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「お前、あの娘のことを好いているのか」
ハイどーもぉ、みんなのアイドル志摩くんですえ。お家の本尊・夜魔徳くんに選ばれし黒い炎の使い手として騎士團とイルミナティの公認二重スパイとして絶賛大活躍中です。今は新しい日課の早朝ランニングの真っ最中。コツコツ真面目に頑張る俺も、なかなかカッコええ思うやろ?
ほんでさっきのどこぞのドアホみたいな発言の主こそ、夜魔徳くんこと仏教系上級悪魔大威徳明王夜魔徳、その御方でございます。
「……え、え? 夜魔徳くん? どうしたん急に」
「呼び出すだけ呼び出しておいて何もすることがないから、暇で仕方がないのだ」
スパイは体力勝負やし、夜魔徳くんがちゃんと扱えんと話にもならんから、最近ランニング出るときは夜魔徳くんを小さく召喚したまま出るようにした。ほら低酸素トレーニングみたいな感じ? ついでに夜魔徳くんとお話する時間も増えたらお互い理解が深まってええんちゃうかな〜思てたんやけど、そっか、暇やったんやね……。ていうかこのビックリ発言でも足止めんかった俺偉い。スパイたるもの、揺さぶりに乗ったらあかんよね。
「で、どうなのだ」
「怒らんと聞いてほしいんやけど、夜魔徳くん言うとることが金兄とおんなじやで」
「貴様らはこの手の話が好きだろう。特にお前は普段から女子が好きだ好きだと言っているではないか」
貴様『ら』? もしかして今までの継承者ともこんな話してきたん? 夜魔徳くんと恋バナ? マジで?
「えっ、ちなみに『あの娘』いうのは…」
「神木出雲と言ったか、あの白狐を連れた娘だ」
やっぱりね、出雲ちゃんね、うん。
「そりゃ好きやよ。かわええ女の子はみ〜んな大好き♡」
「そういうことではない。嫁にしたいのかと聞いている」
「よッ……!?」
あぶな、ちょっと動揺してもた。
「いや〜嫁とかなんとか、俺には早いやん? まだ16歳やで俺。ピュアッピュアの青春かてまだこれからやのに」
「ではその『ピュアッピュアの青春』とやらをしたいのか、神木出雲と」
「えっ……!? とぉ!? どうしたん? なんかいやなことあった?」
「まどろっこしいな、貴様はどうしたいのだ。あの娘とどうなりたいか、考えていないのか」
「かんがえて……、ない、わけではない……と思いますけど……」
沈黙。自分が走っとる音がめっちゃ重そうに聞こえる。俺基本的に沈黙苦手やねんけど、夜魔徳くん相手やったらなんか平気、な、はずなんやけど、今日のは無理。ほんま無理。なんでこんなグイグイ来んの?
「……冷静に考えて、どうこうなるとか無理やん?」
俺と出雲ちゃんが。今さら。
「俺めちゃくちゃ酷いことしたし、ていうか、多分これからもするし、謝ってすむことやないし、ていうか謝るべきでもないっちゅうか」
「くだらんな。そんなことをぐだぐだと考えているうちにすぐ他に取られるぞ」
「エッ!? 他てなに!? 俺の出雲ちゃんを狙ってる奴が居てるいうこと!?」
「狙っているかどうかはさておき、あの若座主とはいい感じなのではないか?」
「は!? 坊!? なんで!?」
「ああいう喧嘩しがちな間柄こそ収まるときは早いぞ」
お前の兄を思い出せ、なんて言われてもうたらもう言い返す気力もなくなった。これでも走るのやめんのはもう意地や、なに言われても走り続けたるわ。あれっもしかしてこれ効率的なスパイ訓練かなんか?
「うーん、坊やったらまあ、しょうがないっていうか、敵わんっていうか……」
「譲るのか?」
「譲るっていうか、ほんまに付き合いたいとか、一緒におりたいとか、まあできたらそりゃ嬉しいけど、うーん、正直自信ないいうか……」
今まで誰にも頼れずに一人で頑張ってきた出雲ちゃんを、支えてあげるとか、頼ってもらうとか、そういうのは多分俺には無理。俺がどんだけしてあげたくても、俺が出雲ちゃんを裏切って傷つけた事実は変わらんし。
「あの子が幸せになるんやったら、別に俺とやなくてもええねん」
どの口が言うねんて感じやけどね、と笑ってみたら、思ったよりも情けない声が出てもうた。気がする。
「まったく貴様は……」
横から夜魔徳くんの大きなため息が聞こえた。えっ、夜魔徳くんため息とかつくんや?
「何を悩んでいるかと思ったらそんなみみっちいことを」
「みみっちい!? 俺なりに真剣に悩んでるつもりやったんですけど!?」
「自分が幸せにしてやるくらいのことを言ってみたらどうだ。情勢なんぞいくらでも変わる。せっかく大きな渦に巻き込まれているのだ。利用してやれ」
「いやっ、だから俺がそんなんできる立場やないって……」
「立場だの自信だのどうでもよい。我は自分を使役する者がそんな弱気な態度でいることが気に食わないのだ。この夜魔徳を従えているのなら好いた女の一人や二人手に入れてみせろ」
もう言うてることめちゃくちゃや。俺に発破かけてるつもりなんか知らんけどやり方が斜め上すぎる。
でもそうやね、俺は大威徳明王夜魔徳に選ばれし黒い炎の使い手や。騎士團とイルミナティの公認二重スパイとして絶賛大活躍中なんや。ちょっとくらい、わがまま言うても許されたりするかな。
あの子に頼ってもらえるようになりたいて、思ってもええかな。
「あーっ! もう! めっちゃ青春くさいやん!」
「はは、男になれ、廉造」
夜魔徳くんがいつになく楽しそうに笑う。
熱くなった顔をちょっとでも冷やしたくて、早朝の空気を切るように走るスピードを上げた。
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