか。でも、わたしたちはガラクには長く留まれません。フフラへと帰れなければ、ガラクの空気そのものがわたしたちの身体を、翼を、蝕むからです。ならばどうすればよいのか。どうやってほかの者たちはガラクに順応したのか」
「あの、ヤナイさん。羽が。翼が蒼く」
 羽の抜け落ちていく翼は、インクが染みこんでいくように蒼く斑に変色していく。
「わたしはたぶん、探していたのだと思います。わたしと似たような者を。ガラクにありながら、フフラの世界を拒まずに、興味をそそぎ合える存在を」
 ヤナイは僕を見て、それからたっぷり肺に息を吸いこみ、
「嫌いです」と口にする。「大っ嫌いです。いますぐわたしのまえから消えて欲しいですし、死んでほしいです。金輪際近づかないで欲しいですし、一生不幸に、死にたいと嘱望しながら、暗く険しい道を歩みつづけ、苦しんでほしいとわたしは心底そう願っています」
 ぽろぽろと大粒の涙をこぼしながら、ヤナイはじぶんの肩をじぶんで抱く。そうしてうずくまりながら、すみません、とつぶやく。「しばらくわたしを見ないでいてくださいませんか」
 翼はすでに闇夜のごとく蒼く枯れており、羽はまるで落葉を思わせる勢いで、はらはらと床に舞った。
 羽は床に触れるたびに粉となって、霧散する。
 ヤナイの背中からは一本の痛々しい虫歯がごとく翼の骨格だけが残る。蒼くボロボロに炭化して見える。
 翼に留まらず、ヤナイの肉体そのものが斑に蒼く変色しはじめ、僕はどうしたらよいのか分からず、おろおろとするしかなかった。
「なにか僕にできることは」
「誓ってくれませんか。一生そばにいると、ただわたしのそばにいて、この世界のことを、きみのことを、教えてくれると、ただそれだけを誓ってくれませんか」
 僕は唯々諾々とヤナイの手をとり、一生そばにいます、といまにも崩れ落ちそうな皮膚に口づけをした。
 カシャン、と軽い音がした。
 床を見遣ると、そこには蒼い棒状のものが転がっており、徐々に砕け、間もなく床に染みこむように見えなくなった。
 ヤナイを見遣る。
 その背中からは翼がきれいさっぱり消え失せており、あれほど部屋が明るく見えた輝きも、その身体からは消え去って映った。ヤナイの身体からは蒼い染みは消え、その皮膚に触れてももう、僕はそれを冷たいとは思わなかった。
「翼が」僕はそのひとの背中に手を回し、そこにある傷跡のような細かな起伏をゆびでなぞる。火傷の跡のようにも、鱗のようにも感じられた。
「わたしはもう、フフラとは完全に切り離されてしまいました。ガラクの食べ物を食べなければ生きていけませんし、雨風に濡れれば病にかかり、すぐに弱ってしまうでしょう。これまでのわたしではなく、たぶんと言わずしてきみの重荷にしかならないと思います。いまならまだ、きみが責任を負う必要はないんですよ」
 暗に、出て行けと言われたら出ていきます、とヤナイの瞳が訴えている。たしかに僕はヤナイの、生き物とは思えない性質、それでいて生き物から得られるありったけの恩恵に惹かれて、この部屋に居座る許可をだした。留まるように仕向けた。
 けれどそれだけではない。
 僕はもっとヤナイのことを知りたかったし、これからだって知りたいと欲している。僕のことも知ってほしいし、知らないじぶんの側面に気づかせてほしい。
「このさきどうなるかは分からないけど」僕はヤナイの首筋に手を添え、そこに浮きでる血管のオウトツを指の腹に感じながら、「いまはまだここにいて欲しいと思っている」と告げる。
 ヤナイは目元をやわらかくゆるめ、何か食べてみたいな、と言った。
 それからというもの、ヤナイは僕の部屋で暮らしている。僕はヤナイの食費を稼ぐためにバイトを掛け持ちし、ヘトヘトになりながら家に帰って、そこでも共同作業によって満身創痍の様相となる。ヤナイにはこの世界のことを学んでもらわねばならない。そのための学費も工面する。いずれは戸籍をつくって、名実ともにガラクの民にしようと企てているが、どうすればそれが適うかはまだ勉強中だ。
「これ美味しい」ヤナイはひたすら食についてばかり学習する。いくら食べても太らないのはうらやましいが、食費の概念をさきに覚えさせるべきだった。
「トイレにはちゃんと行きなよ。またお腹ぱつんぱつんになって痛いって騒ぐはめになるよ」
「そのときはまた掻きだして」
「恥辱の概念も教えこまなきゃだめだなこりゃ」
 ヤナイにはゆいいつ、翼のあったころの名残が残っている。傷跡のことではない。共同作業のときにそれをいつも目の当たりにするけれど、とくにこれといってどうも思わないじぶんの気質には、やはりというべきか新鮮な驚きを覚える。ヤナイはさいきん、じぶんのそれを使ってみたいと、役柄の交代を申しでてくるが、いまのところは断っている。浮気の概念も早急に叩きこんでおくべきだろう。何かと窮屈に思うたびに不満げな顔をみせてくれるようになったのは、素直にうれしいのだが。
