【トレーラー】
1993年7月12日の日めくりカレンダー。
閉じる者がいない玄関ドア。
細い月よりも淡く光る霧。
圏外で再生し続ける動画が僕らの頼り。
海からなにかがこちらを見ている。
だから、この村から出られないのだ。
インセイン「わだつみさま」
【シナリオ情報】
シナリオタイプ:協力型
ワールドセッティング:本当は怖い現代日本
プレイヤー人数:2人から4人
リミット:プレイヤー人数に応じて可変(2~4サイクル)
ここから先はGM情報となります。
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【シナリオの舞台】
このシナリオは、「本当は怖い現代日本」のセッティングを使用します。
PCたちは動画視聴をきっかけに、同一の時間を繰り返す空間に囚われてしまいます。その異空間から脱出するには、異空間内の時間を操作し、繰り返す原因を突きとめて破壊する必要がありました。
PCたちの正気が失われる前に、この世界から逃れることはできるでしょうか。
シーン表は、オリジナルシーン表『霧に包まれた村シーン表』を使用してください。
【シナリオ背景】
<PCたちが置かれている状況>
彼らは廃村探索動画の視聴をきっかけに、異空間にある廃村──水帰村に囚われます。この村は過去に起きた惨劇のため、深淵に眠るもの(インセインp261参照)の思念を強く受けていました。
水帰村は現実世界と異空間それぞれに存在します。現実世界の水帰村は人が誰も住んでいない廃村です。異空間の水帰村は、限られた4日間をループしています。PCたちは動画のシークバーを動かすことによって、異空間の水帰村の時間を操作することが可能です。
なお、PCたち以外にも、この動画を視聴することにより目覚めない悪夢に囚われてしまった被害者は多く存在します。彼らは深淵に眠るものに精神を奪われてしまったため、水帰村でその姿を見ることはありません。
PCたちが異空間から脱出するためには、そこに残された深淵に眠るものを模した像を破壊し、村を思念から解放する必要があります。
この脱出方法は、PCたちとは別の手段で異空間に入り込んだ黒服の男が伝えます。彼は人類の理を超越した者です。本シナリオ内で彼の正体は決まっていないため、GMの好みで決めてしまいましょう。男はPCたちの状況を説明した後、惨劇を迎えた後の時間帯に残り、動画視聴をしながら高見の見物を決め込みます。
像の破壊に成功した場合、異空間は解放され被害者たちの精神は戻ってきます。しかし、現実世界にある廃村の過去は変わらず、惨劇により滅んだままとなります。
<水帰村を襲った惨劇>
この異空間は水帰村と呼ばれた漁村でした。古くから漁業によって成り立つ小さな村です。
そして、水帰村近辺の海域には魚人たちのコロニーがありました。彼らは村人から"海の鬼"と呼ばれ、村人と交易を行っていました。村人たちが持つ陸の品と、海の鬼たちが持つ魚を呼ぶ呪いや宝飾品との交換です。また、村長一族との異種交配も行われていました。
深淵に眠るものは海の鬼の信仰対象であり、畏怖する存在です。このコロニーの海の鬼たちは深淵に眠るものが目覚めないほうが都合が良いとすら思っています。水帰村の村民は信仰していないため、それらに関する知識はありません。
このような環境で成り立っていた水帰村において。1993年7月初旬、村外から異様な集団がやってきました。彼らの目的は深淵に眠るものに接触し、高次元へと連れて行ってもらうことです。
その集団が深淵に眠るものを模した像を媒体に接触の儀式を行った結果、深淵に眠るものが目覚めることはなかったものの、その精神体(名をビーモスと呼びます)が水帰村に降臨してしまいます。精神体を制御する術はなく、村人も海の鬼も呼び出した集団さえ、精神を支配され、死へと向かいました。
こうして、水帰村は廃村となりました。また、惨劇を繰り返す異空間が生まれ、動画を介して被害者を生み出し続けています。
【狂気】
本シナリオの【狂気】は、参加するプレイヤー数×4枚となります。GMは好きな狂気を選び、山札を準備してください。
【プレイヤー数によるシナリオ調整】
<PCハンドアウトの決定>
参加するPLの人数が少ない場合、PC番号が少ない方から順に使用してください。
<リミット数>
本シナリオはPL人数によってリミットが決まります。
PL2人の場合は4サイクル、PL3人の場合は3サイクル、PL4人の場合は2サイクルです。
<エネミーデータの調整>
