*設定メモ*
・DOUBT:ダウト。疑い、疑惑。
・風原ナギト:22歳男、黒人アメリカと日本人のハーフ。
・穂波レン:ナギトと同年齢の男、中学からの同級生。
*本編*
「いらっしゃーい」
人当たりの良い笑みで出迎えた穂波レンに対し、
風原ナギトは無愛想のまま、手に持っていたビニール袋を差し出す。
「ビールとポテチでよかったよな」
「そうそう! いやあ助かるわー」
「お前さ、この家、コンビニから五分の距離だろ。自分で行けっつーの」
「どうせ来る予定だったろ? ナギくんなら変なもの買ってこないだろうし」
「気色悪ぃ呼び方すんな」
レンはナギトから袋を受け取ると、家に上がるよう促す。
ナギトも慣れた様子で玄関に入った。
ここは都心に近い、住宅街の一角にある、二階建ての一軒家。
一般的に見れば、家族で暮らしているのだろうと思われるようなでかい家なのだが。
穂波レンは、ここに一人で暮らしている。
その理由は、今からひと月前にさかのぼる。
といっても多く語れることはない。
ただ、宝くじに当たった、ということだけだ。
なにかを補足するのなら、レンには親しい家族がいない。
友人関係は多い方だっただろう。
だが、宝くじに当たった日から、
レンはナギトを除いたほとんどの友人から『自主的に離れた』。
「しっかし、でけぇ家だな」
「良いだろう? 泊まってもいいぜ」
「やめとく、なんか落ち着かねえし」
「あー、狭いところが好きなのねー……猫かな」
猫だったら黒猫? キジ猫かな?
そんなことを呟きながら、レンはビールを冷蔵庫に入れる。
この一軒家をレンが購入したのは、一週間前。
宝くじで当てた金で購入したと言うが、
当てた額がいくらなのか、ナギトも知りはしない。
興味もさほどなかった為、気にしたことはなかったのだが。
「こんなでけぇ家、よく買えたな」
「まあねー」
レンはそれ以上語る気はないようで、
ナギトもこれ以上は何も聞かなかった。
時刻は午後八時。
十月も半ばにきているこの時期の午後八時は、道もすっかり暗くなっている。
ナギトがこんな時間に来たのは、レンに呼び出されたからだった。
「で、何?」
「ん? 何が」
「お前が呼び出したんだろ……」
「……ああ! そうだったわ、ごめんごめん」
ナギトがため息を吐いている間に、
レンはテーブルの上に置きっぱなしにされていたパッケージを手に取る。
ゲームソフトのパッケージ、
その表紙には『大乱戦 スカッとガールズ』と書かれている。
「最近人気の、スカガルです」
レンは嬉々とした表情でナギトを見る。
どうやら、このゲームをやりたいらしい。
「格ゲーだっけ? 俺苦手なんだけど」
「大丈夫、俺、格ゲーとかやったことない」
「なんで買ったんだよ……」
「中古屋でな、ソフト五本で千円ぽっきり、ってやってたんだよ!」
安すぎないか、ナギトは不安な気持ちになったが。
『大乱戦 スカッとガールズ』は5作もシリーズが続いている、人気作だ。
その他、テーブルに残されている変なソフトに比べれば、
幾分か楽しめる部類に入るだろう。
「やろうぜ! お前のコントローラーこっちね」
「……マジで泊まる流れ? 着替えとか持ってきてねーんだけど」
「俺の使っていいよー」
「嫌だから。これ着て寝るか……仕方ねえなあ」
「乙女だなあナギくんは」
苦笑するレンの頭をひっぱたいてから、ナギトは渋々コントローラーを受け取った。
ソフトをゲーム機に差し込み、起動する。
電源を入れ、しばらくの操作の後、ゲーム画面が表示される。
「……これ、本当にスカガルか?」
「そ、そのはずなんだけどなあ……」
画面には『乙女超恋確信 ラブ☆ギャラ』と表示されている。
数秒ほどタイトル画面で呆けていると、
明らかにゲームジャンルの違うキャラクターが次々と現れては消えていく、
オープニング映像が流れ始めた。
「どう見てもスカガルじゃねーだろこれ!」
「五本で五千円は、やっぱ何かあるよなあ」
「……帰っていいか?」
「だめだから、やるよほら!」
ナギトを強引に座らされながら、レンはコントローラーのボタンを押す。
それと同時に聞こえる、男性声優の囁く「ゲームスタート」という言葉。
「うわ、ごめん今鳥肌立った」
「知るか」
*****
それから、三十分は楽しく遊ぶ努力をしただろう。
しかし三十分経った頃になって、
