オー晶♀
「賢者様」
 春の陽が差し込む中庭に、オーエンが姿を現す。
 吹き抜ける風は芝を掬って、まだ青いその香りを周囲に放った。
「オーエン、どうかしました?」
 晶はオーエンに笑いかける。
「別に」
 何か思うところがあって、声をかけたのではないのだろうか。
 晶は首を傾げた。
 拗ねたように、オーエンは目をそらす。
「あっ」
 そういえば。
 と、晶は手をたたいた。
「今日のおやつは、ネロの作ったマカロンですよ」
 オーエンも食べますよね?
 晶はまた、ふにゃっと笑って首を傾げた。
「食べないとでも思ってるの?」
 初めて出会った時は、それなりに恐怖していたくせに。
 今となっては恐るどころか、笑顔を向けてくる彼女に、ちょっとした嫌がらせのつもりで、オーエンは言った。
「食べるんですね?」
「…食べる」
 けれども彼女は、笑顔を絶やすことはなく。
 変な人。
 オーエンはそう思いながら、晶を置いて姿を消す。
 
「早く来なよ、賢者様。僕が全部食べちゃうから」
「あっ」
 晶が気がついた時には、もう遅かった。
 恐らく、もうネロのところへ行っているのだろう。
 強くて、恐ろしい、北の魔法使い。
 けれどもその実は、もう少し可愛げのあるもののように思う。
 オーエンもそうだ。
「…私も行かなきゃ!」
 おやつを食べられてしまう。
 晶は立ち上がって、食堂へと向かった。
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まほやく【二次創作】ワンライ書くよ
初公開日: 2020年04月24日
最終更新日: 2020年04月24日
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ワンライ書きます
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百合小説、ファンタジー、一部のみ成人向け描写が入る予定
木谷 凜
2話目更に続き
そろそろ終わる予定だったけどまだ終わらなかった