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 その日の夜は、満月が輝き、穏やかな風が髪を撫でている、まさに平和の象徴のような夜だった。更に、元音柱、宇髄天元によって開かれた竈門炭治郎と冨岡義勇の結婚祝い――正確には違うが、恋仲となったのは事実だ――によって賑わっていて、幸せを実感できるような夜でもある。美味しい食事やお酒を飲んで、決戦後、久しぶりに顔を合わせた人とも話して。鬼の居なくなった今では夜に刀を握り走り回る必要も無いので、こうした宴らしいこともできるのだ。
「恋仲かぁ。竈門ぉ、ちゃんと冨岡の面倒見てやれよ~?」
「もちろんです! 俺に任せてください!」
「……俺はそこまで子供じゃない」
 宇髄が炭治郎を茶化すと、隣に座っていた義勇が不満げに頬を膨らませた。だが口元に鮭大根が付いている時点で少々、いやかなり説得力が無い。そんな義勇に炭治郎は甲斐甲斐しくその頬を手拭いで拭いてやっていた。全く、これではどちらが年上なのかわからなくなってしまう。
「うぅっ、良かったなぁ、冨岡……炭治郎も、冨岡泣かせちゃ駄目だからな……ズビッ」
「何故お前が泣くんだ村田……」
 向かい側の席に座っていた村田は、今まで関わりは無かったものの同期として義勇を意識していたので、思わず涙ぐむ。酒が入っているからだろうか。もう完全に号泣の域で、今にも義勇の腕にすがり付かんばかりだ。だが、人の恋人だという理性がそんな村田を阻止していた。
「義勇さんも、飲み過ぎじゃないですか? お酒、あんまり強くなかった気がするんですけど……」
「俺は酔ってない……」
 そうは言われたが、スンと鼻を嗅ぐと酒特有の匂いが鼻先を掠めた。これは相当だ、と察した炭治郎は酔った義勇が何を仕出かすかわからないのを知っている為、手を引いて立ち上がる。
「少し、夜風に当たりません?」
「んん~……」
「おっ、いいねぇ。この機会に恋人同士派手に仲良くしてろ」
「そ、そんなことしないですよ!」
 必死で反論しても今だクックッと愉快そうに笑う宇髄と、まだ号泣している村田に背を向けて、義勇を引っ張り縁側に出る。音柱邸の庭は彼の性格に合って派手で、それでいて夜は美しく雰囲気を感じられるような庭だ。嫁が三人いるのだから、きっとそこにも配慮しているのだろう。宴の場所から少し離れると、虫の鳴く声や葉が擦れる音やらがよく聞こえてきた。思わずそういう雰囲気になってしまいそうだが、あくまでここは他人の家。炭治郎は義勇を座らせて、その横に自身も腰掛けた。
「昼は暑いとはいえ、夜になると涼しいですね」
 酒に酔いほのかに顔を赤くさせた義勇はコクりと頷く。その妙に幼い仕草が可愛くて、心臓が跳ねるのを自覚した。
「炭治郎……」
どうしました? 義勇さん」
 こちらを見つめる、月光に照らされ更に白い肌が映え美しく見える義勇。それなのにこんな色っぽい声を出せるんだから、その違いに酒を飲んでいない炭治郎も頬が赤くなっていくのを感じた。
「……キス、したい」
「っ……!!」
 何時にもなく積極的な義勇に、ドキドキと鼓動が鳴り止まない。そのまま二人自然と顔を近付けあっていき、ついに、その唇がお互いに重なった。少し目を開けてみると月光を浴びるその人の表情が間近で見れて、夢中になってチュッチュと何度も口づけをした。いわゆるバードキスだ。何回もそのようにキスをし合って、もう一度、と義勇の腰に手を回したとき、風に吹かれて嗅ぎ覚えのある匂いが鼻先を掠めた。それと同時に視界のすみに映る何か。何だろうと視線を反らして――炭治郎は次の瞬間恥ずかしさでどうかなりそうになった。
「お、竈門、もう帰んのか?」
「はぃ……」
 宴に戻ると、宇髄はニヤニヤして二人を見やった。正確には二人と……炭治郎の持った風呂敷を。あのとき視界のすみに置かれていた物は、恋人同士の夜に使うようなモノであった。それもかなり上等な。その手に疎い炭治郎と義勇には嬉しいものであるが、流石に恥ずかしすぎる。義勇は酒に酔っていてそれどころでは無いらしいが、きっと酔いが覚めれば炭治郎と同じだろう。
 二人は手を繋いで音柱邸を出る。月は空の真ん中に浮かんでいたが、二人の夜はまだまだこれからであった。
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17:39
皐月May
こんばんは〜、皐月Mayです!
18:39
煮込みひじき
こんばんは~!来てくれて嬉しいです!!
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炭義ワンドロワンライ書く
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