PL数に応じて強さを調整することを推奨します。詳しくは、【クライマックスフェイズ】の項目を読んでください。
【導入フェイズ】
シーン1 青白い霧
このシーンはマスターシーンとなります。PCは全員登場ですが、PC同士に面識がない場合は個別演出となります。GMはPCたちが動画を再生した結果、青白い霧に包まれ、気づいたら廃村の中に立っていたシーンを演出します。その後、PC全員で恐怖判定をさせてください。
<描写例>
『水帰村探索』と題された薄暗いサムネイル。あなたはふとした気まぐれから、その動画を再生する。
シークバーはすぐに末端まで張り付いてしまった。それでも動画は再生し続け、手持ちカメラからの映像が海岸から村の関所へと移動していく。
アスファルトが剥がれた道の伸びた先、村の外が映る。青白い霧が立ち込めていた。あまりにも濃い霧は壁のように村を囲い、その先がどうなっているのか窺い知ることはできない。視聴するあなたの足下を冷気が触る。
霧が撮影者まで迫ってきた。映像は乱暴に左右へと揺れ、やがて取り落とされてしまう。それからは、霧を振り払っていると思わしき音だけが聞こえてくる。その音もだんだんと小さくなっていき、最後に重いものが倒れる音がした。
あなたはここでようやく、自分の部屋に風が吹いていることに気づく。動画から目を離せば、動画内と似たような霧が。奇妙に白や、青、緑、黄色に陰鬱に輝きながらあなたの部屋の中で渦を巻いていた。
霧はあなたの体中を凍てつく不気味な感覚で覆いつくし、手元すら見えなくする。寒いだけではない。総毛立つ体の毛穴から、霧が体内へと入っていくような、今まで経験もしたこともない感触をあなたは受ける。最後、窓に細長く異様な影が見えた。
そして、視界は霧に埋め尽くされると同時に、体から力が抜けた。
再び戻ってきた視界は、明かりがない夜と人間(他PC)を映しだす。濃い磯の臭いと足下から伝わる岩の感触。それらは動画よりもはるかに現実的に、あなたが海岸にいることを知らしめた。
シーン2 4日目夜
このシーンはマスターシーンとなります。PCは全員登場です。PCたちが自己紹介をし終わった辺りで、黒い服を着た男が現れます。彼は動画のシークバーと村の時間が同期していることを伝えます。
演出後、初期ハンドアウト「1日目昼」「2日目昼」「3日目夜」「黒服の男」を公開し、導入フェイズを終了します。
また、PLがインセインに不慣れな場合は、ハンドアウトさえ調査判定すればゾーキングをせずとも脱出できることを伝えましょう。
<描写例>
あなた達の元に何者かが歩いてきた。やせた体躯に奇妙なお面をつけた男だ。彼は携帯を持ち、動画を再生している。
「この動画、シークバーがぜんぜん思い通りに動いてくんないだよね。試してみた? 理屈はよくわかんないけど、再生時間とこの空間の時間は同期してるみたいだよ」
「自分? 自分は君たちとおんなじ。面白そうな動画を見ようと思ったら、変な空間に閉じ込められちゃった。ま、出方わかるんだけど」
「自分は飽きたらいつでも脱出できるからさ、この時間帯で動画見ながら君たちの頑張りを視聴してるよ。まずは、村観光してみたらどう? 動画の冒頭なら、この村も人がいるんじゃないかな」
あなた達がシークバーを動かすと、視界がブレて赤いノイズで埋め尽くされる。
そして、ノイズが止み視界が回復してみれば、眩しい日差しが差し込んだ。海岸は明るさと人気を取り戻し、前時代の服を着た村人が胡乱な目であなた達と携帯電話を見る。
……どうやら、あの男の言う通り。動画の再生時間とここの時間は同期しているようだ。
【メインフェイズ】
本シナリオのメインフェイズでは、マスターシーンは発生しません。
【ゾーキング】
ここでは水帰村の時間軸に沿いながら状況を記述します。
なお、海の鬼たちは昼間現れません。夜の海岸に出現します。彼らはPCたちに危害を加えるつもりがありません。
・1日目昼
水帰村の村民はPC達のことをさほど訝しんでいない。なぜなら、昨夜もっと異様な集団が村を訪れたからだ。
揃いの服を着た彼らは、村の事情を探ろうとしては失敗している。村民はできるだけ彼らと関わらないような態度を取っていた。
・1日目夜
村民は自宅で思い思いの時間を過ごしていて、出歩くものはいない。それを良いことに、例の集団は村にある集会所を占拠し宿泊しようとしていた。
・2日目昼
集会所が占拠されていることに村民が気づき、不安を募らせている。
・2日目夜
