最初の方はじぇいどさんとかとお話するふろいど
自分の部屋だかおうちだかに戻る
「ただいま~」
 部屋に入ると、フロイドは手に持っていたバッグを無造作に放り投げ、蒼い尾びれを閃かせながら真っ直ぐに大きな水槽を目指す。それなりに広さのある部屋を二分するように置かれている、天井まで高さのある透明な硝子で出来たその中には、フロイドが魔法で用意した赤い薔薇の花が美しく咲き誇っていた。ここに住む小さく美しい魚の為だけに用意した、永遠に枯れない薔薇園だ。水の中でゆらゆらと揺れるその薔薇の中に、ひとつだけ、少し色味の違う赤が混じっている。半透明の赤い生地がふわりと広がり、赤い薔薇を覆っていた。
「いい子にしてた?」
フロイドが呼び掛けても反応のない魚は、もしかすると眠っているのかもしれない。
「……なーんだ、寝てんのかあ」
上半身は何も身に着けておらず、真っ赤なシルク・オーガンジーの生地で出来た長い布がウェディングドレスのように広がっている。
「おかえり~って言ってくんねーの? オレ、金魚ちゃんと遊ぶために急いで帰ってきたんだけど」
 唇を突き出して拗ねたように不満を口にすると、小さな唇が、「おかえり」と音に出さず返してきた。
「ただいまあ、金魚ちゃん」
「金魚ちゃんも、オレたちみたいに尾びれ、つけてみる? 水の中だとこっちのが便利だし気持ちいいよぉ」
 リドルの両手を取り、髪と同じ二色に彩られた蒼い尾びれを閃かせながら、フロイドはまるでダンスをするようにその場でくるりと回った。一緒に回るリドルの腰に巻かれた赤い布も、大きくふわりと舞う。リドルは困惑するような眼でフロイドを見つめ、小さく首を振った。これ以上その身に何らかの魔法を掛けられたら本当にただの金魚にされてしまうと思ったのかもしれないと思い至り、それも良いかもしれないと少しだけ思う。フロイドの掌に収まってしまう程の、小さな、小さな、赤い金魚。両手で掬ってしまえば、愛でることも、握り潰してしまうことも、その気になれば食べてしまうことすら、人間の大きさのリドルよりも容易に出来てしまうだろう。――しかしそれはもはや、フロイドの惹かれた小さな金魚、リドル・ローズハートとは言えない。
「ははっ、冗談だよ。そんなことするわけないじゃん? ……オレねぇ、人間なのに金魚みたいな金魚ちゃんが好きなんだぁ」
 海に迎え入れられる代わりに声を失ってしまった、可哀想な美しい赤い魚。
頬を撫でると、何か言いたげに小さな唇がぱくぱくと開閉する。
悲しげな瞳が何かを訴えかけてきているようだ。
「駄目だよ金魚ちゃん、またあんなふうになりたいの~?」
 リドルの考えていることはわかりやすい。この表情をする時のリドルはいつも、ただただ『帰りたい』と訴えかけてくるのだ。けして叶えられる筈のない願いを何度も懇願してくる無言の瞳が、フロイドは気に食わない。
悲しげにゆらゆらと揺れる瞳が、やがて諦めたように閉じられた。泣いてしまうかもしれないと一瞬思ったが、その瞳から涙が流れることはなく、結局何を口にしようがリドルもここにいるしかないとわかっているのだ。哀れで愛らしいその唇に、そっとキスをした。
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twst/フロリド/1
初公開日: 2020年04月04日
最終更新日: 2020年04月04日
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テスト配信/遅筆の極み/めっちゃ短い雰囲気SS/配信は気が向いたら止めます
twst/フロリド/3_2
遅筆の極み/めっちゃ短い雰囲気SS/いつ配信を止めるかわからない
R
twst/フロリド/3_1
遅筆の極み/めっちゃ短い雰囲気SS/いつ配信を止めるかわからない
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twst/フロリド/2
遅筆の極み/めっちゃ短い雰囲気SS/いつ配信を止めるかわからない
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橋間