二人はようやくこのゲームの趣旨を理解する。
『キミが好きだ……!』
『マコトくん……!!』
ゲーム画面では、今まさに女性主人公の目の前で。
男性キャラクターが女性キャラクターと結ばれるところだった。
「これ、いわゆるギャルゲーって奴?」
「今更、つーか逆だから」
「え、ギャルゲーの逆ってなんていうの?」
「乙女ゲー」
女性主人公の手には、刃物が握られている。
その刃物は、女性キャラクターに向かって振り下ろされ……
ENDの文字が表示された。
「こわっ!! なに、主人公ちゃんサイコパスだったの!?」
「女は何考えてるかわかんねーからな」
「いや、だからってこれはない! ないから!!」
「ひっつくな」
ナギトの片腕に抱きつき、
恐怖を振り払うように「ないない!」を連呼するレン。
ナギトは深くため息を吐いてから、腕を振り払おうとしたが、
あまりの力強さに振り払えなかった。
「ってかさあ、男の方もやばいだろ! こんな主人公相手に二股とかさ!」
「まあな……」
「ナギト、よく乙女ゲーって単語知ってるね。乙女ゲーって全部こんななの?」
「いくつかやってるけど、ここまで酷いのはレアだろ」
レンは「ふーん」と呟きながら、ナギトの片腕を離す。
そして遺影のように画面に浮き出た男性キャラクターの画像を指差しながら、言った。
「そういやお前、男はいけたよな・・・・・・・? そういう目的で乙女ゲーやってんの?」
「はあ? ちげーよ」
ナギトはいらつくような強い口調で言葉を返した。
だがレンは臆する様子もなく、一度だけ小首を傾げてから言葉を続ける。
「リアルと二次元は違うってやつ?」
「男だったら誰でもいいわけじゃねえよ……」
「好みの男だったらどっちでもいいの?」
「うるせえ黙れ」
話を無理やり終わらせるために、ナギトは立ち上がりキッチンへと向かった。
コップに水を注ぎ、一気に飲み干す。
ナギトにとって、先程のような話は苦手な話題だ
った。
その手の話題が出る度に、まるで偏見の目に晒されているような錯覚がしたから。
レンはそのことを知っているはずだと、ナギトは思っていた。
水を飲み干したナギトの後ろに、レンがやってきて言った。
「やっぱ嫌だった?」
「知ってるなら振るな」
「なんで嫌なの。俺、そこら辺の奴とちょっと違うの、わかってるよな?」
「性格のことを言っているのなら、わかってる」
「なら、俺がそこら辺の奴と同じ次元で話してないって、わかるよな」
「お前はそうだろうな。だけど俺は違う、そこら辺の奴と同じ考え方をしてる」
「そうは見えないけどな」
こんな、口論にも似た会話は、今までにも何度かあった。
しかも会話のほとんどが、二人の間でしか通じない言葉であり、曖昧な言い方をしている。
それなのに、二人の間では会話が成り立っていた。
「俺、違うことはわかるけど、そこら辺の奴が考える次元はわからないから。言葉にしてくれないとわからん」
ナギトは、レンの言いたいことがわかっていた。
どうして恋愛関係の話題を嫌うのか、ということを聞いているのだ。
だがナギトの答えは、言葉にするのも億劫だが。
好奇の目で見られたくない、その一点だけだった。
レンに限って、そんなことはないと思いつつも、疑っている。
>本日の配信はここまで、
 ご視聴ありがとうございました。
Latest / 97:01
21:10
コヤツ
テストでマイク配信しています、なにか不具合あればご報告ヨロシク
54:29
コヤツ
本日はマイクなしとなっています
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DOUBT(?) 1|オリジナルBL
初公開日: 2020年06月05日
最終更新日: 2020年06月09日
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オリジナルのBL小説になります、時系列はタイトルの番号順。
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オリジナルのBL小説になります。時系列はタイトルの番号順になっています。
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