例の集団が集会所にて作戦会議を行っている。役場に押しかけ、深淵に眠るものと接触するための手段を探すようだ。(ハンドアウト「3日目昼」の概要を参照のこと)
・3日目昼
海が荒れ始めている。役場と例の集団が口論になっていて、村中の人間が様子を伺っている状態だ。
・3日目夜
指導者の男により、深淵に眠るものの精神体が降臨した。天地が荒れ、海の鬼は正気を失う。
村中の人間が海岸の異変に気が付き飛び出したが、もうどうしようもない。周囲は地獄絵図となった。(ハンドアウト「3日目夜」の秘密を参照のこと)
・4日目昼
この時間帯に時間を操作することはできない。
・4日目夜
PCたちが導入で村に訪れた時の時間帯。メインフェイズ開始後も黒服の男と話したければ、この時間帯に時間を操作する必要がある。
村の戸はすべて開け放たれ、夕飯の支度も途中であったことが伺える。海岸にあった漁師小屋や橋はすべて壊され、すっかり荒れ果てた状態だ。
ほぼ月も見えない深夜であるため、この時間帯では小島があることに気がつくことはできない。
【クライマックスフェイズ】
決められたサイクル数が全て経過すると、クライマックスフェイズが始まります。
PCたちは3日目の夕方にシークバーが動かせるようになったことに気が付きます。この時間帯なら、3日目の夜に行われる惨劇を止めることができるでしょう。
水帰村の小島に向かうと、指導者の男が社から深淵に眠るものを模した像を取り出している姿が見えます。周りには、誰もいません。
PCたちと指導者の男との戦闘が始まります。この戦闘では逃走判定を行うことはできません。
エネミーデータは「魔導師(インセインp244)」を使用してください。このとき、PL人数に応じてエネミーデータに調整を加えてしまっても構いません。たとえば、PL人数が4人であるならアビリティ【装甲】を修得する、PL人数が2人であるなら生命力を12にするなどして、調整しましょう。
また、3ラウンド目開始時、エネミー「深淵に眠るもの(インセインp261)」が戦闘乱入します。このエネミーはPCや他エネミーとバッティングしない位置にプロットしてください。
ただし、この戦闘乱入はハンドアウト「2日目夜」で海の鬼と協力を得ることができた場合、発生しません。
<戦闘終了条件>
①エネミー:指導者の男の生命力が0になる
②PC全員の生命力が0になる
どちらかの条件を満たすことで戦闘が終了します。
エネミー「深淵に眠るもの」は戦闘終了条件に関係ないため、生命力を0にする必要がありません。
【結末】
指導者の男を倒すことができれば、深淵に眠るものを模した像に接触することができます。この像を壊すことで、精神体の降臨を解くことができるでしょう。
気がつけば、そこは自分の部屋。奇妙な夢を見ていたと思うかもしれません。この体験を記憶するための行動をとらない限り、半日もすれば忘れてしまいます。
しかし、知り合った他PCたちと連絡先を交換していれば情報共有もできますし、新聞には原因不明の昏睡状態から目覚めた人がいると記事になっています。現実の水帰村に行けば、廃村であることは変わらずとも、社の直ぐ側に砕け散った像が残されていることでしょう。
あなた達は無事に呪いを解くことができたのです。
GMは各PC毎に結末を演出してください。
【シーン表】
霧に包まれた村シーン表(2d6)
2:村はずれの小島。小さな社の前に、苔むした岩が輪を描いて並んでいる。かがり火が昼夜問わずたかれていた。
3:港。漁師が出す小舟や海女さんが行う漁場がある。漁師小屋には見慣れない細工がされたもりが置いてあった。
4:村長の家。村長は首周りに手ぬぐいを巻いたずんぐりとした体格の男で、それなりな対応をしてくれる。
5:役場。資料室で、鬼言集と題された村の歴史書を見つけた。いくつかの巻が抜けていることを除いて、気になるところはない。
6:民家の近くを通る。聞こえてくるニュースは、今が1993年の7月であることを伝えてくる。
7:さざ波の音が聞こえる。その音は大きくなったり小さくなったり、ただただひたすら繰り返す。
8:民宿。主の大凪夫婦が、あなた達の相手をしながら素性を探ってくる。
9:集会所。粗末なつくりだが、村人全員を集めることができる程度の広さがある。
10:古い墓地。小さな村の共同墓地のためか、似たような苗字が多い。
11:村外れの家。大凪 遼と名乗る男性が一人で畑仕事をしている。変わり者なのだろうか。
12:深夜の室内。ドアをたたく音で目を覚ました。……あれはなんだ?ああ、窓に!窓に!
