目を覚ますと痛いのは消えていた。
 目の前には金色の獣。天を仰ぎ大口を開けている。そうだ、おれはこの獣に救われたのだ。
 痛いのが消えた身体は、翼も消えていた。身体はこの獣の後を追おうとする。おれはそれに従う。身体が命ずるまま、おれは従う。
 痛いのは消えていたが、腹はいつでも減っていた。だが身体は食べることを求めない。だからおれはそれに従う。
 金色の獣はときどきおれに肉を寄越した。暴れる肉袋に噛み付けば、みな動かなくなった。滴る血をうまいうまいと啜れば、金色の獣が鳴いた。
 「全く。品性ない食べ方じゃのう」
 この獣はよく鳴く。意味は知らぬ。
 『殺せ』『儂を煩わせるな、愚図め』『その穢らわしい身体で近付くな、土人形』
 あとは。
 『好い』『ようやった』『ヤス』
 この辺りは耳障りがよい。従うまま血肉を啜り思う。
 今日は見馴れぬ獣が居た。金色の獣に似ているが、纏う臭いは虫だと思った。
 その虫が去ったあと、獣の姿を追う。獣が覗き込むものを、おれも覗き込む。黒い小さな鳥が居た。色は黒だが、これはおれの仲間じゃない。
 「オドレの食いんじゃのうて」
 獣は鳴いて箱に座った。おれは腹が減っていたので手の中の肉塊に噛み付いた。
 ちち、と鳥が鳴く。意味は知らぬ。
 「……好い」
 獣が鳴く。耳障りのいいあの鳴き声だ。
 だが何故だ。今日は何かが違う。黒い鳥を見れば、嚥下した血肉が収まる腹の底がぐうと唸る。
 「なんじゃ、儂の真似事か? オドレに音を愉しむ知性など無いじゃろうて」
 その夜は不思議なことに身体がおれに従った。
 籠の前に立ち、中を覗き込めば鳥はちち、と鳴いた。また身体の奥底で唸りがあがる。それがおれを動かして、阻む鉄枠に手をかけて引きちぎった。
 体を潰さぬよう捕まえようとすれば、手の中をするりと逃げた。咄嗟に掴めば翼がもげた、足がもげた。
 床を這うそれを捕まえれば、小さな嘴を大きく広げてぎゃぎゃと鳴いた。顔を覗き込めば喉の奥がよく見える。
 その体に噛み付く。口に広がる味は何故か忌々しくて、早々に腹底へ収めようと呑み込んだ。
 顔をあげれば金色の獣が居た。おれを見ている。
 血肉となったそれが喉を滑り落ちていく感覚に、おれは一つ思い出したことがあった。ここは食うためだけの場所ではなかったと。
 息を吸い込み、喉を震わす。色んな歌を覚えていた気がするが、出てきたのは昼間聞いた歌だ。
 意味は知らぬ。だが、アイツよりも『好い』だろう。
 さあ、さあ、とおれは獣を見る。その手が迫る。
 「……こんの、阿呆が!!」
 頭に伝う衝撃と共に放たれた鳴き声は初めて聞いた。耳障りだと初めて思う。聞いていたくない。
 「これは、面倒なことになったわ……」
 身体が動くなというので、おれはそれに従う。
 どうしてこうなったのか分からぬと、天井を見上げていた。
Latest / 67:57
文字サイズ
きょんしーパロ 没
初公開日: 2020年10月06日
最終更新日: 2020年09月29日
ブックマーク
スキ!
チャットコメント表示
一番初めに書いたきょんしーパロの🍱目線のお話でした
やっちゃじゃねえなあって思って没ったやつです
おとぎ話風にかいてみたいおとぎ話パロ
まさかのつるふしに衝動のまま書いてみました。憧れだけでおとぎ話風に書いたのでぐでんぐでんです!! 続…
tometa
神庭の番人のつづき
遅筆なので、ぽち…ぽち…と書いてると思います。
すてら
20201128フェイジュニ
20201128フェイジュニワンライ6回目「休日」「ぬいぐるみ」
みつき