「あ、ここにあったケーキどうした」
「知らないよ」
「冷蔵庫に入れておいたんだけど」
「知らない、知らない」
 本当にか、と詰め寄ると、ヤナイは口元を手の甲でぐしぐし拭ってから、うん、とうなづく。嘘の上手なつき方だけは、いましばらく教えずにおこう。
「買ってくる。きょうは僕の誕生日でね。いっしょに祝いたかった」
「誕生日?」
「それも含めて教えておこうと思ったんだよ。いいから留守番してて。すぐに戻る」
 ヤナイはソファの上でサメのカタチのクッションを抱きしめる。「はやく帰ってきてね」
 甘え上手なの初めからだ。主導権をけっきょく返上する羽目になるのはいつものことだった。
「ついでにゴミも出してくる」
 言いながら、部屋のゴミを集め、袋に詰める。
 ああそうだ、と忘れていた事項を思いだし、ヤナイを振り返る。ヤナイは眠たかったのか、よこになって壁に映画を流しはじめた。途中で観るのをやめていたのだろう、映画はヒロインらしき人物の泣き顔からはじまった。 
 ヤナイがこちらを見ていないと確信してから、僕は金庫のまえに屈む。ダイヤルを回し、鍵を開けた。
 ヤナイを信用していないわけではないが、部屋にいるあいだは貴重品を金庫に仕舞っていた。帰宅してからそこに仕舞うのが習慣になっていたので、財布を取りだし、ついでのように、そこに仕舞いっぱなしだった翼を引っ張りだして、ゴミ袋に詰めた。
 ヤナイが反応を示した様子はない。
 それはそうだ。
 もうヤナイには、翼を感じる能力がないのだ。
 翼は汚れ一つなく、きれいなものだ。
 蒼く変色もしていない。
 これを手放すのは惜しい気がした。
 もともと、ヤナイを拾うより先に、道路に落ちていたものを僕が見つけていたのだが、まさか落とした張本人まで拾うことになるとは思いもしなかった。 
 いまはもう、翼よりも手元に置いておきたいものができた。
 袋の口を縛り、行ってくる、と玄関扉を開けてそとにでる。いってらっしゃい、とちいさく愛しい声が聞こえる。
 ヤナイはきっと僕を巻き込んだことでいくばくかの良心の呵責に苛んでいるはずだ。引け目を感じて、自由の身になれたとしても、僕の元から去ることはないだろう。
 僕を逃がさぬように一計を案じて、ヤナイが巧みに嘘を吐かずに済むように振る舞っていたことを僕はもちろん知っている。
 僕の拾った翼は淀んでいなかった。ヤナイが僕にそうしてみせてくれたように、嘘を吐いたり、何か腐り落ちてしまうようなきっかけでもげたのではない。
 同族に負わされた傷が元で、剥がれ落ちたのだ。
 ヤナイは元からフフラには戻れなかった。居場所がなかった。追われた存在なのだ。
 堕天使、と僕は内心でつぶやく。
 居場所を求めてさまよい、運よく掴んだ藁をけして離さぬように、求めあうように、貪りあうように、ヤナイは僕のまえで立ち回り、見事に、僕の関心を引いて、この身に楔を打ちこんだ。
 僕はヤナイから伸びる鎖にがんじがらめに縛られたけれど、僕にしてみれば、そうなるように僕のほうこそ望んでいたというよりない。
 僕はどうあっても翼をヤナイに返すつもりはなかったし、この事実を告げる予定もない。ヤナイは日に日によすがと化す僕への情を分厚くしながら、僕への罪悪感に蝕まれていく。
 鎖は錆び、ほどくことすら適わぬ堅牢な錠となるだろう。
 網に入ったサッカーボールを蹴飛ばして歩く小学生が目のまえをよこぎる。僕はそれを真似て、うつくしい、きれいな翼の入ったゴミ袋を、ぶんぶんと振り回す。ゴミ収集所に辿り着くずいぶん前の位置から、ソフトボール投げの要領で、ゴミ袋を投擲し、ゴミの山にそれが埋もれたのを目にしてから、ケーキを買うべく駅まえへと歩を向ける。
 僕は翼が生えたようにスキップをする。
 胸の躍る日々がこれからはずっとつづく。僕にはそれを手放すつもりが皆目微塵も、毛ほどもない。
推敲は後日します。半年は寝かせてからしたいと思います。
Latest / 201:37
文字サイズ
向き
もげた翼を投げないで
初公開日: 2021年01月20日
最終更新日: 2021年01月22日
ブックマーク
スキ!
チャットコメント表示
2021/01/20
ショートショート
もげた翼を投げないで
グッ・ド・ラッグ
2021/01/25ショートショート グッ・ド・ラック
郁菱万
はいブリっと
2021/01/26ショートショート はいブリっと
郁菱万
いつもので
2021/01/22ショートショート いつもので
郁菱万
満天の星と恋の光 12
現パロ中学生煉義8月編12話沢登り開始です。ネタがどんどん増えて終わりませんでした_| ̄|○
オバ
不要な傷痕
フライングワンライ第2回レオ監で『寒空』
糸屑
2020/07/05ワンドロ「ボールマン」
ほんとに一時間で書いてるんだぜとせっかくなので挑戦してみた跡地。今回はスマホで挑戦したし見切り発車だ…