【ハンドアウト】
□PC1
使命
あなたはふとした気まぐれから、『水帰村探索』と題された動画を再生してしまう。
いわゆる、呪いの動画だったのだろうか。
気づけば見覚えがある村の中。同じような境遇の人と目が合った。
惨劇を繰り返す村から早急に出なければ、あなたの精神が持たないだろう。
あなたの【使命】は、水帰村から脱出することだ。
秘密
ショック:なし
あなたの親しい人は、数か月前から眠り続けている。
原因は不明。ただ、夢を見続けていることだけはわかっていた。
あなたがその人の足取りを辿ってみれば、水帰村と呼ばれた廃村に行きついた。
この村に原因があるのだろうか。
あなたの【本当の使命】は、その人を眠りから覚ますことだ。
□PC2
使命
あなたはふとした気まぐれから、『水帰村探索』と題された動画を再生してしまう。
いわゆる、呪いの動画だったのだろうか。
気づけば見覚えがある村の中。同じような境遇の人と目が合った。
惨劇を繰り返す村から早急に出なければ、あなたの精神が持たないだろう。
あなたの【使命】は、水帰村から脱出することだ。
秘密
ショック:なし
あなたは水帰村の血筋を引いている。
この村は過去に海の鬼と呼ばれる化け物と協力関係を結んだ。
あなたの先祖はそれを忌み嫌い、村を出た。
廃村になった理由も海の鬼のためだと言い伝えられている。
それは本当だろうか。
あなたの【本当の使命】は、水帰村で起きた惨劇を知ることだ。
□PC3
使命
あなたはふとした気まぐれから、『水帰村探索』と題された動画を再生してしまう。
いわゆる、呪いの動画だったのだろうか。
気づけば見覚えがある村の中。同じような境遇の人と目が合った。
惨劇を繰り返す村から早急に出なければ、あなたの精神が持たないだろう。
あなたの【使命】は、水帰村から脱出することだ。
秘密
ショック:全員
あなたはとある秘密結社に所属する魔術師だ。
結社の繁栄のため、もしくは、自分の知識欲を満たすため。
閉じた異空間と化した水帰村に行き、原因を持ち帰るつもりだ。
同時期に外部から人間(他PC)が来るとは思わなかったが……。仕方がないだろう。
あなたの【本当の使命】は、魔術的アーティファクトを持ち帰ることである。これは、破壊されていても構わない。
□PC4
使命
あなたはふとした気まぐれから、『水帰村探索』と題された動画を再生してしまう。
いわゆる、呪いの動画だったのだろうか。
気づけば見覚えがある村の中。同じような境遇の人と目が合った。
惨劇を繰り返す村から早急に出なければ、あなたの精神が持たないだろう。
あなたの【使命】は、水帰村から脱出することだ。
秘密
ショック:なし
あなたは酷い幻覚に悩まされている。
これは、クスリ・PTSD・毒キノコを食べてしまった・怨念など、原因は何でもよい。
この水帰村も、人々も、幻覚の一種なのだろうか。
体は動く、気分も良い。ならば、この幻覚にも乗って協力してやろう。
あなたは水帰村から脱出できた場合、元々持っていた幻覚が完治してもよい。
□1日目昼
概要
サムネイルは、おだやかな村の様子だ。
村人は外から来たあなた達を不思議そうな顔で見ながらも出迎えてくれた。
外部から人はほとんど来ないうえ、村から出ていく人間もいないそうだ。
秘密
ショック:なし
この村では4月末と10月末に祭儀が行われる。それは橋を渡った先の小島で開かれるそうだ。
今は祭りが行われていない時期だ。しかし、人口が少ない村にも関わらず、見張りの姿が見える。何かがそこにはあるのだろうか。
ハンドアウト「1日目夜」を公開する。
□2日目昼
概要
サムネイルは、揃いの服を着た人間たちが村の集会所を占拠している様子だ。1日目昼でも見かけていた人間たちだ。
彼らは水帰村の村人から何かを探ろうとしているようだが……。
秘密
ショック:なし
彼らは、世俗から離れ高次元を目指す人たちだ。個々の望みはバラバラであるため、決まった集団名を持たないらしい。
この村に高次元へ行く手段があるはずと探り続けているが、未だに良い情報は得られていない。
そんな集団の中にも指導者がいた。
ハンドアウト「3日目昼」「指導者の男」を公開する。
□3日目夜
概要
ほしがもえている。
秘密
ショック:全員
拡散情報。
曇った夜空に焼け焦げた雲が良く見えた。海上が真っ赤に、真っ青に、燃えているからである。
海岸には人間達が一心に仰向けになり奇妙な踊りをしている。海面より足を突き出し、懸命に月を蹴り上げている者もいた。灰色がかった猫背の人間のような者たちも、狂乱のあまり蠢いている。
暗澹たる中天より、さらに巨大なものが舞い降りてくる気配がした。
《終末》で恐怖判定。この恐怖判定では狂気カードを成功で1枚、失敗で2枚獲得する。
□黒服の男
使命
4日目夜に残って、PCたちを見物している男。積極的に助けてくれないが、脱出方法は教えてくれるらしい。
あなたの【使命】は、事の顛末を愉しく見届けることだ。
秘密
ショック:全員
動画に登場する「水帰村」では、過去に神との交信が行われている。その影響により村全体が異空間と化した。
既に多くの人間が村を訪れたり動画を視聴したりすることで、異空間に迷い込み、神に精神を奪われて消えている。
PCたちが脱出するためには、その交信で使われた偶像を破壊する必要がある。像を破壊することでこの空間が解放され、PCたちは自分たちの世界に戻ることができる。
そうすれば、神に精神を奪われた者も解放されるだろう。
□1日目夜
概要
サムネイルは、少ない街灯と出歩く人がいない村の様子だ。
カーテンから漏れる明かりが夜道を照らしている。
小島はかがり火がたかれていた。見張りはいないように見える。
秘密
ショック:怪異分野の特技を修得していないPC
小島には小さな社があり、その中には像が祭られていた。見たことがない意匠だ。
突如、前方の海から粘着質な水音が聞こえた。猫背姿の人間らしき者が、何体も海から上がってくる。
……今なら逃げ出すことも可能だろう。
シーンに登場したPCは、《深海》で恐怖判定。
ハンドアウト「2日目夜」を公開する。
□2日目夜
概要
サムネイルは、新月の夜空と海の荒れた様子を見せている。
波間からあなた達の様子をじっと伺う影が見えた。
明日の夜に村で起きることを話せば、海から現れた者とも会話が成り立つのだろうか。
秘密
ショック:全員
彼らが信仰する神は海底で眠っている状態だ。そして、運命の日が訪れた場合、正しき者だけが生き残ると信じている。
彼らはおののきの気持ちを持ってその日を待っている。その日が来ないことを願いながら。
このハンドアウトを調査判定したPCがハンドアウト「3日目夜」の【秘密】を獲得している場合、彼らの協力を得ることができる。
□3日目昼
概要
サムネイルは、村にいた集団と村長をはじめとした役場の人間が口論になっている様子だ。この村にある資料を全て見せろと迫っている。
村中の人間が気が気でないと見に来ている。
秘密
ショック:なし
この場に指導者の男がいないことに気が付く。彼は小島の警備を手薄にするために仲間を利用していた。
見張りも海の鬼も全てを切り殺し、社の前に立つ彼の姿が見える。
《切断》で恐怖判定。
□指導者の男
使命
四十歳前半の大柄な男性。
灰原 厳(はいばら げん)と呼ばれていた。
寡黙で不愛想な態度で、誰にでも接する。それは仲間たちも例外ではない。
あなたの【使命】は、高次元に向かうことだ。
秘密
ショック:情動分野の特技を【恐怖心】にしているPC
あなたには愛する女性がいたがこの世では失われてしまった。
もう一度会いたい。その一心で旅を続けるうち、いつの間にか仲間が増えた。
だが、あなたは誰にでも心を開くことはなかった。
あなたの【本当の使命】は、誰を犠牲にしてもまほらに行くことだ。
指導者の男のエネミーデータを公開する。
【あとがき】
異空間と化した廃村から脱出することをメインテーマに、動画による時間操作の概念を合わせたシナリオです。
時間を操作して探索を行うため、GM難易度もPL難易度も高そうに見えますが、実は調査判定さえしてれば問題なく結末を迎えることができる簡単なシナリオとなっています。
あと、クトゥルフ様を出したかったので書きました。
今回はあさき楽曲の「まほろば教」の影響を大いに受けています。癖が強い楽曲ですが、ぜひアルバムを買って聴いてみてくださいな!
面白かったとGMもPLも盛り上がってもらえるようなシナリオになっていれば幸いです!